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2016年8月24日

「さい帯血由来のiPS細胞ストック」の提供開始について

 国立大学法人京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、再生医療実現拠点ネットワークプログラムの一環として、2013年度より再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトを本格的に進めております。昨年8月に提供を開始した末梢血から作製したiPS細胞ストックに続き、本年8月23日(火)に、さい帯血から作製した再生医療に使用可能なiPS細胞ストックの提供を開始しましたのでお知らせします。

 再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトは、HLAホモ接合体(注)の細胞を有する健康なドナーからiPS細胞を作製し、あらかじめ様々な品質評価を行った上で、再生医療に使用可能と判断できるiPS細胞株を保存するプロジェクトです。iPS細胞株は、CiRA内の細胞調製施設 FiT(Facility for iPS Cell Therapy)で作製しています。

 今回提供を開始したさい帯血由来のiPS細胞株は、日本人において最も高頻度にみられるHLA型(昨年提供した末梢血由来のiPS細胞と同じHLA型)の細胞から作製しました。このiPS細胞から作製した分化細胞は、日本人の約17パーセントに免疫反応が少なく移植可能と考えられています。昨年から、複数のiPS細胞株について分化能力の評価や様々な項目の品質評価を行いました。実際に分化細胞(治療の際に移植する細胞)を作製する研究機関で、末梢血由来iPS細胞とさい帯血由来iPS細胞を比較し、目的とする分化細胞に適したiPS細胞ストックを選択いただくことで、より安全な再生医療が提供されることが期待されます。

 CiRAでは引き続き日本人で頻度の高いHLAホモ接合体を有するドナーの皆様より御協力をいただきながら、第一段階として2017年度末までに日本人の3~5割程度をカバーできる再生医療用iPS細胞ストックの構築を目指し、iPS細胞の製造に取り組んで参ります。

<用語説明>
注)HLAホモ接合体
 HLAは、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体であるヒト白血球型抗原(Human Leukocyte Antigen)の略で、細胞の自他を区別する型。HLAは、白血球だけでなく、ほぼ全ての細胞に分布していて、ヒトの免疫に関わる重要な分子として働いています。自身の持っている型と異なるHLA型の人から細胞や臓器の移植を受けると、体が「異物」と認識し、免疫拒絶反応が起こります。そのため、細胞や臓器を移植する際にはHLA型をできるだけ合わせることで、免疫拒絶反応を弱めることが重要です。

 HLAの型は非常に多様で、A座、B座、C座、DR座、DQ座、DP座などと呼ばれる抗原(タンパク質)の組み合わせで構成されており、各抗原に数十種類の型があるため、あわせて数万通りの組み合わせがあると言われています。そのため、自分と完全に一致するHLA型の人を見つけるのは、数百~数万人に1人の確率といわれます。

 父親と母親から同じHLA型を受け継いだ場合、「HLAホモ接合体」と言います。例えばA座について、A1、A2、A3...と数十種類の型がありますが、両親それぞれから2つの同じ型を受け継いだA1A1、A2A2、A3A3のような場合を「HLAホモ接合体」と言い、細胞移植においては、A1A1であればA1A2の人やA1A3の人に移植しても拒絶反応が起こりにくいと考えられます。

<本研究への支援>
 本研究は研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED)の事業「再生医療実現拠点ネットワークプログラム iPS細胞研究中核拠点」の委託研究の成果です。

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