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2016年6月28日

ISSCR2016レポート

6月22日(水)から25日(土)までの4日間、国際幹細胞学会(ISSCR)がアメリカのサンフランシスコにて開催されました。今回は会場からも近く、山中伸弥所長も研究室を構えるグラッドストーン研究所のDeepak Srivastava博士がプログラム委員長を務めました。今年も多くのCiRA研究者が発表を行いました。

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ISSCR2016の会場 MOSCONE WEST



今年の大会にはおよそ50か国から3000人を超える参加者が集まりました。アメリカの研究者が最も多いのですが、日本からも多くの研究者が参加しており、この2つの国で幹細胞研究が活発に行われている印象を与えました。また、韓国からも多くの研究者が参加しており、力を入れている様子が伺えました。

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プレナリーセッションの会場



初日のプレナリー(全体)セッションでは、マキュアン・イノベーション賞の発表が行われました。今年はイギリスのAustin Smith博士とアメリカのQi-Long Ying博士に贈られました。両博士は、マウスのES細胞を「Ground state」と呼ばれる、より受精卵に近い状態にまで戻すことに成功しています。

山中所長の講演は2日目の午前中にありました。今回は当初予定していた臨床応用に向けた内容から変更して、Smith博士らの研究成果にも関係するヒトiPS細胞をGround stateに変化させる遺伝子について発表を行いました。床に座って見る人も出るほど大勢が押し寄せた会場からは多数の質問が投げかけられ、注目度の高さを感じさせました。

山中所長の講演の後には現在のCiRAメンバーと過去にCiRAに所属していた研究者の集合写真を撮影しました。国際学会は世界中で活躍している仲間たちが一堂に会する貴重な機会です。

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集合写真 ※ここに写っていない人も大勢います



CiRAからは、江藤浩之教授が最終日のプレナリーセッションで、齊藤博英教授、天久朝延大学院生が、専門分野に別れて行うセッションで発表しました。また、CiRA研究者が発表者となるポスター発表が25件と会場を盛り上げました。

今回の学会では、近年話題となっている遺伝子を切り貼りして性質を変えることができるゲノム編集技術に関する発表も目立ちました。大会初日の午前中にはゲノム編集技術に関する倫理的な課題が話し合われるセッションが開催されました。また、倫理に関するポスター発表も十数件みられました。

CiRA上廣倫理研究部門からは八田太一研究員と澤井努研究員がポスター発表を行い、多くの研究者が立ち寄り、関心を寄せていました。幹細胞研究の分野では著名な研究者であるGeorge Daley博士からも励ましの言葉をかけられ、幹細胞研究者にとっても関心のある研究をしていることを再認識していました。倫理分野の発表は、件数は少ないですが、幹細胞研究者が倫理の問題を認識することはとても重要なことです。

Daley博士は最終日のプレナリーセッションのなかで、幹細胞研究に関するガイドラインの概要についてまとめ、自身が筆頭著者として参加している論文を紹介しました。ISSCRでは過去に2回、2006年と2008年にガイドラインを発表していますが、近年の研究の進展を踏まえ、2016年版のガイドラインを作りました。現在世界的に幹細胞研究は大きな期待を持たれている一方で、科学的根拠の無い幹細胞治療が行われており、幹細胞研究を信頼できる形で発展させるために、重要なガイドラインです。このガイドラインの概要を紹介した論文は会場で別刷りが配布され、多くの研究者に共有されました。

今回、ISSCRには患者さんも参加していました。研究者の発表を聞くだけではなく、プレナリーセッションでの研究者による発表の間に、数名が5分ほど大勢の参加者の前で自身の経験について話をしました。こうした患者さんと研究者の接点となるのもこの学会の一つのポイントとなっています。

参加した研究者にとって、今回のISSCRは収穫の多いものとなったようです。全体として幹細胞研究の成果が実際に医療の現場で活用される段階に近づいていることを感じさせる大会となりました。

次回のISSCR年次大会は、2017年6月にアメリカのボストンで開催予定です。

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