Naka lab

CiRA, Kyoto Univ.

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初期胚に高発現する遺伝子ECAT15-1/Dppa4とECAT15-2/Dppa2の機能解析

 ES細胞は多能性を維持したままほぼ無限に増殖できる細胞です。私たちは以前、未分化ES細胞や初期胚に高発現する遺伝子群ECATs(ES Cells Associated Transcripts)を同定しました。ECAT遺伝子群の中にはNanog/ECAT4やEras/ECAT5, Sall4/ECAT24といった、未分化維持や増殖能という多能性幹細胞の性質に重要な遺伝子が見つかっておりましたが、未解析なままの遺伝子も多数残っておりました。
 今回私たちは、ECAT遺伝子群の中のECAT15-1/Dppa4とECAT15-2/Dppa2という相同性を有する二つの遺伝子に着目しました。ECAT15-1とECAT15-2は、同じ染色体上非常に近傍に位置し、共にDNA結合ドメインであるSAPモチーフを有するタンパク質を発現します。これら二つの遺伝子の、生体内における機能や二遺伝子間の関係を調べるため、ECAT15-1KOマウス(ECAT15-1ノックアウトマウス)とECAT15-2KOマウス、さらにECAT15-1/15-2ダブルKOマウスを作製しました。ECAT15-1とECAT15-2が初期胚で高発現することから、これら3系統のKOマウスは初期胚で異常を示すと予想しましたが、驚くべきことに出生前後の肺で異常を示し、高い致死率を示すことが明らかになりました。さらに興味深いことに、ECAT15-2KOマウスはECAT15-1/15-2ダブルKOマウスよりも重篤な表現型を示しました。また、KOマウスの表現型が肺で見られたことから、ECAT15-1とECAT15-2も肺で発現が見られるのではないかと考え、様々な方法で発現の検出を試みましたが、発現は認められませんでした。
 発現が見られない組織においてKOマウスの表現型が現れるのはなぜか?私たちは、SAPモチーフをもつタンパク質の中にはエピジェネティクス制御に関与する遺伝子が見つかっていること、また、ECAT15-1とECAT15-2は初期胚で高発現していることから、ECAT15-1とECAT15-2は初期胚において何らかのエピジェネティクス制御を担っており、その影響が発現消失後の肺で現れるのではないかと考えました。この仮説を検証するために、初期胚のin vitroモデルとしてECAT15-2KO ES細胞を樹立し解析したところ、ECAT15-2KOマウスの肺で異常発現を示す遺伝子の領域が、ECAT15-2KO ES細胞ではエピジェネティック修飾の異常が認められました。また、それらの遺伝子領域の中にはECAT15-2が直接結合している領域も見つかりました。さらにECAT15-1とECAT15-2はES細胞の中でタンパク質間相互作用を示すことも明らかになりました。
以上のことから、ECAT15-1とECAT15-2を含むタンパク質複合体が、初期胚においてエピジェネティクス制御をし、時間・空間的に離れた肺の発生に影響することが示されました。

Nakamura T, Nakagawa M, Ichisaka T, Shiota A, & Yamanaka S, Essential roles of ECAT15-2/Dppa2 in functional lung development. Mol Cell Biol. 2011 [Epub ahead of print]

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