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iPS 細胞研究基金寄附者感謝の集いを開催しました

iPS細胞研究基金へご支援くださった方々をお招きし、感謝の集いを東京と京都の2か所で開催しました。各会場の当日の様子をご紹介します。

※ 2012年度は山中伸弥所長のノーベル賞受賞があり、7,500件を超えるご寄附をいただきました。
そのため、全ての寄附者を集いにご招待することが出来ませんでしたことをお詫びいたします。

初の東京開催

東京会場の様子

東京会場の様子

糖尿病研究について講演する川口教授

糖尿病研究について講演する
川口教授

昨年10月28日、東京で初めて「寄附者感謝の集い」を開催しました。森ビル株式会社から特別協力としてご提供いただいた六本木ヒルズ森タワーのアカデミーヒルズに、約170名の寄附者の方々が集まって下さいました。山中所長が、日頃のご支援に対する感謝に続き、講演を行い、iPS細胞研究の現状を紹介するとともに、iPS細胞研究基金の必要性と現状について報告しました。

休憩の後、iPS細胞にまつわるクイズで後半が始まりました。iPS細胞の写真を見て細胞の数を当てたり、iPS細胞を作るときに使う細胞を答えるといったクイズを楽しみながらiPS細胞について理解を深めていただけたようです。全問正解者は山中所長とじゃんけんで勝負し、勝ち残った2名に山中所長から署名入りの本が手渡されました。

最後は、臨床応用研究部門の川口義弥教授が講演を行い、糖尿病治療を目指し、iPS細胞から膵臓の細胞を作る研究の現状を紹介しました。鉄砲が日本に伝来した時の事を例に挙げ、機能を持った膵臓を作ることの難しさを表現しました。

京都では研究者との交流会も

京都では、11月6日(水)にCiRA研究棟エントランスホール・講堂にて約80名の方にご参加いただき、「寄附者感謝の集い」を開催しました。山中所長からのご挨拶・講演の後、臨床応用研究部門の齋藤潤准教授が講演を行い、iPS細胞を使った薬の開発や、難病の仕組みを解明する研究について具体例を挙げながら紹介しました。

講演後、エントランスホールで30名を超す研究者や職員が参加して交流会が行われました。副所長の戸口田淳也教授の挨拶と乾杯が終わると、参加者はコーヒーとお菓子を手に研究者と語り合い、交流を深めました。最後に山中所長がご支援への御礼と、今後の研究への決意を表明しました。

東京や京都での感謝の集いにご参加くださった方々からは、「それぞれの疾患の研究進捗がよく分かった」「この研究によって多くの人が救われることを願っています」などの感想やメッセージが寄せられました。

今回の集いでは、改めて寄附者の存在のありがたみやお心遣いを実感しました。ご参加いただけなかった方々もおられますが、多くの方々のご支援に深く感謝申し上げます。CiRAにとって、iPS細胞研究基金への皆様のご支援は大変貴重なものです。今後も、寄附者の方々との交流の場を企画・実践してまいります。

参加者と話す山中所長

参加者と話す山中所長

京都では教職員との交流会が行われた

京都では教職員との交流会が行われた

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下関海響マラソンに参加 !

11月3日に下関海響マラソンが開催され、CiRAの吉田善紀講師と高尾幸成知財管理室長が参加しました。このマラソン大会では、iPS細胞研究基金が寄附先団体として指定されており、チャリティエントリーを行ったランナーからの寄附金の一部が当基金に寄附されます。
当日は雨が降りしきり、せっかくの海峡の景色もかすんでいたようですが、吉田、高尾の両名は、「京都大学iPS細胞研究所」というゼッケンを付け、沿道の声援に支えられ、42.195キロを完走しました。チャリティランナーの方々や大会関係者の皆様に感謝申し上げます。

吉田講師(左)と高尾室長(右)

