研究概要

近年の生命科学分野では、オミクスと呼ばれる網羅的データによる細胞レベルでのシステムの理解が不可欠になってきた一方、バッチエフェクトや系統的変動をもつオミクスデータの統合解析には数理・統計科学的アプローチが求められています。さらに細胞の確率的な運命決定までをも予測するためには、膨大なパラメーター空間を効率的に探索できる人工知能・機械学習技術が、さらなるブレークスルーを生み出すものとして期待されています。

本研究室では情報科学・統計・数理・機械学習といった学際的技術を利用して、生命科学データの大規模比較解析のための手法開発を行います。大量の公開データなどを組み合わせたメタ解析的アプローチにより、遺伝子発現制御のための共発現ネットワークを構築し、一細胞ごとのヘテロジェナイティ、老化による変動、そして進化過程において生物がどのようにロバスト性と複雑性を獲得してきたのかなど、多様な現象を同一のフレームワークで理解することを目指します。

具体的に現在対象としているのは、RNA-seqによる共発現ネットワーク構築、一細胞RNA-seq・ATAC-seqによる細胞種特異的エンハンサーの発見、RNAの構造解析と転写後制御、制御領域の進化的変遷などです。これらについて、iPS細胞を含む様々なヒトの細胞種や異なる生物種間の比較に適用していくことで、生物における普遍的なシステムの解明を目指します。