CiRA
Cells

iPS Cell Research Fund

iPS細胞研究基金

iPS細胞研究基金の2013年度収支を報告します

平素より、iPS細胞研究基金へご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
2013年度(2013年4月1日~2014年3月31日)の基金の収支を報告します。

iPS細胞研究所 山中伸弥所長

iPS細胞研究所 山中伸弥所長

2013年度は、個人の方々から約11億591万円、法人・団体の方々から約1億3,035万円、あわせて約12億3,626万円のご支援を頂き、基金の趣旨に沿って人件費など約5,409万円を支出しました。この結果、2014年3月31日時点のiPS細胞研究基金の残高は約24億4,020万円となりました。

iPS細胞研究基金は2009年に10年間の期間で設置され、年間目標額を5億円としています。多くの方々のご支援により過去5年間の累計額は約25億4,260万円となり、目標としていた25億円を達成できました。皆様のご支援に心より感謝申し上げます。

当研究所は、研究者及び研究支援者の大半が有期雇用であるため、長期的に安定して雇用できる財源の確保が、優れた人材の確保と計画的な育成を進める上で極めて重要な課題です。

当基金は、研究所全体で年間10億円以上を要している有期雇用の研究者および研究支援者の人件費を一定期間保証することが可能な補助的財源であるほか、知財の確保と維持などに必要な財源です。いずれも継続的かつ長期にわたり発生するこれらの費用をカバーするため、今後も引き続き年間5億円の目標寄附額を達成するように務めてまいります。そして基金の趣旨に沿って資金を計画的に活用することにより、研究の加速と研究所の安定的な運営を目指してまいります。

2013年度収支報告(2013年4月1日~2014年3月31日)
  件数 寄附金額(円)
個人 3,850 1,105,909,628
法人・団体 303 130,352,105
収入合計 4,153 1,236,261,733
用途 支出金額(円)
人件費 19,942,753
業務委託費 20,553,433
備品・消耗品費 2,507,050
旅費・交通費 1,925,950
通信費 1,211,037
その他 7,945,663
支出合計 54,085,886
2013年度末残高 2,440,203,510

ご寄附のお申し込み方法・お問い合わせ

iPS細胞研究基金事務局 電話番号 (075)366−7152 FAX (075)366−7023
住所   〒606−8507 京都市左京区聖護院川原町53
メール  ips-kikin@cira.kyoto-u.ac.jp
京都大学基金ホームページ http://www.kikin.kyoto-u.ac.jp/contribution/ips/index.html
CiRAホームページ http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/about/fund_request.html

当基金では、口座振替での継続寄附ができるようになりました。
詳細は、お気軽にお問い合わせください。

iPS細胞研究基金の今後の見通し

(1)2014 年度支出予算

今年度末には、iPS細胞研究のさらなる拡大・進展に向け、iPS細胞研究所の第2研究棟が竣工する見込みです。こうした状況を受けて、2014年度にはiPS細胞研究基金による支援を本格化させます。

有期雇用人件費の推移イメージ

有期雇用人件費の推移イメージ

1.人件費
CiRA独自の研究・教育・指導に携わる研究者や、広報などの研究支援部門の人件費です。これまで研究支援部門を支えてきた大型プロジェクト(内閣府最先端研究開発支援プログラム:FIRST)が2013年度末に終了しました。得られた成果を確実に承継、発展させるため、専従が求められる複数のプロジェクトに横断的に対応できるよう、研究者・研究支援者を雇用するための人件費を計上しています。予算額は、2014年6月時点で1億9,500万円です。

2.研究費
2014年度には、iPS細胞研究とその医療応用をより一層拡大・推進するため、萌芽的な研究や革新的な研究に対する研究費のほか、優秀な若手研究者の育成、研究所の国際化推進の費用として、3,000万円の予算を計上しています。