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研究成果①

自己iPS細胞由来の神経細胞移植は免疫拒絶反応が少ない

髙橋淳教授(臨床応用研究部門)らの研究グループによる研究成果が、米国科学雑誌「ステム・セル・リポーツ」に掲載されました。髙橋教授に、発表内容の詳細についてお話を伺いました。

記者に説明する髙橋教授

今回はどのような研究をされたのでしょうか。

霊長類の一種であるカニクイザルで、iPS細胞から作製した神経細胞を脳に移植し、免疫反応が起きるか否かを調べました。移植方法は、私達が開発中のパーキンソン病の治療法に準じたものです。自分自身の細胞を移植する自家移植と、同じ種の別個体の細胞を移植する他家移植を比較したところ、自家移植では、ほとんど免疫応答が起こらないことを確認できました。

パーキンソン病とiPS細胞技術の関係について簡単に教えてください。

パーキンソン病は進行性の神経難病で、手足が震える、体がこわばって動きにくくなるなどの症状が特徴です。脳のドパミン産生神経細胞の働きが悪くなったり、数が減ることにより、ドパミン量が減ることが原因と考えられています。これまで、薬物や電極を用いた治療法では、症状の改善はできてもドパミン神経細胞の減少を食い止める事はできませんでした。そこで、iPS細胞などによる細胞移植によって神経細胞を補い、新たな神経回路の形成を促して脳の機能を再生させるという、より積極的な治療法に期待が寄せられています。

何故、カニクイザルで免疫反応を調べたのですか?

iPS細胞の利点の一つは自家移植が可能である事ですが、これまでのマウス等の研究では、iPS細胞を用いた自家移植でも免疫反応がみられるか否かは、議論が続いており、決着がついていません。免疫反応が起こらない場合には、移植後に免疫抑制剤を使用する必要がなく、免疫抑制剤による副作用を心配する必要もありません。今回はパーキンソン病におけるiPS細胞移植の臨床応用を念頭において、マウスなどのげっ歯類よりもよりヒトに近い霊長類を使用しました。健常な霊長類(カニクイザル)での自家移植と他家移植における免疫反応を直接比較しました。

今回の研究の意義と展望について教えてください。

脳は免疫反応が比較的少ない組織ですが、それでも自家移植のほうが望ましいことを霊長類を用いて初めて示したことに意義があります。自家移植では、iPS細胞から作製したドパミン神経細胞が免疫抑制剤を使用しなくてもよく生着していたので、ヒトの場合も免疫抑制の必要がないだろうと予想されます。一方、他家移植では免疫抑制剤を用いずとも、ドパミン神経細胞はある程度生着する事が明らかになりました。ただし、この場合は免疫反応が起こっている事が確認されました。

免疫反応と細胞生着に関しては、自家移植の有用性が証明されましたが、自家移植ではコストや時間がかかる上に、パーキンソン病の患者さんから作製した疾患感受性の高いドパミン神経細胞が正常に機能するのかどうかという点も検証する必要があります。今回の研究で自家移植と他家移植の違いが明らかになったので、HLA 型を合わせたiPS細胞による他家移植で免疫反応がどの程度軽減されるのかが今後の課題です。

iPS細胞から作製したドパミン産生神経細胞の自家移植と他家移植を比較し、自家移植では免疫反応がほとんどおきずにドパミン神経細胞が生着していることを明らかにした。また、他家移植では免疫反応が起こっていたものの、ドパミン産生神経細胞の生着が認められた。

筆頭著者紹介

森実飛鳥(もりざね・あすか)
1971年、東京都生まれ。子どもの頃から理系の家庭に育ち、なんとなく医学の道を志しました。脳の神秘に魅せられ脳神経外科の道に。大学院で研究にも携わることとなり、髙橋淳研究室で神経再生の研究に着手。スウェーデン留学を経て京都大学に帰学し、現在はiPS細胞技術を用いたパーキンソン病治療法の開発に取り組んでいます。最近の関心事は美しい顕微鏡写真を撮ることと、わかりやすいプレゼンテーションをする事です。CiRAには最先端で活躍されている研究者が多いので日々刺激を受けて楽しく働かせて頂いています。

