今回求められたのは、細胞と私たちをめぐる何か?を作品にすることでした。ひとつのこと(メッセージ)を伝えるための作品ではなく、でも全くメッセージがないというわけでもなく、観る人それぞれに感じ取ってもらうもの。その曖昧さを表現するのが難しかったです。

 普段の制作では、もう少し感覚的に手を動かしたりしていますし、制作に入る前に自分たちとしての正解というか完成形が、ある程度見えていることが多いです。今回の場合は、何が正解なんだろうか?と模索するような感じ。でも正解なんてない、ということもわかっている。結局は、そんなこんな自分たちなりの、良い意味でも悪い意味でもモヤモヤしたものが、作品になっているような気もします。

 真ん中にいるのは自分自身で、それぞれにとっての細胞なのか光なのか?を大事に抱えている。何十兆という細胞の集まりで自分は出来上がっているのだけれど、自分でその全てをコントロールできているわけではない。

 結果的には、宇宙的なイメージも含まれる作品になったかなと思います。普段生活していて、自分が果てしなく広がる宇宙の中に生きているということをあまり意識しないように、細胞たちがどんな働きをしているのか?、また人間がどのように細胞を取り扱っていこうとしているのか?といった問いには日頃向き合っていないように思います。このように考えていくと、宇宙と細胞とはどこかつながっているようにも感じるのです。

 そういう未知の、自分のわからないことに関して考えると、不安というか怖さみたいな気持ちも湧き起こってきます。それでも、自分自身の核になっている部分(それは人によってきっと様々)を大事に持ちながら、変化を恐れずに、流されることなく、考えていきたいというところが、作品にこめた作者としてのメッセージです。