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主任研究者
Principal Investigators

増殖分化機構研究部門 金子 新 副所長・教授

金子 新 写真
金子 新 M.D., Ph.D.
研究概要

当研究室はiPS細胞の特性を生かした免疫再生治療の実現に向けた研究を行っています。

免疫細胞の一つであるTリンパ球は抗原特異的に標的細胞を認識し、その機能を発揮する細胞ですが、標的抗原を認識するためのT細胞受容体(TCR)はゲノム編集を伴う遺伝子再構成により形成されるため、 Tリンパ球を初期化したiPS細胞(T-iPS細胞)には、元のTリンパ球がもつTCR遺伝子配列が保存されています。我々はこの特徴を利用して抗原特異的ヒトT-iPS細胞から、若返った抗原特異的T細胞を大量に再分化誘導させる手法を確立しました(Nishimura et al., Cell Stem Cell, 2013, Ito et al., Communication Biology, 2021)。

当研究室ではこの技術を臨床段階に進めるための基礎研究を継続し、当研究所が提供するHLAホモドナー由来のiPS細胞に疾患特異的なTCR遺伝子を導入することで、複数の患者さんに使用できる抗原特異的Tリンパ球を製造することを示しました(Minagawa et al., Cell Stem Cell, 2018)。さらにはその抗原特異的T細胞誘導工程を動物由来成分を含有しない製造工程・拡大培養工程へと改良するとともに、キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子導入を併用することで、複数の患者さんを対象にiPS細胞由来のCAR-Tリンパ球を供給できる可能性を示しました(Iriguchi, Yasui, and Kawai et al., Nature Communications, 2021, Kawai et al., Molecular Therapy, 2021, Ueda et al., Nature Biomedical Engineering, 2022)。加えて、複数の手法でiPS細胞の免疫原性を低減化することにより、わずかな種類のiPS細胞で治療用のTリンパ球を供給できる可能性も示しています(Xu and Wang et al., Cell Stem Cell, 2019, Wang et al., Nature Biomedical Engineering, 2021)。これらの技術の一部は民間企業へと導出され、臨床開発が進んでいます。

そのほかに、当研究室では数多くある他のTリンパ球サブセット(Kitayama et al, Stem Cell Reports, 2016)やNK細胞を含む自然リンパ球サブセット(Ueda et al., Stem Cell Reports, 2018, Ueda et al, Cancer Science, 2020)、マクロファージ(Higaki and Hirao, Molecular Therapy, 2018, Iwamoto et al., Molecular Therapy Methods & Clinical Development, 2021)などをiPS細胞から分化させ、サブセットごとの特徴を生かす免疫再生治療法の開発を進めています。

当研究室はこれらの研究を通じて、再生医療の実現化とがんや感染症、自己免疫疾患、移植医療などの治療成績の向上に貢献します。

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