3.知財管理費
iPS細胞技術に関する知的財産(特許)の取得(出願など)・維持にかかる費用です。CiRA全体の知財関連支出は特許出願数や特許係争の発生有無等によって変動しますが、他の財源での確保分を超過した場合は基金から追加で支出します。予算としては1,000万円を計上しています。

2014年度支出予算(2014年4月1日〜2015年3月31日)
使途 概算予算額(円)
1.人件費 195,000,000
2.研究費 30,000,000
3.知財管理費 10,000,000
4.研究所運営補助費 50,000,000
合計 285,000,000

4.研究所運営補助費
様々な研究支援活動のうち公的研究費でカバーできないものや、研究所の安定運営にかかる経費(リスク管理・対策など)、寄附募集などの経費です。業務委託費、備品・消耗品、通信費などが含まれます。研究所の規模拡大に伴い増加すると見込まれ、5,000万円を計上しています。

以上を合計して、2014年度のiPS細胞研究基金からの執行予算は約2.9億円を計上しております。(実際の支出額は、公的研究費の確保状況によって大きく変動します。

(2)2015 年度以降の見通し

2015年度以降は、第2研究棟が本格的に稼働するほか、第3研究棟の建設も予定されており、研究所の規模が拡大します。また、CiRA研究者らによる臨床研究が開始される見込みであり、iPS細胞技術の臨床応用が着実に進展する一方で、研究所全体の支出も拡大する見込みです。

こうした中、iPS細胞研究基金は、以下の諸点に対して重点的に支出します。(下記囲み部分)

今後、iPS細胞研究基金の役割はさらに重要性を増していくことが予想されます。

iPS細胞研究の成果を一日も早く患者さんのもとに届けるために、引き続きiPS細胞研究基金への皆様からの温かいご支援をよろしくお願い申し上げます。

今後の重点的支出項目
  • 1.人件費:優秀な研究者・研究支援者・臨床研究に携わる技術員の確保
  • 2.研究費:革新的・野心的な研究テーマや、希少な疾患の原因究明・創薬の研究等に対する支援
  • 3.知財管理費:iPS細胞技術を幅広く利用してもらうための知的財産権の確保
  • 4.研究所運営補助費:寄附募集などの運営基盤強化や、災害などの研究環境の激変への備え
Cells

New research

研究成果①

iPS 細胞になるまでの道程

初期化機構研究部門の高橋和利講師、田邊剛士研究員(現スタンフォード大学研究員)らの研究グループによる研究成果が4月24日に米国科学雑誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載されました。高橋講師に詳しい内容を伺いました。

記者会見で話す高橋和利講師

どのような研究をしているのですか?

特定の遺伝子を導入し、働かせることで、3~4週間程度の時間をかけて体細胞がiPS細胞へと変化することがわかっています。私たちは、iPS細胞になるかどうか迷っている細胞について研究を行っています。iPS細胞になるまでの間に、どのような変化が起こっているのかを研究しているのです。これまでの研究でiPS細胞になろうとしている細胞には特徴的なマーカータンパク質(TRA-1-60)が細胞表面にあることがわかりました。

今回の研究では何が難しかったのでしょうか?

これまでiPS細胞になるまでの途中の状態を調べようにも、iPS細胞にならない細胞がたくさんあるので上手く調べることができませんでした。私たちのグループではTRA-1-60を指標としてiPS細胞になろうとしている細胞だけを集めてくることに成功しました。集めてきた細胞の状態を調べ、iPS細胞、ES細胞(胚性幹細胞)、体細胞と様々な種類の細胞と比較しました。

どのようなことがわかりましたか?

ヒトの線維芽細胞(HDF)からiPS細胞へとなるまでに、プリミティブストリーク(原条:PrS)と呼ばれる状態で働く遺伝子が一時的に働いていることが分かりました。

プリミティブストリークとは、受精卵から発生が進んで様々な細胞へと分化していく時に、一番初めに通る状態のことです。この状態の時によく働いているFOXH1という遺伝子をiPS細胞へと誘導するときに追加して働かせると、iPS細胞になる数が飛躍的に多くなりました。つまり、iPS細胞へと変化することをFOXH1という遺伝子が促進していることがわかりました。

今後の研究は?

