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研究成果 
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2015年2月5日

糖尿病治療に向けてヒトES/iPS細胞から移植用の膵細胞を効率よく作製する方法を開発 Stem Cell Researchに掲載

 豊田太郎助教(京都大学CiRA増殖分化機構研究部門)、長船健二教授(京都大学CiRA増殖分化機構研究部門)らの研究グループは、ヒト多能性幹細胞(ES細胞およびiPS細胞)を膵臓の元となる膵芽(すいが)細胞へと高効率に作製する培養条件を確立し、さらに作製した細胞が移植後に血糖値に応じたインスリン分泌をする細胞へと成熟可能であることを示しました。この研究成果は2015年1月28日(英国時間)に「Stem Cell Research」にオンライン公開されました。

 膵臓は、膵前駆細胞と呼ばれる一層の細胞シートから膵芽と呼ばれる細胞の塊をつくることで初めて形として認識することができます。つまり、膵芽は膵臓の最初の組織であると考えられます。このため、膵芽細胞は糖尿病に対する細胞移植療法をはじめとした膵臓再生医療の基盤となる細胞源として期待されています。これまでにヒト多能性幹細胞から膵芽細胞を作製する方法はいくつか報告されていますが、分化の仕組みが完全には分かっておらず、安定性、効率などの点について改良の余地がありました。

 本研究では、ヒトの膵発生過程において膵芽細胞が出現する際に細胞の塊をつくることに着目し、それを培養皿上で再現しました。その結果、細胞密度と相関して膵芽細胞(PDX1+ NKX6.1+ cell)への分化が促進し、細胞塊を作製して培養することでさらに効率よく分化することを発見しました(図1)。また、細胞塊の形成で分化誘導に効果が見られたことから、細胞間相互作用を介した新たな分化の仕組みが存在することも示唆されました。さらに、作製した膵芽細胞をマウスに移植すると、生着して胎児の膵臓に似た組織構造を形成し(図2)、最終的には血糖値に応じてインスリンを分泌する成熟した膵β細胞へと分化しました。


osafune_fig1.png


図1 細胞密度は膵芽細胞への分化誘導効率に相関する
膵前駆細胞から膵芽細胞への分化誘導を様々な細胞密度で培養した。
d10: 膵芽細胞への分化誘導前
S4F:細胞密度を調整せずに平面培養系にて、膵芽への分化誘導因子を含む培養液で培養
S4F-2D: 様々な細胞密度の平面培養系にて、膵芽への分化誘導因子を含む培養液で培養
S4F-AG: 様々な大きさの細胞塊の浮遊培養にて、膵芽への分化誘導因子を含む培養液で培養



osafune_fig2.png
図2 ヒトES細胞由来の膵組織 
作製した膵芽細胞を移植して30日後の移植片を免疫染色した。同様の結果がヒトiPS細胞を使っても得られた。赤色:インスリン産生細胞、青色:グルカゴン産生細胞、緑色:膵前駆細胞。
Scale bar, 300 μm


 また、この手法で膵芽細胞が作製可能であることは、複数のヒトiPS細胞株で確認しており、将来iPS細胞のストックから移植用膵細胞を作製して糖尿病患者を治療するという再生医療の開発にも有用であると考えられます。

 
論文名
″Cell aggregation optimizes the differentiation of human ESCs and iPSCs into pancreatic bud-like progenitor cells″


雑誌名
Stem Cell Research

DOI: 10.1016/j.scr.2015.01.007


著者
Taro Toyoda1, Shin-Ichi Mae1, Hiromi Tanaka1, Yasushi Kondo1, 2, Michinori Funatoa1, 3, Yoshiya Hosokawa1, 4, Tomomi Sudo1, Yoshiya Kawaguchi1, Kenji Osafune1*

*責任著者
1) 京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)
2) 京都大学 糖尿病・内分泌・栄養内科
3) 国立病院機構長良医療センター 臨床研究部
4)大阪大学 内分泌・代謝内科学

本研究への支援
本研究は、下記機関より資金的支援を受けて実施されました。
・JST 山中iPS細胞特別プロジェクト
・JST 再生医療実現拠点ネットワークプログラム「iPS細胞研究中核拠点」、「技術開発個別課題」
・内閣府 「最先端研究開発支援プログラム(FIRST)」
・文部科学省科学研究費補助金 「若手研究(B)」
・武田科学振興財団
・鈴木謙三記念医科学応用研究財団
・ライフサイエンス振興財団
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