【論文名】
Direct Comparison of Autologous and Allogeneic Transplantation of iPSC-Derived Neural Cells in the Brain of a Nonhuman Primate

【著者名】
Asuka Morizane, Daisuke Doi, Tetsuhiro Kikuchi, Keisuke Okita, Akitsu Hotta, Toshiyuki Kawasaki, Takuya Hayashi, Hirotaka Onoe, Takashi Shiina, Shinya Yamanaka, Jun Takahashi

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研究成果②

皮膚の細胞から軟骨の細胞をつくることに成功!

臨床応用研究部門の妻木範行教授らのグループが、ヒトの皮膚の細胞(線維芽細胞)からiPS細胞を経ずに軟骨の細胞を作ることに成功しました。この研究成果が米国科学誌「プロスワン」に掲載されました。妻木教授に研究内容について伺いました。

記者に説明する妻木教授

なぜ軟骨の細胞を作ったのですか?

軟骨は関節を滑らかに動かすために重要なものです。しかし修復能力があまりなく、一旦傷ついてしまうと元の軟骨には戻りません。大きく傷ついてしまうと関節がうまく動かなくなったり痛みを引き起こしたりします。新しい軟骨の細胞を移植すれば治療できますが、これまで質の良い軟骨細胞を大量に作ることが困難でした。

今回の研究成果の概要を教えて下さい。

ヒトの皮膚の細胞に、iPS細胞を作るときに使う2つの初期化因子(c-MYC, KLF4)と1つの軟骨因子(SOX9)の遺伝子を導入することで、iPS細胞の状態を経ることなく軟骨様細胞(iChon細胞)へと直接変換できる方法を開発しました。この軟骨様細胞をマウスに移植すると、質の良い軟骨組織を作ることを確認しました(図)。

ヒトの治療にすぐ使えますか?

今回、ヒトの細胞で皮膚の細胞から軟骨細胞へと直接変換(ダイレクト・リプログラミング)できることがわかりました。しかし、腫瘍化に大きな影響があるとされる遺伝子(c-MYC)や遺伝子導入方法(レトロウイルス)を使用しているため、ヒトの治療に応用するためにはこれらの課題を克服する必要があります。

軟骨の再生にiPS細胞は不要ですか?

CiRAではiPS細胞ストック計画を進めており、そのiPS細胞を利用して軟骨を作製することも可能です。iPS細胞ストックを利用する場合、拒絶反応などのリスクを検討する必要がありますが、軟骨を作製する費用が低く抑えられると考えられます。

直接変換法は何が優れているのでしょうか?

直接変換法は、大きな手術を行わずに、傷ついてしまった軟骨を体の中で局所的に治すことができるようになる可能性があります。しかし、そのためには遺伝子を導入しないで、傷ついた細胞だけを変換する技術を開発する必要があります。iPS細胞を使った方法と直接変換する方法とで、それぞれの特徴を活かして上手く使い分けていく必要があるでしょう。

マウスに移植した細胞から作られた硝子軟骨(質のよい軟骨)様組織
図中のバーは500μmを示す。
Safranin-O:軟骨を染める染料( 図中のオレンジ色の部分。紫色は核を示している)
下の図は上の図を拡大したもの。

【論文名】
Direct induction of chondrogenic cells from human dermal fibroblast culture by defined factors

【著者名】
Hidetatsu Outani, Minoru Okada, Akihiro Yamashita, Kanako Nakagawa, Hideki Yoshikawa, and Noriyuki Tsumaki

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研究成果③

iPS細胞化でRNAスプライシングパターンも初期化される!

初期化機構研究部門の太田翔大学院生と山本拓也助教らの研究グループが、体の細胞からiPS細胞になる過程で、遺伝子の使われ方が大きく変化して初期化されていることを明らかにしました。この研究成果が米国科学誌「セル・リポーツ」に掲載されました。山本助教にお話を伺いました。

山本助教

RNAスプライシングとは何ですか?

