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研究成果 
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2016年8月4日

ヒトの細胞を含むキメラ動物を使った研究に関する意識調査

ポイント

  1. キメラ動物注1を使った研究は科学の進歩において有用
  2. 研究者と一般の人との間で許容度に差があることが分かった。
  3. 研究内容について継続的にコミュニケーションすることが重要
1. 要旨

 八代嘉美 准教授(京都大学iPS細胞研究所)を代表とする、井上悠輔 准教授(東京大学医科学研究所)、標葉隆馬 専任講師(成城大学文芸学部)らの研究グループが、ヒトの細胞を含むキメラ動物を使った研究に関して、一般の方と研究者を対象にアンケート調査を行い、研究者と一般の方との間に許容度の差がある事を明らかにしました。

 動物とヒトの細胞が混ざった動物、いわゆるキメラ動物を使った研究は、再生医療用のヒトの臓器を動物の体内で準備したり、ヒトの臓器の出来方を調べたり、様々な科学研究に役立つことが期待されています。日本ではヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律によりそうしたキメラ動物を作ることは認められておらず、人又は動物の胎内に移植することを禁止したうえで、基礎研究に限って受精から14日までの胚注2であれば研究に利用しても良いとされていました。技術の進歩に伴って、もう少し進んだ研究まで認める方向で、ガイドラインの見直しが進められています。

 こうした状況で、上記三氏は、一般の方々がキメラ動物を使った研究についてどのように考えているのか、研究者と比較するアンケート調査を行いました。すると、研究者と比較して一般の方々のキメラ動物研究に対する許容度は低く、また過去3年間を通じて変化していないことが明らかになりました。

 この様な一般の方々と研究者との認識の違いを埋めるためには、過度な期待をかきたてたり不安を煽ったりするようなことがおこらないよう、研究者が継続的な情報発信や社会との議論を行いながら、最新の研究状況について一般市民と共有し、理解を得るとともに一般の考えを理解することが必要です。

 この研究成果は2016年8月4日(米国東部時間)に「Cell Stem Cell」で公開されました。

2. 研究結果

 一般の方と幹細胞研究の研究者とに、ヒト-動物キメラを使った研究と再生医療について、それぞれアンケート調査を行いました。

時期: 2012年、2015年
対象: 一般の方(のべ約5000人)と日本再生医療学会の会員(のべ約2000人)

 キメラ動物を使った研究について、受け入れられるとした人の割合は、研究者では50%以上(条件付きで受け入れられるとした人も含む)であったのに対して、一般の方ではおよそ25%程度となり、研究者と比較して一般の方の許容度が低いことが明らかになりました。(図1)

 一方で、再生医療研究については、こうした活動自体への支持度は高く(およそ8割)、また自分自身の細胞を使って参加してみたいという人も過半を占めており、キメラ研究への反応とは対照的でした。(図2)

図1 臓器作製のためにヒトー動物キメラ胚を作ることへの支持
左側: 一般市民
右側:研究者

図2 再生医療研究への支持
a: 再生医療研究の推進に賛成かどうか
b: 自身の血液などサンプルを提供するかどうか

3. 論文名と著者
  1. 論文名
    Current public support for human-animal chimera research in Japan is limited despite high levels of scientific approval
  2. ジャーナル名
    Cell Stem Cell
  3. 著者
    Yusuke Inoue1, Ryuma Shineha2, and Yoshimi Yashiro3
  4. 著者の所属機関
    1. 東京大学 医科学研究所 公共政策研究分野
    2. 成城大学 文芸学部
    3. 京都大学 iPS細胞研究所
4. 本研究への支援

本研究は、下記機関より資金的支援を受けて実施されました。

  1. 文部科学省 リスクコミュニケーションのモデル形成事業 (実施主体:日本再生医療学会)
  2. 再生医療の実現化ハイウェイ(2012年)
  3. 日本学術振興会 科学研究費補助金 (15H02518、24720073)
5. 用語説明

注1) キメラ動物
異なるゲノムを持つ二つ以上の胚またはその一部からできた個体をキメラという。例えば、iPS細胞やES細胞を初期胚に移植して作製したマウスのことをキメラマウスという。

注2) 胚
受精卵から発生していく段階のごく初期の状態の個体のこと。

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