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主任研究者
Principal Investigators

増殖分化機構研究部門 堅田 明子 准教授

堅田 明子 写真
堅田 明子 Ph.D.
研究概要

私たちの研究室では、神経幹細胞の運命決定機構と、脳脊髄液を産生する脈絡叢の多様な機能に着目し、脳の発達から神経疾患までを理解する研究に取り組んでいます。

脈絡叢は、脳脊髄液中に多様な因子を分泌することで脳の発生や恒常性の維持に寄与し、また血液-脳脊髄液関門として全身と脳の情報交換を担う重要な組織です。しかし、その機能の多くは未だ十分に解明されていません。当研究室では、マウスを用いた基礎研究を深化させるとともに、さまざまな神経疾患患者さんから作ったiPS細胞をもとに大脳皮質や脈絡叢のオルガノイドを作製し、その機能を解析しています。これらの研究を通じて、脈絡叢を標的とした革新的な治療法の可能性を切り拓き、神経科学と医療の未来に貢献することを目指しています。

1. 発生期神経幹細胞の内在性プログラムの解明
神経幹細胞は、発生時期や周囲の環境情報を統合し、自らのエピゲノムをダイナミックに変化させることで、細胞運命を決定します。私たちは、このエピゲノム変化を駆動する分子メカニズムの解明を目指しています。現在、遺伝子発現とクロマチン構造を同時に解析できるシングルセル・マルチオミクス解析を進めており、細胞運命を制御する遺伝子領域や転写因子を探索することで、神経幹細胞の性質変化の全貌に迫ろうとしています。

2. 脈絡叢分泌因子と脳機能制御
脈絡叢は、脳脊髄液を産生するだけでなく、増殖因子、エクソソーム、miRNAなど多様な因子を脳脊髄液中に分泌し、神経幹細胞やニューロンの挙動を精緻に制御しています。私たちはこれまでに、脈絡叢の加齢変容が記憶・学習機能に影響を与えることを見出しており、現在その分子機構の解明を進めています。

3. 脈絡叢異常がもたらす疾患メカニズムの解明
私たちは、Rett症候群(RTT)モデルマウスにおいて、脈絡叢に遺伝子発現異常が生じ、その結果、複数の分泌因子の発現低下と血液‐脳脊髄液関門の破綻が起こることを見出しました。現在は、患者さん由来のiPS細胞から作製した脈絡叢オルガノイドとマウスモデルを組み合わせることで、発達障害や神経変性を伴う疾患(アルツハイマー病や多発性硬化症など)における脈絡叢の機能変容を検証できる実験系を構築しています。

4. 大脳皮質-脈絡叢アセンブロイドによる病態再現と医療応用
患者さん由来iPS細胞から作製した大脳皮質と脈絡叢のオルガノイドを融合させたアセンブロイドを構築することで、脈絡叢が皮質の発達や機能に与える影響を解析しています。これにより、脈絡叢の分泌因子や血液-脳脊髄液関門としての機能変化が神経回路形成やシナプス機能に及ぼす影響の解明に取り組みます。さらに、モデルマウスにおける行動解析と組み合わせることにより、オルガノイドで見出した分子・組織レベルの異常を、生体レベルの記憶・学習や運動機能の変化に関連づけて検証しています。こうした知見を基盤に、脈絡叢を新たな治療標的とする医療応用を目指しています。

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