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2018年6月29日

CiRAカフェ「iPS細胞を使った再生医療〜パーキンソン病に挑む〜」を開催しました

 6月26日(火)の午後、第24回CiRAカフェ「iPS細胞を使った再生医療〜パーキンソン病に挑む〜」をCiRA講堂で開催しました。 梅雨時とは思えないほどの暑さの中でしたが、パーキンソン病の患者さんや報道関係者など約50名にご参加いただきました。 残念ながら参加できなかった皆様にはお詫び申し上げます。

会場の様子

 今回のサイエンスカフェは、iPS細胞を使った再生医療の研究のうち、パーキンソン病を対象とした研究について一般の方にご紹介するために開催いたしました。

 はじめに、CiRA国際広報室のサイエンスコミュニケーターの和田濵裕之研究員が、iPS細胞の特徴や、iPS細胞を使って創薬や再生医療に向けた研究が進められていること、 そしてiPS細胞ストックプロジェクトについて紹介しました。

 iPS細胞ストックを使った再生医療の研究で、治験や臨床研究が近い将来に始まる研究がいくつかあり、その中のひとつとして、 CiRAで行っているパーキンソン病を対象とした研究があることを紹介しました。

 参加者にiPS細胞を使った治療について尋ねた場面では、一般参加者の多くが「すでに治療が始まっている」、 もしくは「数年以内に治療が始まる」と答えていたのに対して、実際に病院で治療が受けられるようになるまでにはまだまだ長い時間がかかることを説明しました。

iPS細胞を使った治療が始まっていると思うかどうか参加者に尋ねる和田濵研究員

 続いて、CiRA臨床応用研究部門髙橋淳教授より、iPS細胞を使ったパーキンソン病治療に向けた研究についてお話ししました。

 パーキンソン病は、脳内のドパミン神経細胞が減少することによって、様々な運動機能が低下する症状が起こる病気です。 髙橋教授は、iPS細胞からドパミン神経前駆細胞を分化させ、それを脳内に移植することでパーキンソン病の症状を軽減することを目指しています。

研究の背景について語る髙橋淳教授

 冒頭では、iPS細胞を使った治療の意義について、iPS細胞開発までの歴史を交えて説明しました。 ヒトには神経を再生する能力がないため、パーキンソン病によって減少したドパミン神経細胞を自然に補うことはできません。 神経の細胞は神経の遺伝子によって、筋肉の細胞は筋肉の遺伝子によって運命づけられるというように、細胞は遺伝情報によって決定づけられ、 勝手に別の種類の細胞に変化することは基本的にありません。この理由として、かつては、成熟した細胞からは他の種類の細胞の遺伝子が失われてしまうためだと考えられていました。

 しかし1962年、ジョン・ガードン博士がカエルの受精卵から核を取り出し、代わりに腸細胞の核を入れたところ、正常なカエルが生まれました。 さらに、1997年、ヒトと同じ哺乳類であるヒツジでも、核を除去した受精卵に乳腺細胞の核を入れることで新しいヒツジの個体が生まれました。 これらの研究から、成熟した細胞にもすべての遺伝情報が残っていることが明らかになりました。つまり、体の細胞は他の細胞に変化できる可能性が見出されたのです。

 そして2006年、山中伸弥教授らのグループは、マウスの皮膚の細胞に4つの遺伝子を加えることで、iPS細胞の作製に成功したと報告しました。 2007年にはヒトの皮膚の細胞からiPS細胞を作製したことを発表しています。

 iPS細胞は、もとの成熟した細胞に対して、他の種類の細胞の遺伝子も使えるようにすることで、全身のほぼすべての細胞になる能力を獲得した細胞です。 例えば、皮膚の細胞は皮膚の遺伝子が働いているのですが、4つの因子を皮膚細胞に導入すると、皮膚細胞の遺伝子以外の遺伝子も働くことが可能になるiPS細胞になります。 そしてiPS細胞から神経や筋肉など様々な細胞を作ることができます。

 iPS細胞が開発されたことにより、失った組織や器官を自然に再生することができないために根本的な治療が難しかったパーキンソン病に対して、患者さんの細胞から作られたiPS細胞から分化させた細胞を移植するという治療の可能性が生まれました。

 続いて、髙橋教授は現在の研究について説明しました。現段階ではコストの問題によって自分の細胞由来のiPS細胞を使うことは難しいものの、予め作って保存された医療に使用可能なiPS細胞ストックからドパミン神経前駆細胞を分化させ、パーキンソン病を発症させたサルに移植することで効果や安全性を確認していることを説明しました。

 パーキンソン病に対しては、すでに薬やリハビリなどを使った治療が行われています。これらの治療法は、脳内に残っているドパミン神経細胞の働きを補助することで症状の軽減を図る方法です。髙橋教授は、iPS細胞を使ってドパミン神経細胞を新たに補う治療法が加わることで、従来の薬やリハビリによる治療の効果が増幅し、病気の進行を止めることを期待しています。

 髙橋教授は、iPS細胞を使ったパーキンソン病の治験を2018年度内に行うことを目指しています。参加者から、治験について多くの質問がありましたが、今のところ具体的な時期や対象となる患者さんの詳細は決まっておらず、冷静に研究の進捗を見守ってほしいと伝えました。

 iPS細胞を使った治療法の効果がどの程度期待できるのか、あるいはどのような課題があるのかについても活発な質問がありました。例えば、一度細胞を移植した後、どの程度の期間効果が持続するのかという問いに対しては、治験によって慎重に観察しないとわからないことであるとはしながらも、従来行われてきた中絶胎児の細胞を移植する方法では10年~20年間ほど効果が持続している症例があることから、同程度の持続期間を期待していると答えました。

 また、パーキンソン病と似た症状を示すパーキンソン症候群に研究成果が応用される可能性については、治験はパーキンソン病を対象に行う方針であるものの、ドパミンの不足によって症状が表れている病気については、治験で安全性が証明されれば、研究対象になりうることを説明しました。

 今回は、治療法開発に期待を寄せる多くの方にご参加いただき、活発な質疑応答が行われました。パーキンソン病の研究について、研究者と参加者が密に話し合うことで、参加者が抱いていた疑問を解消でき、また、研究者にとっても期待や要望を改めて実感できる良い機会となりました。

 参加者からは「先生が気さくに話してくれて嬉しかった」「研究者ととても近い距離でフランクに話ができて驚いた」「またこのような機会があれば参加したい」など、好意的な感想を多数いただきました。

 今後も、多くの方にiPS細胞についてご紹介するイベントを開催する予定です。詳細が決まりましたらホームページでお知らせします。開催日時はイベントカレンダーをご覧ください。



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