ニュース・イベント
News & Events

ニュース・イベント
News & Events

Home › ニュース・イベント › ニュース › 2012年 › イベント・セミナー › 第9回CiRAカフェ・FIRSTを開催しました

ニュース 
News

2012年8月30日

第9回CiRAカフェ・FIRSTを開催しました

各地で花火大会や夏祭りが行われていた8月4日の午後、暑いなか30名の方がCiRA1階のエントランスホールに集まりました。15時から開始の第9回CiRAカフェ・FIRST「血糖値の見張り番 すい臓β細胞をつくりたい!」の参加者の方々です。夏休みということもあり、いつもより10代の参加者が多く、遠くは岡山や香川から参加して下さった方もいらっしゃいました。

参加者の方々が揃って皆さん飲み物とお菓子を手にとったらいよいよCiRAカフェのスタート。小林千晃さん(オーボエ)と小柳祥子さん(ピアノ)による演奏で幕をあけました。

オーボエ・ソナタ 第2楽章 (サン=サーンス)、Oblivion (アストル・ピアソラ)と演奏されたあと、オーボエと同じ仲間で、4度低い音を出すイングリッシュホルンが紹介されました。オーボエと聞くと低い音を連想している人もいたようで、その方々にはイングリッシュホルンの方がオーボエらしい音に聞こえたかもしれません。夢のあとに(フォーレ)、アヴェ・マリア(カッチーニ)としっとりとした曲が続いた後、「夏の思い出」の演奏で音楽の部はフィナーレを迎えました。

オーボエを演奏する小林千晃さんとピアノの小柳祥子さん

オーボエの音色で会場が柔らかくなったあと、いよいよトークの部、豊田太郎先生(増殖分化機構研究部門)によるお話が始まりました。もともと農学研究科で糖代謝に関わる研究をしてきたという豊田先生。運動をすることが糖代謝を正常に保つために良いのはもちろんですが、それと同等に重要な役割を果たしているのがインスリンだと言います。インスリンは膵臓の膵島と呼ばれる細胞の塊で作られる、血液中の糖分濃度を下げるために必要なタンパク質です。

自身の生い立ちと研究内容を語る豊田先生

日本人は欧米人と比較してインスリンの量が少ないため、欧米人ほど太ることができないという豊田先生。では日本人は太っても気にしなくて良いのかというとそうではなく、インスリンが少ないと血液中に糖が残りやすく、糖尿病やその予備軍と考えられる人は、実に5人に1人の割合でいるそうです。血液中に糖がたまらないようにするインスリンは膵臓の中に浮かんでいる膵島と呼ばれる細胞の塊の中で、β細胞と呼ばれる細胞で合成されています。このβ細胞は優れもので、血糖値を測って、その量にあわせてインスリンを放出します。糖尿病ではこのβ細胞が上手く機能しないケースが多くみられます。例えばiPS細胞からβ細胞を作ってやれば、糖尿病の症状は改善されるはずです。ではβ細胞はどうしたらつくることが出来るでしょうか?難しい質問を投げかけられ、参加者のみなさんは困惑した様子でした。

カフェ参加者と懇談する豊田先生

豊田先生の研究室のメンバーも参加者に混じって、一緒になって考えたり、参加者の質問に答えたりしました。豊田先生も参加者の輪に入って話を聞きました。 なかなか皆さん質問に答えるのには苦労したようでしたが、良いアイデアもありました。豊田先生が用意していた答えは、「発生の過程を真似する」ことでした。 膵臓のできてくる様子を見習うことで、膵臓の細胞の中で必要なβ細胞のつくりかたを見つけるのです。言葉では簡単そうですが、実際にはとても難しい作業です。 現在のところ、iPS細胞からβ細胞の様にインスリンを造る能力を持った細胞はつくられましたが、もう一つの大事な役割、血糖値を測ってその結果にあわせてインスリンの量を調節するという能力がありませんでした。 これからはどうすれば血糖値を測定する能力を持った細胞をiPS細胞からつくることが出来るのか、正しい作り方を追求する研究はまだまだ続きそうです。

参加者からは「とてもむずかしい研究だと思いますが、患者さんも多い身近な病とも関係がありますので、是非、頑張って頂きたいと思いました」、「すい臓を作れば、勝手にβ細胞とかもできると思っていましたが、β細胞とかもそれぞれつくらないといけないということ(を初めて知った)」などのコメントが寄せられました。

第10回CiRAカフェ・FIRSTは9月1日(土)午後3時から開催予定です。また、第11回CiRAカフェ・FIRSTは中高生を主な対象として10月6日(土)午後3時から開催予定です。皆様のご参加をお待ち申し上げます。

このイベントは、内閣府「最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)」のアウトリーチ活動の一環として開催しています。

go top