遺伝子 DNAの情報はRNAに写し取られ、RNAの情報を元にアミノ酸が連結され、細胞内で様々な機能を果たすタンパク質となります。しかし実は同じ遺伝子から作られるタンパク質でも、細胞の種類によって少しずつアミノ酸配列が違っています。その違いを生み出しているのが、RNAスプライシング(RNAのつなぎあわせ方)の違いです。RNAスプライシングのパターンはまるで指紋のように細胞の種類ごとで違っています。

スプライシングのパターンとは何ですか?

細胞の中には2万種ほどの遺伝子があります。それらの一つ一つにスプライシングが起こっています。そのようにして作られた細胞内の数万種のRNAを調べ、コンピューターを使ってどのようなスプライシングが起こっているのかを明らかにしたものがスプライシングのパターンです。今回の論文では紫色から緑色のグラデーションで表現しています(図)。

今回は何を発見したのでしょうか?

これまで体の細胞からiPS細胞へと変化する際に、細胞の中で何が起きているのか充分には知られていませんでした。細胞の種類によって異なるスプライシングパターンも、iPS細胞へとなるときにどう変化しているのか、知られていませんでした。今回、最初の細胞とiPS細胞とでは全く異なるパターンへと変化していることが、網羅的な解析で分かりました。またこのパターンは、iPS細胞と同じように様々な細胞へと分化する能力を持ったES細胞(胚性幹細胞)ととてもよく似ていました。

スプライシングのパターンがわかると何ができるのでしょうか?

性能の良いiPS細胞のスプライシングパターンがわかれば、iPS細胞の品質評価をする基準として使うことができますし、またこれを指標とすることでiPS細胞作製の効率や時間を改善することができるかもしれません。いずれもまだ研究が必要ですが、iPS細胞の性質を明らかにすることで、より上手くiPS細胞を使うことが出来るようになるでしょう。

スプライシングパターンの解析
マウスの皮膚の細胞(MEF)から作製したiPS細胞は、ES細胞と似たスプライシングパターンを示した。

筆頭著者紹介

太田翔(おおた・しょう)
1987年に生まれ京都で育つ。子供の頃はミュータント・タートルズという擬人化されたカメのアメリカン・コミックが好きで、ミュータント(変異)という生物の現象にも馴染みがあったそう。予備校で京大理学部の先生に教わる機会があり、基礎科学に興味を持ちました。今後は同じ環境にあっても、細胞によって反応が異なるという、細胞の運命が決定していくメカニズムを明らかにしたいそうです。

【論文名】
Global Splicing Pattern Reversion during Somatic Cell Reprogramming

【著者名】
Sho Ohta, Eisuke Nishida, Shinya Yamanaka and Takuya Yamamoto

Glossary

ES細胞(胚性幹細胞)
受精後6、7日目の胚から細胞をとり出し、それを培養したもの。

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研究成果④

品質の悪いiPS細胞の選び方

昨年10月までCiRAに所属していた青井三千代助教(現 神戸大学)、CiRA初期化機構研究部門の大貫茉里研究員、高橋和利講師、山中伸弥教授らの研究グループが、品質の悪いiPS細胞を見分ける方法を開発しました。この研究成果は科学誌「米国科学アカデミー紀要」に掲載されました。青井助教にお話を伺いました。

青井助教

今回の研究をされた背景を教えて下さい。

これまで、iPS細胞はおなじ多能性幹細胞であるES細胞と比較して性能が悪いという論文もあれば、両者に差はないという論文もあり、様々でした。多くの場合、実験に使った細胞の種類が少なかったり、細胞を育てる方法が違ったりという問題点がありました。そこで私たちはiPS細胞 49種類とES細胞10種類を同じ条件で育てて、iPS細胞とES細胞の違いを探しました。

違いは見つかりましたか?

