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研究成果 
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2021年3月19日

世界中で樹立されたiPS細胞の数や疾患の種類が明らかに

ポイント

  1. 日米欧の国際協力によりiPS細胞データベース情報を統合したウェブサイトについて論文として報告した。
  2. 世界中で樹立されたiPS細胞とES細胞について、その数や疾患の分類を行った。
1. 要旨

 藤渕 航教授(CiRA未来生命科学開拓部門)らの研究グループは、2019年に日米欧で樹立されたiPS細胞の検索一元化を目的として公開したウェブサイト「幹細胞バンクデータ統合コレクション」(Integrated Collection of Stem Cell Bank data by MIACARM (ICSCB))注1)に登録されたデータを解析し、 国際協力論文として報告しました。世界の主要な幹細胞バンク( HipSciEBiSCNYSCFWiCell Research Instituteeagle-iRIKEN BRCTaiwan Human Disease IPSC Service Consortium など)注2)からの39カ国16,000件以上のデータを統合し、患者さんから作製した6,000以上の幹細胞株の疾患の種類や数を解析した結果、登録された幹細胞のうち80%以上はiPS細胞、登録されている疾患の種類は1,000種類以上にのぼることが判明しました。

 この研究成果は2021年3月18日11:00(米国ET時間)に米科学雑誌「Stem Cell Reports」オンライン版で公開されました。

2. 研究の背景

 世界中で樹立されたiPS細胞株が登録されたデータベースは、日米欧を中心に作成・公開されています。藤渕航教授らの研究グループは、4つの主要データベース( RIKEN BRCSKIPhPSCregeagle-i注3)のデータを統合し、 一元検索可能なウェブサイト「幹細胞バンクデータ統合コレクション」を2019年より公開してきました(CiRAニュース 2019年3月20日)。 しかしながら、これまで、世界中の幹細胞バンクによるiPS細胞株の数や疾患特異的iPS細胞の樹立状況を調査することが困難な状況でした。今回、日米欧から、陳影大学院生(CiRA未来生命科学開拓部門)、桜井 都衣 特定研究員(元CiRA増殖分化機構研究部門、現フロリダ国際大学ハーバート・ワートハイム医科大学)、前田 純宏 専任講師(慶應義塾大学医学部)、増井 徹 特別招聘教授(慶應義塾大学医学部)、岡野 栄之 教授(慶應義塾大学医学部)、Johannes Dewender(フラウンホーファー生物医学技術研究所)、Stefanie Seltmann(フラウンホーファー生物医学技術研究所)、Andreas Kurtz(ベルリン医科大学、フラウンホーファー生物医学技術研究所)、桝屋 啓志 統合情報開発室長(理化学研究所BRC)、中村 幸夫 細胞材料開発室長(理化学研究所BRC)、Michael Sheldon(ラトガーズ・ニュージャージー州立大学)、Juliane Schneider(ハーバード大学臨床トランスレーショナル科学センター)、Glyn Stacey(国際幹細胞バンキングイニシアチブ、中国科学院国立幹細胞リソースセンター)、Yulia Panina 研究員(CiRA未来生命科学開拓部門)、藤渕 航 教授(CiRA未来生命科学開拓部門)が国際協力することで、世界中で樹立されたiPS細胞とES細胞に関する統計調査が可能となりました。

3. 研究結果

 世界中に存在する15のバンクやレジストリーにおける細胞株のうち約91%を所有する10の主要な幹細胞バンクやレジストリー注4)を統合し、36カ国から16,000件以上のデータ及び患者さんから作製した6,000以上の幹細胞株について、種類や数を解析した結果、登録細胞の64%以上は日米英からであり、そのうち80%以上はiPS細胞で残りはES細胞や線維芽細胞などで、疾患の種類は1,000種類以上にのぼることが判明しました。また、疾患特異的iPS細胞を17のカテゴリーに分類した結果、神経系疾患が44.9%と群を抜いて多く、次が遺伝性疾患13.1%、内分泌系疾患7.9%、心血管系疾患7.8%、精神疾患6.6%となっていました。

4. 論文名と著者
  1. 論文名
    Integrated Collection of Stem Cell Bank data, a data portal for standardized stem cell information
  2. ジャーナル名
    Stem Cell Reports
  3. 著者
    Ying Chen1, Kunie Sakurai1, Sumihiro Maeda2, Tohru Masui3, Hideyuki Okano2, Johannes Dewender4, Stefanie Seltmann4, Andreas Kurtz4,5, Hiroshi Masuya6, Yukio Nakamura7, Michael Sheldon8,
    Juliane Schneider9, Glyn N. Stacey10,11, Yulia Panina1, and Wataru Fujibuchi1,*
    * 責任著者
  4. 著者の所属機関
    1. 京都大学iPS細胞研究所
    2. 慶應義塾大学 医学部生理学教室
    3. 慶應義塾大学 医学部臨床遺伝学センター
    4. フラウンホーファー生物医学技術研究所
    5. ベルリン医科大学
    6. 理化学研究所 バイオリソースセンター 統合情報開発室
    7. 理化学研究所 バイオリソースセンター 細胞材料開発室
    8. ラトガーズ・ニュージャージー州立大学
    9. ハーバード大学臨床トランスレーショナル科学センター
    10. 国際幹細胞バンキングイニシアチブ
    11. 中国科学院国立幹細胞リソースセンター
5. 本研究への支援

本研究は、下記機関より資金的支援を受けて実施されました。

  1. 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム
    「iPS細胞研究中核拠点」
  2. 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)再生医療臨床研究促進基盤整備事業:
    「再生医療等臨床研究を支援する再生医療ナショナルコンソーシアムの実現」(代表機関:日本再生医療学会)
    分担研究課題「国際的な幹細胞情報の発信と収集」
  3. The German Academic Exchange Service (DAAD) PPP grant.
6. 用語説明

注1) 幹細胞バンクデータ統合コレクション(ICSCB)

注2) 世界中の主要な幹細胞バンク

  1. HipSci: Human Induced Pluripotent Stem Cell Initiative
  2. EBiSC: European Bank for Induced pluripotent Stem Cells
  3. NYSCF: The New York Stem Cell Foundation
  4. WiCell Research Institute
  5. eagle-i:ハーバード臨床橋渡し科学センターで開発されたリソース発見ツール
  6. RIKEN BRC:理化学研究所バイオリソースセンター
  7. Taiwan Human Disease IPSC Service Consortium

注3)4つの主要データベース

  1. RIKEN BRC:理化学研究所バイオリソースセンター
  2. SKIP: Stemcell Knowledge and Information Portal
    慶應義塾大学で開発されCiRAへ移管された幹細胞情報データベースプロジェクト
  3. hPSCreg: Human pluripotent stem cell registry
    ベルリン医科大学で開発されたヒト多能性幹細胞情報データベース
  4. eagle-i
    ハーバード臨床橋渡し科学センターで開発されたリソース発見ツール

注4)10の主要な幹細胞バンクやレジストリー
hPSCreg, SKIP、EBiSC, NYSCF, WiCell, JCRB*, Taiwan HDiSC、HipSci, eagle-i, RIKEN BRC
*JCRB: 医薬基盤・健康・栄養研究所 JCRB細胞バンク

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