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2011年10月18日

再生医療用iPS細胞バンク構築に向けた薬事戦略相談を開始

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、再生医療用iPS細胞バンクの構築準備を進めていますが、規制科学部門の木村貴文教授、青井貴之教授と藤原沙都姫研究員が中心になり、このほど、医薬品医療機器総合機構(PMDA)(注1)との薬事戦略相談(注2)における対面助言を開始し、iPS細胞バンク構築に向けた規制的課題を克服するための第1歩を踏み出しました。

CiRAは、細胞移植治療に用いることのできるiPS細胞バンクの構築を目指し、細胞のHLA型(注3)のうち、他のHLA型との拒絶反応が低い3座(HLA-A、HLA-B、HLA-DR)ホモ接合型を持つ人からのiPS細胞をバンク化する計画を進めています。このように様々な移植適応型提供者より頂いた皮膚等の組織から作製した「再生医療用iPS細胞バンク」を構築することにより、品質の保証されたiPS細胞及びiPS細胞から作製した移植用細胞をあらかじめ準備しておくことができ、個々の患者さんからiPS細胞を作製する必要がなくなります。これによって、移植細胞を準備する期間の大幅な短縮や、患者さん1人あたりにかかる費用の削減に貢献し、より多くの難治性疾患や急性期の傷病の治療に対する再生医療を実現することが可能となります。

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再生医療用iPS細胞バンクの構築までにはたくさんのクリアすべき技術的課題も残されていますが、種々の法規制や関連する様々な指針等の遵守が必要です。しかし、iPS細胞はこれまでになかった新しい技術であるため、iPS細胞バンクの作製に適した規制制度がまだ全て整っていないという課題もあります。

CiRA規制科学部門は、この規制に関する対応について、規制当局であるPMDAの薬事戦略相談における対面助言を開始しました。第1回目は、本年9月21日に東京で行われ、法規制に準拠したiPS細胞の作成方法やバンク構築に向けた準備等について相談しました。今後も引き続き薬事戦略相談を行い、一日でも早い再生医療用iPS細胞バンクの構築を目指します。

<用語説明>
注1:医薬品医療機器総合機構(PMDA)
医薬品・医療機器等の審査及び安全対策、並びに健康被害救済の三業務を公正に遂行し、国民の健康・安全の向上に取り組む機関。

注2:薬事戦略相談
日本発の革新的な医薬品・医療機器の創出に向けて、有望なシーズを持つ大学・研究機関、ベンチャー企業を主な対象として、実用化に向けて必要となる試験・治験計画策定等に関する指導・助言を行うもの。平成23年7月1日付けでスタートした新しい相談事業です。詳しくは以下のPMDAのホームページをご参照ください。
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/info/consult/yakujisenryaku.html

注3:HLA型
白血球にはHLA(Human Leukocyte Antigen)と呼ばれるABO式血液型のような型があり、これが自他を区別するマーカー分子として機能し、細胞移植時に拒絶反応を起こすことがわかっています。しかしHLAの中には、まれに3座ホモ接合型(HLA-A、HLA-B、HLA-DRの3座で父方由来と母方由来の遺伝子が同一)があり、この型に対して、ある系統のHLAのタイプは拒絶反応が低いことが知られています。そこで、CiRAでは3座ホモ接合型のHLAを持つ人からiPS細胞を樹立して、再生医療用iPS細胞バンクを作る計画を進めています。HLA3座ホモ接合型のiPS細胞が140株あれば、日本人の約9割への細胞移植が可能という試算もあり、すぐに140株を揃えることは出来なくとも、3座ホモ接合型のHLAを持つ人をドナー(提供者)としてリクルートしてiPS細胞を作製し、臨床用iPS細胞バンクの構築を進めたいと考えています。

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