遺伝子の働き方(発現量やDNAの修飾状態)を網羅的に比較したのですが、残念ながら一つの遺伝子を調べただけでは、iPS細胞とES細胞を見分けることは出来ませんでした。

品質の悪いiPS細胞とは何ですか?

今回の研究では、さらにiPS細胞・ES細胞から神経細胞へと分化させる実験を行いました。99%以上の細胞が正しく神経細胞に分化する方法を用いたのですが、なかには神経細胞になる割合が90%以下になってしまうiPS細胞がありました。これらを品質の悪いiPS細胞と呼んでいます。品質の悪いiPS細胞をネズミの脳に移植すると、奇形腫と呼ばれる腫瘍を形成しました。

この研究で何が出来るようになるのでしょうか。

私達は品質の良いiPS細胞と悪いiPS細胞とで、働いている遺伝子を比較しました。そこで悪いiPS細胞に共通して強く働いている遺伝子を発見しました。iPS細胞の段階でこの遺伝子の働き具合を調べて、遺伝子が働いているものは悪い細胞として排除することができます。再生医療などでiPS細胞を利用する際に、より安全な細胞だけを利用することが出来るようになると考えられます。

品質の悪いiPS細胞を識別する遺伝子群の同定
指標となる遺伝子の発現の有無で神経細胞分化誘導することにより、移植実験を行うことなく、品質の悪い細胞を予測できることが期待される。

筆頭著者紹介

大貫茉里(おおぬき・まり)
1984年神奈川県生まれ。実家でチャボなど様々な動物を飼っていたこともあり、生き物に触れる機会が多かった少女時代。高校時代に臓器移植に頼らずに代替となる臓器を作ることに興味を持ち、京大農学部で核移植によるリプログラミングの研究を行いました。その後iPS細胞を発表した直後の山中研究室に入り、現在までiPS細胞の安全性に関わる研究をしてきました。研究の中でヒトのゲノム中の「化石」である内在性レトロウイルスの働きに興味を持ち、近い将来、関連した研究をしているドイツの大学へと修行に旅立つ予定です。

【論文名】
Differentiation defective phenotypes revealed by large scale analysis of human pluripotent stem cells

【著者名】
Michiyo Koyanagi-Aoi, Mari Ohnuki, Kazutoshi Takahashi, Keisuke Okita, Hisashi Noma, Yuka Sawamura, Ito Teramoto, Megumi Narita, Yoshiko Sato, Tomoko Ichisaka, Naoki Amano, Akira Watanabe, Asuka Morizane, Yasuhiro Yamada, Tosiya Sato, Jun Takahashi and Shinya Yamanaka

Members

CiRAで働く人々

神経系難病の研究に、マラソンでの寄附募集に、ロンドンっ子のあくなき挑戦!

今回は、初期化機構研究部門の齋藤博英准教授の研究室に所属する研究員のキャラム・パーさんにお話を伺いました。

実験中のキャラムさん

キャラムさんは、イギリスのロンドン出身。食いしん坊で太っていた子どもの頃は、音楽や美術が好きでしたが、やがて、生物学が持つ「美しさ」に魅了され、研究の道を志したそうです。「科学という仕事は、アイデアで勝負するという面はもちろん、実験をデザインするという面でも、本当にクリエイティブな仕事です。こんなに多様性に満ちて、やりがいのある仕事はめったにないと思います。」

大学卒業後1年ほど自分の進路に迷ったそうですが、インペリアル・カレッジ・ロンドンの奨学金を受けたことが転機になりました。そこでアルツハイマー病についての博士論文を書き上げ、日本にやってきました。

