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2012年10月25日

iPS細胞から沿軸中胚葉の細胞作製に関する論文がPLOS ONEに掲載

 櫻井英俊講師臨床応用研究部門)の研究グループは、瀬原淳子教授(京都大学再生医科学研究所)らとの共同研究で、マウスiPS細胞注1)から、骨・軟骨・骨格筋をつくりだす沿軸中胚葉注2)の細胞を効率よく分化誘導する方法を明らかにするとともに、ヒトiPS細胞から沿軸中胚葉を分離することに世界で初めて成功しました。本論文は米国科学雑誌『PLOS ONE』(2012年10月24日発行)に掲載されました。

 iPS細胞は、再生医療の移植細胞のソースとして、あるいは病態再現による創薬研究のツールとして期待されています。このような、再生医療の実現や病態再現のためには、まず、iPS細胞を目的の細胞へと分化させることが必要であり、これまでも多くの分化誘導法が発生学で得られた知見に基づいて開発されています。

 一方、骨・軟骨・骨格筋は、これまでの発生学研究から、沿軸中胚葉という細胞から分化することが知られていますが、ヒトにおいてはiPS細胞やES細胞注3)などの多能性幹細胞から沿軸中胚葉までの分化誘導の経路が明らかになっていませんでした。

 本研究では、先行するマウスES細胞での研究成果を発展させ、マウスiPS細胞から沿軸中胚葉の細胞を効率よく分化誘導するには、培養の初期にActivin A注4)のシグナルが必須であることを明らかにした。また、この方法で得られた沿軸中胚葉の細胞は、培養によって骨・軟骨・骨格筋細胞へと分化する能力があり、マウスへの移植によって骨格筋の再生能力も確認できました。

 これまで、ヒトiPS細胞においては、沿軸中胚葉の細胞を識別する方法がありませんでしたが、本研究により、マウスiPS細胞と同様に二つのマーカータンパク質(PDGFRaとKDR)の発現を目印に沿軸中胚葉の細胞を分離できることが分かりました。具体的には、培養開始後約1週間のヒトiPS細胞のうち、PDGFRaが陽性で、KDRが陰性の細胞群で、沿軸中胚葉の細胞に特有なマーカー遺伝子を多く発現していました。さらにこれらの細胞が、骨・軟骨・骨格筋へと分化する能力を有していることを確かめました。

 この成果は、今後、骨・軟骨・骨格筋の細胞を効率よく分化誘導する方法を開発するための第一歩となると期待されています。

 この研究は、京都大学再生医科学研究所、CiRA、京都大学大学院生命科学研究科、北里大学理学部との連携のもとで実施されました。

【論文名】
In vitro modeling of paraxial mesodermal progenitors derived from induced pluripotent stem cells

【著者】
Hidetoshi Sakurai1,2*, Yasuko Sakaguchi1,3, Emi Shoji1, Tokiko Nishino2, Izumi Maki2, Hiroshi Sakai1, Kazunori Hanaoka4, Akira Kakizuka3, and Atsuko Sehara-Fujisawa1

【著者の所属機関名】
1Department of Growth Regulation, Institute for Frontier Medical Sciences, Kyoto University, Kyoto, Japan
2Department of Clinical Application, Center for iPS Cell Research and Application, Kyoto University, Kyoto, Japan
3Laboratory of Functional Biology, Graduate School of Biostudies, Kyoto University, Kyoto, Japan
4Molecular Embryology, Department of Bioscience, School of Science, Kitasato University, Kanagawa, Japan


注1: iPS細胞
人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)のこと。体細胞に特定因子を導入することにより樹立される、ES細胞に類似した多能性幹細胞。2006年に山中教授の研究により世界で初めてマウス体細胞を用いて樹立に成功したと報告された。

注2: 沿軸中胚葉
脊椎動物の個体発生の一時期に現れる細胞集団で、体を支持するような組織、筋肉や骨、軟骨、真皮などを生み出す。

注3: ES細胞
胚性幹細胞(embryonic stem cell)のこと。ES細胞は受精後6、7日目の胚盤胞から細胞を取り出し、それを培養することによって作製される多能性幹細胞の一つで、あらゆる組織の細胞に分化することができる。しかし、受精卵を破壊する必要があり、倫理的問題がある。患者自身の細胞から作製することが困難なため、免疫拒絶の問題が指摘されている。

注4: Activin
卵胞刺激ホルモンの分泌を促進するホルモンの一種として、卵胞液の中から発見された。後に、発生の過程で、細胞の分化促進に関わることも明らかになっており、ヘモグロビン合成の誘導や、膵臓からのインシュリン分泌の促進など、多様な生理活性をもつことが知られている。

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