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2010年2月12日

プラスミドを用いたマウスiPS細胞樹立に関するプロトコール論文 Nature Protocolsに掲載

このほど、沖田圭介講師(京都大学物質–細胞統合システム拠点iPS 細胞研究センター)と山中伸弥教授(同iPS細胞研究センター⁄再生医科学研究所)らの研究グループによって、プラスミドベクター注1を用いたマウスiPS 注2細胞の樹立方法を詳述したプロトコール注3論文が、2月11日、英科学誌「Nature Protocols」に掲載されました。

これまでに世界中で様々なiPS細胞の樹立方法が報告されています。その多くは、体細胞に初期化を誘導する4遺伝子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c–Myc)または、3遺伝子(Oct3/4、Sox2、Klf4)を、それぞれレトロウイルスやレンチウイルスなどのウイルスベクター注4で導入する従来法を用いて樹立されてきました。しかし、ウイルスベクターを使用すると、iPS細胞のゲノムに初期化遺伝子が挿入されたままとなり、腫瘍形成の原因になることが示されています。iPS細胞を再生医療に応用するには、腫瘍形成を防ぐ必要があり、iPS細胞のゲノムに初期化遺伝子が挿入されない方法の開発が望まれていました。そのようなことから、本研究グループでは、ウイルスベクターを用いない誘導方法の開発に取り組み、プラスミドベクターを用いたマウスiPS細胞の樹立方法を開発し、2008年に米国科学誌「Science」に報告しました。この方法を用いると、マウス胎児線維芽細胞から約2カ月間でiPS細胞を樹立することが可能です。また、ウイルスベクターを用いた方法と比べて樹立効率は劣るものの、樹立したiPS細胞のゲノムには初期化遺伝子の挿入は認められませんでした。

今回のプロトコール論文では、本研究グループで開発したプラスミドベクターを用いたマウスiPS細胞の樹立方法の具体的な実験手順を示しています。詳細なプロトコールが公開されることにより、多くの研究者がプラスミドを用いてマウスiPS 細胞を樹立することを手助けし、iPS細胞研究がますます広がることが期待されます。

【論文名】
"Generation of mouse-induced pluripotent stem cells with plasmid vectors"
「プラスミドベクターを用いたマウスiPS細胞の樹立」
Keisuke Okita, Hyenjong Hong, Kazutoshi Takahashi & Shinya Yamanaka

Nature Protocols (URL:http://www.nature.com/nprot/index.html

【参考論文】
Generation of mouse induced pluripotent stem cells without viral vectors.
Okita K, Nakagawa M, Hyenjong H, Ichisaka T, Yamanaka S.
Science. 2008 Nov 7;322(5903):949-53.
ニュースリリース: http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/pdf/081009_Science_J_b.pdf

【用語説明】
注1:プラスミドベクター
プラスミドとは、細菌や酵母の細胞質内に存在し、染色体のDNAと独立して自律複製を行う環状のDNA分子の総称。ベクターとは、細胞外から内部へ遺伝子を導入する際の「運び屋」を指す。プラスミドは小さくDNAの加工が簡単なことから、遺伝子組換えの道具として用いられる。核内の染色体のDNAに遺伝子導入が起こらない点も主な特徴のひとつである。目的の機能をもつ遺伝子を組み込んだプラスミドを、試薬や電気穿孔などの方法で宿主の細胞に取り込ませて細胞内でその遺伝子を働かせることで、プラスミドを取り込んだ細胞に新しい機能を持たせることが可能となる。

注2:iPS 細胞
体細胞に特定因子を導入することにより樹立される、ES 細胞に類似した多能性幹細胞。2006 年に山中教授の研究グループにより世界で初めてマウス体細胞を用いて樹立成功が報告された。2007 年にヒトiPS細胞樹立成功が発表されている。

注3:プロトコール
誰もが同じ実験を確実に実行するために、実験の手順や条件等をまとめて記述した記録。

注4:ウイルスベクター
ベクターとは、細胞外から内部へ遺伝子を導入する際の「運び屋」を指す。ウイルスはヒトの細胞に感染するので、この仕組みを利用して目的の機能をもつ遺伝子を導入する。ウイルス由来のベクターは、遺伝子導入効率の高さから盛んに開発されてきた。染色体のDNAのランダムな部位に遺伝子導入が起こり、長期にわたって遺伝子を保持することが、特徴として挙げられる。

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