CiRAでは、RNA合成生物学の知見を活かし、RNAが神経細胞内をどのように輸送されているのかを理解するために研究を行っています。「神経系疾患の多くはRNAに結びついているタンパク質と関連していて、神経機能が正常に働くためにはRNAが正しく局在していることが不可欠です。これらのプロセスをよりよく理解できれば、神経系疾患のよりよい治療につながると考えています」と語ります。キャラムさんが研究しているアルツハイマー病は、日本など高齢化の進んだ国では患者数が増加していますが、有効な治療法がありません。

キャラムさんは、昨年10月の大阪マラソンで初のフルマラソンに挑戦し、寄附募集ウェブサイト「Just Giving Japan」でiPS細胞研究基金のための寄附を呼びかけました。結果は、4時間40分で見事に完走。25,300円の寄附を集めました。「iPS細胞研究を支援することは、本当に大切なことだと思います。この研究は、地球上のすべての人に役立つでしょう」とキャラムさん。iPS細胞研究へのロンドンっ子の挑戦は、まだまだ続きます。

Classroom

クラスルーム

iCeMS/CiRA クラスルーム2013
高校生のための“観察”ワークショップ開催!

顕微鏡で細胞を観察

今年で5回目の開催となるiCeMS/CiRA クラスルームは、研究のイロハのイである「様々な角度から観察する。そして、観察に基づいていろいろ考える」ことが体験できるプログラムです。今回は、iPS細胞研究所を会場に、11月23日(土)には教員向けに1回、24日(日)には高校生向けに2回実施しました。

全部で3時間半のプログラムの中で、参加者はまず、「事前学習の時間」として、6人程度のグループごとにすごろくを用いた「発生」「分化」「細胞」の学習をしました。「観察の時間」では、ヒトiPS細胞、ヒトiPS細胞からつくった神経細胞、肝細胞、心筋細胞の4種の細胞を顕微鏡でじっくりと観察し、最後の1時間は、「考える時間」として、まだ答えの出ていない幹細胞研究の問いに挑みました。

プログラム終了時に、講師をつとめた豊田太郎助教(CiRA長船グループ)や西岡尚恵大学院生(iCeMS中辻グループ)が参加者一人一人に修了証書を手渡すと、参加者たちからは、「iPS細胞が万能であるということは、よく聞いていたので、ヒトに関しては、厳密に証明されていないことに驚いた」「他の人といろんな意見を出し合うのが楽しかった」などの感想がでました。みなさんお疲れ様でした!

  • 「発生」「分化」「細胞」が学べる
    すごろく

  • すごろくに挑む参加者たち

  • グループでまとめた意見の発表




Column

倫理の窓から見たiPS細胞

新しい技術と私たち

鈴木美香 研究員

上廣倫理研究部門の研究者が担当するコラム企画。第2回目の執筆者は鈴木美香研究員です。

『銀河鉄道999』の話である。その惑星では、機械の体を手に入れた人間は死なない。人類の究極の欲望ともいえる「不老不死」を実現した社会に生きる人々は一体何をするのか…。話の中で最も印象に残っているのは、殺し合いをする人々や、酒に明けくれ堕落した生活を送る人々の姿である。これが、永遠の命を手に入れた人間がすることなのか?

私の母は、闘病中に余命宣告を受けたことがある。20代だった私はそのとき、「命には限りがある」ということをあらためて身をもって痛感した。そしてそれ以降、自分の人生の終わりを意識するようになった。ものごとに優先順位をつける癖がついた。

時に、iPS細胞である。身体を構成するさまざまな細胞や組織を作り出せる可能性をもつ。機械の体とまではいかずとも、心臓や眼球や肺といった臓器も将来、完全に作り出せるようになるかもしれない。そうなっ たとき、車の部品を換えるかのように、臓器を交換し生き永らえることが当たり前の社会になるのだろうか。

母が病に苦しんでいる姿を見たときは、すぐにでも臓器を交換してもらいたいと思った。しかし、である。限りがあるからこそ、懸命に生きようとするのではないか。失ってしまったものを「ない」と嘆くのではなく、それを取り戻そうと求め続けるのでもなく、残っているもの、限りあるもの、与えられたものを受け止め、いかに光らせるか。そこにこそ、生きる幸せというものがあるのではないか。母が病を得たこと自体はとても悲しく、残念なことではあったが、「病というのは、人に大切な何かを気づかせるために存在するのではないか」とすら思うほど得難い経験のひとつとなった。