今回の研究で、iPS細胞ができるまでにはプリミティブストリークという段階を経るなど、回り道をしていることが分かりました。このような初期化過程の研究を更に進めることで、より確実にiPS細胞を樹立できるようになると考えられます。

初期化途中の細胞はプリミティブストリーク(PrS)に似ている。初期化途中の細胞でマイクロアレイ(大規模解析)を行い、このグラフでは主な二種類の成分で分析を行い、各細胞の位置をプロットした。途中(d20付近)でPrSに近い状態を経て、iPS細胞(iPSC)になることがわかる。

【論文名】
Induction of pluripotency in human somatic cells via a transient state resembling primitive streak-like mesendoderm

【著者名】
Kazutoshi Takahashi, Koji Tanabe, Mari Ohnuki, Megumi Narita, Aki Sasaki, Masamichi Yamamoto , Michiko Nakamura, Kenta Sutou, Kenji Osafune & Shinya Yamanaka

Cells

New research

研究成果②

ALS モデルマウスへの細胞移植研究

増殖分化機構研究部門の井上治久教授らの研究グループによる研究成果が6月27日に米国科学雑誌『ステム・セル・リポーツ』に掲載されました。井上教授に詳しい内容を伺いました。

記者会見で質問に応える井上治久教授と近藤孝之研究員

記者会見で質問に応える井上治久教授と近藤孝之研究員

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とはどのような病気ですか?

運動神経細胞が変性することで、次第に全身の筋肉が動かなくなってしまう難病です。これまでの研究で、SOD1という遺伝子に変異を持ったマウスやラットでは、ヒトのALSと同じような症状が見られることがわかっており、ALSのモデルとして使われてきました。

治療に向けて、どのような研究が進められていますか?

iPS細胞を用いた研究には大きく分けて2つの方法があります。一つは、ALSの病気の状態を再現して、その状態を改善する治療薬を見つける研究です。もう一つは、ALSになって上手く働かなくなった細胞を細胞移植によって保護したり、新たに再生させる研究です。

今回はどのような研究を行ったのですか?

まず細胞の培養環境を調整してヒトのiPS細胞からグリア系神経前駆細胞という細胞を作りました。この前駆細胞は、グリア細胞という神経細胞の位置の固定や栄養を供給する働きを持つ細胞へと分化しやすい細胞です。iPS細胞から作製したグリア系神経前駆細胞をALSの病態をもつモデルマウスの脊髄に移植したところ、神経細胞の生存に大切な栄養因子の量が増え、マウスの生存期間が7.8%程延長するという結果が得られました。

ALSモデルマウスの生存期間が延長した。
PBS: コントロール群
hiPSC-GRNPs: グリア系神経前駆細胞を移植した群

この方法はいつ頃、実際の治療に使えるようになるのですか?

グリア系の細胞は運動神経細胞の周りの環境を整える機能をもっている細胞です。つまり、本来機能させるべき運動神経細胞を花に例えると、その花を咲かせるために必要な栄養分を供給する土の役割をする細胞です。しかし枯れてしまいつつある花を新たに植え直すこと、すなわち失われた運動神経細胞の再生は非常に難しいのが現状です。そこで今回は良い土を補うことを行いましたが、より根本的な治療のためには花の植え直しが有効であると考えられます。将来的には運動神経細胞も移植することで、より大きな機能回復効果があるかもしれません。しかし、解決すべき課題は多く、実際にヒトで治療効果をみる段階に至るまでには、多くの時間が必要です。

【論文名】
Focal transplantation of human iPSCderived glial-rich neural progenitors improves lifespan of ALS mice

