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研究成果 
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2011年5月26日

iPS細胞誘導の初期に発現するECAT11に関する論文 PLoS ONE に掲載

 沖田圭介講師(京都大学iPS細胞研究所)研究グループの岩渕久美子研究員らは、ES細胞注1)に特異的に発現する因子の一つであるECAT11(L1td1)がマウスES細胞の多能性注2)維持には必須ではないものの、iPS細胞注3)誘導の極めて早い段階から発現することを見出しました。本研究は、米国科学誌「PLoS ONE」5月26日付に掲載されました。

 ES細胞は、高い増殖能力と様々な細胞に分化できる多能性を併せ持っており、iPS細胞と性質の多くが共通しています。岩渕研究員らはES細胞に特異的に発現する因子の一つECAT11に注目し、その機能を解析しました。

 ECAT11の代わりにEGFP(蛍光タンパク質)が発現するECAT11のノックアウトマウス注4)(を作製したところ、通常のマウスと同様に成長し、特別な異常はみられませんでした。また、ECAT11遺伝子が欠損したES細胞を作製した場合にも、正常のES細胞と増殖能力や分化能力に違いはみられませんでした。この結果は、ECAT11が個体発生や細胞の多能性維持機構に必須ではないことを示しています。

 さらにiPS細胞誘導過程におけるECAT11の発現制御機構について解析したところ、マウス線維芽細胞にiPS細胞誘導因子であるOct3/4、Sox2およびKlf4を同時に発現させた時のみ、ECAT11の発現が活性化されることが明らかになりました。また、iPS細胞誘導の極めて早い段階からECAT11の発現がみられることを見出しました。

 また、本研究で作製したECAT11-EGFP蛍光レポーター注5)は、iPS細胞が誘導されるごく初期でのみ光ることから、iPS細胞のリプログラミング注6)の機構を解析するために有用であると考えられます。

論文名と著者
  1. 論文名
    ECAT11/L1td1 is enriched in ESCs and rapidly activated during iPSC generation, but it is dispensable for the maintenance and induction of pluripotency
  2. ジャーナル名
    PLoS ONE
  3. 著者
    Kumiko A. Iwabuchi, Tatsuya Yamakawa, Yoshiko Sato, Tomoko Ichisaka, Kazutoshi Takahashi, Keisuke Okita and Shinya Yamanaka
用語説明

注1)ES細胞
胚性幹細胞(ES細胞:embryonic stem cell)のことで、マウスでは受精後3.5日目の胚盤胞から将来からだになる部分に成長する運命をもった細胞(内部細胞塊)を取り出し、それを培養することによって作製される多能性幹細胞の一つ。あらゆる組織の細胞に分化することができる。

注2)多能性
あらゆる組織の細胞に分化できる能力のこと。ES細胞とiPS細胞はまとめて多能性幹細胞と呼ばれる。

注3)iPS細胞
体細胞に特定因子を導入することにより樹立される、ES 細胞に類似した多能性幹細胞。2006 年に山中教授の研究グループにより世界で初めてマウス体細胞を用いて樹立成功が報告された。2007 年にヒトiPS細胞樹立成功が発表されている。

注4)ノックアウトマウス
遺伝子の生体内の機能を研究するために人為的に目的とする遺伝子を働かなくしたマウス。ES細胞を利用して作製する。

注5)蛍光レポーター
遺伝子が発現するタイミングや量を蛍光として観察できるようにしたもの。ここでは細胞やマウスを指す。目的の遺伝子に蛍光たんぱく質遺伝子をつないだり、置き換えたりすることで作製する。

注6)リプログラミング
体細胞のゲノムDNAについた分化の目印が初期化されることで、多能性幹細胞などに変化すること。

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