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2010年7月7日

iPS細胞の病態モデルや心疾患の再生医療への利用に関する総説論文 Circulationに掲載

 このほど、吉田善紀講師(京都大学iPS細胞研究所/物質‐細胞統合システム拠点)と山中伸弥教授(同iPS細胞研究所/物質‐細胞統合システム拠点)による、iPS細胞を用いたヒト病態モデルや再生医療への利用について記した総説論文が、7月6日米国科学誌「Circulation」に掲載されました。
 今回の総説では、特に、iPS細胞注1を用いた心疾患への再生医療や創薬の際に課題となる薬剤毒性のスクリーニングに用いる例などを挙げて、iPS細胞の医療応用の可能性について詳述しています。
 心疾患における再生医療への利用では、これまでにマウスES細胞やヒトES細胞を用いた研究で培われた知見を総括しながら、心筋への定方向性分化誘導注2や、ES/iPS細胞由来の心筋細胞の細胞移植治療の研究の現状についてまとめています。また、iPS細胞の創薬への利用については、遺伝性不整脈疾患などに対する疾患特異的iPS細胞を用いたヒト病態モデル注3の作製への利用や、新しい薬の心毒性試験注4などへの利用などについてまとめました。
 一方これらの期待だけでなく、iPS細胞の樹立効率の改善注5や未分化細胞の残存による腫瘍形成の可能性など、臨床応用に向けて克服すべき現状の課題についても示しており、iPS細胞研究への期待と課題について解説した総説となっています。

論文名
Recent Stem Cell Advances: Induced Pluripotent Stem Cells for Disease Modeling and Stem Cell-Based Regeneration.
Yoshinori Yoshida, Shinya Yamanaka.

Circulation (URL:http://circ.ahajournals.org/

※恐れ入りますが、本論文は出版社のウェブサイトなどより入手ください。CiRAからの送付サービスは行っておりません。

吉田講師の研究概要はこちらよりご覧いただけます。

<用語説明>
注1 iPS 細胞
体細胞に特定因子を導入することにより樹立される、ES 細胞に類似した多能性幹細胞。2006 年に山中教授の研究グループにより世界で初めてマウス体細胞を用いて樹立成功が報告された。2007 年にヒトiPS細胞樹立成功が発表されている。

注2 定方向性分化誘導
特定の細胞へ選択的に分化誘導すること。これまでES細胞やiPS細胞から心筋などの細胞の分化誘導においてその効率が低いことが問題であったが、アクチビンAや骨形成タンパク質(BMP)などのサイトカインを投与することにより目的の細胞へ選択的に効率よく分化誘導することが可能になった。

注3 病態モデル
その病気に特徴的な症状や性質を再現したもの。研究を行う際には、病態モデルを用いて病気の原因究明を行う。これまでも病態を再現した実験動物が、病態モデルとして多くの基礎研究に利用されていた。ヒトの疾患特異的iPS細胞から病態が再現できれば、ヒト細胞を用いた基礎研究が容易になることが期待されている。

注4 心毒性試験
心臓への毒性を調べる試験のこと。薬が利用されるためには、その薬効と共に、副作用が無いことが必須の条件であり、特に心臓への副作用は、個体の安全性に直結するため、心臓への毒性の有無を調べる試験は重要である。ヒトiPS細胞から分化誘導した心筋などを用いれば患者に対する危険性を回避した毒性試験の実施が可能となる。

注5 iPS細胞の樹立効率の改善
iPS細胞の樹立において、体細胞からの初期化の効率が低いことが問題であった。これまでにヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(バルプロ酸)やp53遺伝子の抑制、低酸素培養などにより初期化効率が改善することが報告されている。

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