【著者名】
Takayuki Kondo, Misato Funayama, Kayoko Tsukita, Akitsu Hotta, Akimasa Yasuda, Satoshi Nori, Shinjiro Kaneko, Masaya Nakamura, Ryosuke Takahashi, Hideyuki Okano, Shinya Yamanaka, Haruhisa Inoue

Cells

Dialogue

CiRA×京大病院 第4回

iPS細胞の臨床研究で連携を

京都大学医学部附属病院の脳神経外科長の宮本享教授と、iPS細胞を用いたパーキンソン病の治療法を研究する髙橋淳教授(CiRA 臨床研究部門/副所長)が対談を行いました。

宮本:いよいよ脳神経疾患でもiPS細胞の臨床応用が始まろうとしています。概要を教えてください。

髙橋:私が対象としているパーキンソン病は、体の動きに関わる脳のドパミン神経が減っていくことで、さまざまな症状が出てくる難病です。進行すると薬だけでは治療が難しくなるため、iPS細胞から誘導したドパミン神経細胞を移植し補う研究を進めています。

宮本:髙橋先生とは京大病院の脳神経外科で長く一緒に仕事をしてきました。その中で臨床応用としてパーキンソン病を選ばれたのはなぜですか。

髙橋:最初は脳梗塞に手を出したのですが、あまりにも病態が複雑だったため、比較的シンプルなパーキンソン病を導入に選びました。

宮本:パーキンソン病をとっかかりにさらなる応用をしていこうということですね。

髙橋:はい。私がよく使うキーワードが「脳をつくる」です。失われた神経回路を細胞移植によって作り直していくことです。ほかにも神経が減る病気で苦しまれている方がいるので、パーキンソン病で安全に治療できれば、他の病気にも応用できます。

宮本:ES細胞(胚性幹細胞)でドパミン神経ができ、後にiPS細胞にシフトした理由は何ですか。

髙橋:当時、ES細胞はまだ臨床には使えない状態にありました。今でも私のマインドは臨床医です。患者さんに届かない、出口がない研究を続けるのは困難でした。もう1つの理由は、自分の細胞で自分を治療する自家移植にこだわっているからです。iPS細胞ではそれが可能です。

宮本:パーキンソン病は患者数も多いのですが、どのくらいの重症度の方がiPS細胞移植の対象となるのでしょう。

髙橋:薬が効かなくなりかけた、けれどまだ効いているという患者さんが対象になります。患者さんのリクルートをはじめ、臨床応用にあたっては、宮本先生や神経内科の先生、京大病院との連携が非常に心強いです。

宮本享教授(左)と髙橋淳教授(右)

宮本享教授(左)と髙橋淳教授(右)

宮本:京大病院では現在1期病棟の建設を進めていて、2019年度には2期病棟も建設予定になっています。そこではiPS細胞に関する臨床研究が行われていると思います。京大で臨床応用するとなると、髙橋先生のプロジェクトが一番早いと思いますので、それをブレークスルーに、異なる神経疾患の克服につながればと考えています。

髙橋:宮本先生とは助手部屋にいたときから、ずっと一緒に未来の絵を描けているのがありがたい。京大・脳神経外科の大きな流れをつくっていく中で、私もその一部になれるのがうれしいです。

宮本:突然始まる共同研究ではなく、先が見えない時代からずっと各々が考え、一緒に仕事をしてきましたからね。この関係が続く中で、臨床応用ができるのは幸運 です。



Introduction

新主任研究者からのメッセージ

新しく着任した主任研究者を紹介します。

4月1日付けで、原田直樹准教授がCiRAに加わりました。CiRAの2020年までの目標の一つ、「再生医療用iPS細胞ストックの構築」の達成に向けた研究を加速していきます。

宮本享教授(左)と髙橋淳教授(右)

