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2011年6月28日

iPS細胞やES細胞の命名法に対する意見をCell Stem Cellに掲載

このほど、東央晋特定研究員(京都大学iPS 細胞研究所 所長室)と山中伸弥教授(同 iPS細胞研究所 所長/物質‐細胞統合システム拠点)らによる、iPS細胞*1やES細胞*2の命名法に関する意見が、米国科学誌 Cell Stem Cell の6月3日号に掲載されました

ヒトiPS細胞やヒトES細胞は、世界中で既にたくさん樹立されていますが、それらの細胞株の命名について統一した決まりはありませんでした。その一方、iPS細胞やES細胞は無限に増殖できることから、様々な研究者が実験材料として共有するようになり、世界中で研究に用いられるようになってきています。そのため、iPS/ES細胞の由来や作製した機関などを細胞株毎に区別することは、今後の実験に用いる細胞の管理や研究成果の確認や共有をするために重要な情報になります。上記の問題提起を受け、2010年に国際幹細胞学会(ISSCR:International Society for Stem Cell Research)や国際幹細胞イニシアティブ(ISCI: International Stem Cell Initiative)の委員会で行われた議論を元に、Luong et al. がまとめた論考(2011年4月Cell Stem Cell. 2011 Apr 8;8(4):357-359.掲載)の中で、ヒトiPS/ES細胞の命名法が提案されました。

今回の意見表明では、山中教授らは自身がiPS細胞の作製者として、上記のISSCR/ISCIの取り組みや命名規約の必要性については基本的に同意しつつ、Luong et al.が提案した命名法に対しては、より柔軟性が必要であると主張しています。具体的には、現在、既に使用・流布されている細胞株についてはその名称が含まれるように、また、特にiPS細胞に関しては、今後ますます増加するであろうクローン数に対応できるよう、更なる拡張性を持たせる必要性があるなどの意見を述べています。またそのうえで、適切な命名法を決定するためには、より一層の議論が必要であるとも主張しています。

The nomenclature system should be sustainable, but also practical.
Higashi H, Brustle O, Daley GQ, Yamanaka S.
Cell Stem Cell. 2011 Jun 3;8(6):606-607.
※恐れ入りますが、本論文は出版社のウェブサイトなどより入手ください。CiRAからの送付サービスは行っておりません。

<用語説明>

注1  iPS 細胞(人工多能性幹細胞:induced pluripotent stem cell)
体細胞に特定因子を導入することにより樹立される、ES 細胞に類似した多能性幹細胞。2006 年に山中教授の研究グループにより世界で初めてマウス体細胞を用いて樹立成功が報告された。2007 年にヒトiPS細胞樹立成功が発表されている。

注2  ES細胞(胚性幹細胞:embryonic stem cell)
受精後、数日経過した胚(胚盤胞という発生段階)の内部の細胞を取り出して培養した多能性幹細胞の一つで、あらゆる組織の細胞に分化することができる。しかし、作製の際に受精卵を滅失することや患者自身の細胞から作製できないため免疫拒絶の問題などが指摘されている。

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