次々と生み出される新しい技術を目の前にして、私たちはどこまで欲求を露わにすることが許されるのだろう。「技術はある。しかし、求めない」という選択肢、そういう行動も、あるのではないか。

iPS細胞の秘めた能力に期待しながら、一市民として、「どんな社会に生きたいか」ということを考えさせられている。

(文:鈴木美香)

CiRA news update

CiRAアップデート

12/22

山中伸弥所長の母校である神戸大学医学部同窓会の寄附者を対象に感謝の集いを神戸市内で開催しました。

12/12

山中所長が日本学士院会員に選出されました。

12/7

第18回CiRA カフェFIRST「ヒトの細胞カタログをつくる!」を開催しました。増殖分化機構研究部門の藤渕航教授が一つ一つの細胞で働く遺伝子の組み合わせを調べ、分類する研究について語りました。

12/6

臨床応用研究部門の江藤浩之教授グループの研究成果がステム・セル・リポーツに掲載されました。(次号に特集します。)

11/23-24

高校生と高校教諭を対象とした幹細胞実験教室「iCeMS/CiRA クラスルーム」をCiRA研究棟内で開催しました。(13ページ参照

11/19

初期化機構研究部門の山中伸弥教授のグループによる研究成果が米国科学アカデミー紀要に掲載されました。(10、11ページ

11/9

山中所長がローマ法王庁科学アカデミー会員に任命されました。

11/6

CiRA研究棟でiPS細胞研究基金の寄附者を対象とした感謝の集いを開催しました。(3ページ参照

11/2-3

吉田善紀講師、高尾幸成知財管理室長が下関海響マラソンのプレイベントとマラソンに参加し、完走しました。(3ページ参照

11/2

京都大学ホームカミングデイの一環で、国際広報室の和田濱裕之サイエンスコミュニケーターが約30名を対象にiPS細胞研究の概要説明と見学案内を行いました。

10/28

東京都内でiPS細胞研究基金の寄附者を対象とした感謝の集いを開催しました。(2ページ参照

10/27

CiRAメンバー6名が大阪マラソンに参加し、全員完走しました。山中所長はチャリティアンバサダーを務めました。

10/18

初期化機構研究部門の山本拓也助教グループの研究成果が、セル・リポーツに掲載されました。(8、9ページ参照

10/17

増殖分化機構研究部門の妻木範行教授グループの研究成果が、プロスワンに掲載されました。(6、7ページ参照

10/5

第17回CiRA カフェFIRST「一滴の血にも無数の細胞 iPS細胞で再現するには」を開催しました。臨床応用研究部門の丹羽明助教が血液の病気の研究や先天性炎症性疾患の研究について話しました。

From CiRA

iPS細胞研究基金

iPS細胞研究基金へのご支援のお願い

iPS細胞研究には、国民のみなさまから多大なご支援をいただいており、教職員一同、心から感謝申し上げます。
この日本発の画期的な技術に関する研究をさらに推進し、一日も早く医療応用を実現するためには、優秀な人材の確保、研究所の安定的な運営が必要です。みなさまのご支援をお願い申しあげます。
ご寄附のお申込みは、下記にご連絡を頂きますようお願い申しあげます。

問合せ先: 京都大学 iPS細胞研究基金 事務局
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町53
TEL:075-366-7152  FAX:075-366-7023
京都大学基金ホームページ http://www.kikin.kyoto-u.ac.jp/
CiRAホームページ http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/about/fund.html
メール:ips-kikin@cira.kyoto-u.ac.jp

Editorial info

発行・編集

京都大学 iPS細胞研究所
(CiRA)国際広報室
〒606-8507
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