基盤技術研究部門
原田 直樹 特定准教授

再生医療用iPS細胞ストックは、患者さんへの迅速な移植医療を実現するため、免疫反応を起こしにくいタイプの方の細胞から作製したiPS細胞をあらかじめ備蓄するものです。ストックを作るには、iPS細胞が他の細胞になる能力や、がん化を招く可能性のある遺伝子変異の有無などのiPS細胞の質や安全性の評価が重要です。しかし、iPS細胞の国際的な評価方法や品質基準はまだ確立していません。CiRA内外の研究者らと協力してiPS細胞の最適な評価方法と品質基準を策定するための研究を進め、一日も早い安全な再生医療の実現を目指します。




Column

倫理の窓から見たiPS細胞

ボストン出張:研究の倫理面を支える職員

藤田みさお特定准教授

藤田みさお特定准教授

この原稿を書いている前日まで、実はアメリカのボストンに出張していました。用務のひとつは、ハーバード大学で研究の管理や支援を行う事務部門を訪ねることでした。研究は研究者だけではなく、研究を支えるさまざまな専門性の高い職員がいて初めて成り立つものです。というのも、研究を実施するプロセスでは、科学的知識や実験以外にも、たくさんの専門的知識や事務手続が必要になることも多く、ひとりの研究者がそれらをすべてこなすことになれば、研究自体が進まなくなってしまうからです。

倫理面に関連する例をあげると、研究の開始前には、法律や指針を参照しながら緻密な計画書を書いたり、患者さんから研究参加への同意を得る際の分かりやすい文書を作ったりすることが求められます。また、それらの書類を大学や病院、国に提出し、倫理審査を受けなければなりません。倫理審査もすぐにOKが出ず、何度も書類を書き直すことがあります。安全性やプライバシーへの配慮、不測の事態が生じた場合の対処法も、検討しておかなければなりません。

ハーバード大学公衆衛生大学院

ハーバード大学公衆衛生大学院
の玄関

ハーバード大学では、こうしたプロセスを支援する専門性の高い多くの職員が、倫理審査に伴う事務手続や研究者・学生への教育、相談業務等を行っていました。生命倫理学の研究者とも、必要に応じて連携を図っておりアメリカではよく見られる体制とのことでした。CiRAでも何名もの職員が研究支援に携わっています。ただし、日本全体で見るとこうした職員の数はまだ少なく、生命倫理学の研究者が研究や教育という本来の業務をこなしながら、同様の役割の多くを兼務していることも珍しくありません。

アメリカでは1970年代半ば、日本では2000年頃より研究を行う際の法律や指針ができ、事務手続が増加したことによって、研究の倫理面に対する支援へのニーズが高まりました。日米における体制の違いには、約30年という積み重ねた年月の違いも関係しているのでしょう。ただ、研究を安全かつ迅速に進めるという観点からいえば、専門性の高い職員が何名もいて当たり前の体制が、そろそろ全国に広がってもよいのではないか、と若干の懸念を抱きながら日本に帰ってきたところです。

(文:藤田みさお 上廣倫理研究部門部門長/准教授)

Cells

CiRA members

CiRAで働く人々

iPS細胞を応用した創薬を支える仕事人

今回は、iPS細胞技術を応用した創薬について、スクリーニングシステムや化合物ライブラリーの構築に取り組んでいる初期化機構研究部門の太田章特命教授にお話を伺いました。

iPS細胞技術を応用した創薬とは、患者さん由来のiPS細胞をその疾患に関係する細胞へ分化させ、さまざまな化合物などへの反応を調べることによって、従来の方法と比べて効率的な創薬のプロセス構築さらには新規な薬を見出すことを目指すものです。

太田教授は、独自で構築した化合物ライブラリー(薬剤候補物質の溶液サンプル)をCiRA内の研究者に提供し、各研究室のスクリーニングの結果をデータベース化することによって、研究者が創薬のための化合物スクリーニングを実施できるようなシステムの構築に取り組んでいます。

「細胞に刺激をかけて、有用な反応がみられる化合物は0.1%台」と言う太田教授。CiRA研究者のために数百種類の化合物に対する細胞の反応を一度に調べることができる、効率的なスクリーニングシステムを構築し、今後も研究の進捗とともにシステムの充実を目指しています。

現段階では、特許の切れた既存薬や既知の化合物に関するライブラリー(約6,800化合物)構築に取り組んでいますが、将来的には新規な化合物を追加してライブラリーの範囲を拡大し10,000種類まで拡大することが目標です。

創薬のエキスパートとして活躍する太田章特命教授

創薬のエキスパートとして活躍する
太田章特命教授

太田教授は大阪大学で薬理学の博士号を取得、助手として勤務後、企業の製薬部門で22年間、創薬のスクリーニングに従事しました。企業でスクリーニングシステムの構築、薬物・化合物に対する反応を調べるための実験、データベースの整備まで一連の流れを全て経験したことがCiRAでの研究に生きているとのことです。

休日には、健康のためにスイミングプールでウォーキングをしていますが、1ヶ月に7、8冊のサスペンス小説を読むことも趣味の一つだそうです。ちなみに最近のお薦めは、マーク・グリーニー著のグレイマンシリーズ(ハヤカワ文庫)とのことでした。

Report

ISSCRレポート

国際幹細胞学会2014に参加しました

6月18日から21日に、カナダのバンクーバーで国際幹細胞学会(ISSCR:International Society for Stem Cell Research)の第12回年次大会が開催されました。本学会は、遺伝子発現制御や多能性、発生などを扱う基礎研究から、生物工学、幹細胞を用いた医療、さらには倫理など、様々な角度からアプローチを行う研究者が一堂に会します。世界トップレベルの幹細胞研究者が集うこの学会に、今年はCiRAから22人の研究者が参加し、各テーマに分かれてレクチャーやポスター発表を行い、他の研究者と積極的に情報交換していました。

iPS細胞関連では、「iPS細胞と疾患モデル」がセッションの一つとして取り上げられていました。19日午後には、山中伸弥教授が講演する「多能性の制御」に関するセッションには、立ち見がでるほど多くの研究者が興味をもって詰め掛けました。山中教授は、未分化細胞が残るiPS細胞株(品質の悪い株)のリプログラミング過程で起こる分子メカニズムについて解説し、活発な質疑応答が行われました。

国際幹細胞学会に参加したCiRA メンバー

国際幹細胞学会に参加したCiRA メンバー

また、学会では、革新的な研究を行う幹細胞研究者に授与するマキュアン・イノベーション賞の表彰が行われてきましたが、加えて、2015年より、臨床応用を行って患者さんへ貢献する研究者に授与するオガワ-山中賞が新たに創設され、幹細胞を用いた治療に対する期待の高まりが感じられました。

学会に先立ち、17日に「幹細胞治療の実際(The REAL DEAL on stem cell therapies)」と題した市民公開シンポジウムが市内の科学館サイエンス・ワールドで開かれ、200名以上が参加しました。再生医療の市場が拡大している現状や規制の優れたモデルとして日本の再生医療新法が紹介され、科学的に証明されていない幹細胞「治療」への問題提起もなされました。

来年の国際幹細胞学会は、2015年6月にスウェーデンのストックホルムで開催される予定です。

CiRA news update

CiRAアップデート

6/27

増殖分化機構研究部門の井上治久教授のグループによる筋萎縮性側索硬化症に関する研究成果が『ステム・セル・リポーツ』に掲載されました。(8ページ

6/18-21

国際幹細胞学会がカナダのバンクーバーで開催され、CiRA研究者も参加しました。(14ページ

6/16

CiRAアニュアルレポート2013日本語版を発行しました。ホームページにも掲載されています。

6/12

山中伸弥教授が、米国ロックフェラー大学の名誉博士号を授与されました。

5/29

臨床応用研究部門の江藤浩之教授グループと東京大学のグループによる共同研究において、ヒト多能性幹細胞での赤血球生成における不完全なグロビンスイッチング(赤血球中のグロビンというたんぱく質の種類が変わること)のメカニズムに関する論文が、『ステム・セルズ・トランスレーショナル・メディシン』に掲載されました。

5/23

第19回CiRAカフェ「みんなで考える幹細胞治療」を開催しました。上廣倫理研究部門の藤田みさお准教授が体性幹細胞を用いた自由診療の安全性や社会で議論する必要性について話しました。

5/5

パリ市内で開催されたOECDフォーラムで、山中教授が「ヘルス & イノベーション」セッションで講演し、パネルディスカッションに参加しました。

5/1

臨床応用研究部門の髙橋淳教授が、CiRA副所長に就任しました。

4/28

山中教授が筆頭著者として2000年に『エンボ・ジャーナル』に掲載された論文に関して、記者会見を開催しました。

4/25

3月2日に大阪市内で開催された市民対象シンポジウムの講演動画をホームページに掲載しました。

4/24

初期化機構研究部門の高橋和利講師のグループによる研究成果が、『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載されました。(6、7ページ

4/23

モーザ・カタール前首長妃殿下(カタール財団総裁)ご一行がCiRAをご訪問され、山中所長らとiPS細胞研究について意見交換をされました。

4/18-19

CiRAリトリート(研究合宿)を琵琶湖畔で開催しました。海外の著名な研究者3名を講師に迎え、CiRA研究者と研究について議論しました。

4/15

高校生を対象とした実験教室「iCeMS/CiRAクラスルーム」の実施に貢献した5名が、平成26年度文部科学大臣表彰・科学技術賞(理解増進部門)を受賞しました。

4/10

初期化機構研究部門の沖田圭介講師のグループの研究成果が、DNAの脱メチル化を引き起こす候補因子の一つであるAidが、iPS細胞を作製する時に必須の役割を持たないことを示し、論文が『プロス・ワン』に掲載されました。

CiRAは第4回大阪マラソンの
オフィシャル寄附先団体です

CiRAは、第4回大阪マラソンのオフィシャル寄附先団体です。
大阪マラソンは7つのチャリティテーマを設定しており、CiRAはその1つである「生きる希望を支える」というテーマの寄附先団体として、特定非営利活動法人がんサポートコミュニティーと共に選ばれました。
寄附募集ウェブサイト「JustGiving」上では、CiRAの長船健二准教授、渡辺亮助教や一般のチャリティランナーの方々がiPS細胞研究へのご寄附を募っています。
ぜひ、ご支援をお願いいたします。

お問い合わせ:
・大阪マラソンについて : https://www.osaka-marathon.com/
・CiRAへのご支援について : ips-kikin@cira.kyoto-u.ac.jp / 075-366-7152 (基金事務局)

CiRA カフェ

CiRA カフェ、研究棟見学会 今後のスケジュール

CiRA カフェ :
9月6日(土)、12月6日(土)

研究棟見学会 :
9月6日(土)、10月3日(金)、11月7日(金)、12月6日(土)、
2015年1月23日(金)、2月13日(金)

参加申込方法、開始時間等の詳細は、下記のウェブでご案内します。
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/index.html

Editorial info

発行・編集

京都大学 iPS細胞研究所
(CiRA)国際広報室
〒606-8507
京都市左京区聖護院川原町53
Tel: (075)366-7005
Fax: (075)366-7023
Email: ips-contact@cira.kyoto-u.ac.jp
Web: www.cira.kyoto-u.ac.jp

撮影

CiRA 国際広報室

印刷

株式会社北斗プリント社 URL:http://www.hokuto-p.co.jp/

Web制作

インフォメーションメディア
デザイン株式会社
URL:http://www.imd-net.com

本誌の記事・写真・イラストの転載を禁じます。
再生紙100%使用
Printed in Japan