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2026年7月17日
亀山トリエンナーレ2027プレ企画「科学とアートがであう時」が開催されました
2026年6月21日、三重県亀山市文化会館中央コミュニティセンターにおいて、亀山トリエンナーレ2027プレ企画「科学とアートがであう時」が開催されました。当日は、150名以上の方々にご参加いただきました。
亀山市文化会館(会場)の風景
本イベントは二部構成となっており、第一部では、上廣倫理研究部門の三成寿作准教授が「ELSIという領域―科学とアート、社会をつなぐ取組」と題した講演を、第二部では、倫藝部(笠間絹子さん(元・三成研究室 教務補佐員)、黒田雅子さん(三成研究室 特定職員)、鈴木美香さん(大阪大学 研究オフィス 講師))が「アート×科学の可能性―創りあう 語りあう 想いあう」と題したワークショップを、それぞれ行いました。
第一部の講演では、三成准教授が、iPS細胞の発見とその実用化の現状を皮切りに、亀山トリエンナーレ2024に参加した体験、さらには、科学とアート、社会とのつながりについて話題提供を行いました。とりわけ、三者のつながりについては、科学を通じて見出されるアートや、科学的知見のアート作品への転化等について触れた後、先端生命科学とその倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal, and Social Implications: ELSI)とをアートを通じて接続する「倫藝」という取組について紹介しました。倫藝とは、「専門知と日常知との接続を図りながら、さまざまな関係性を大切にし、美しさと喜びのある生を育むための思索と技術」を指します。端的には、「関係性(倫)における美を重んじる生活の藝」「倫理的(生活)藝術」を意味します。このことは、iPS細胞のような先端生命科学の事柄も、私たちと接続し得ることを示しています。
第一部の最後には、特別ゲストとして、昨年、三成研究室にインターン生として滞在した森めぐみさん(東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程2年)が登場しました。倫藝の一環として制作された動画作品に対してピアノ作品を創作した経緯を説明した後、実際にその作品を演奏しました。そして、「個々人が映像や音楽を含め、アートを通じて自身の想像力の豊かさを実感し、それを共有していくなかで対話の深化を図れるのではないか」と会場に語りかけました。 さらに、本日の参加者が日々の暮らしのふとした瞬間に自らの感性に触れる機会に恵まれることを願い、会場の雰囲気を取り込んだ即興演奏を披露しました。
講演とピアノ演奏の様子(第一部)
第二部のワークショップ前半では、倫藝部に関連する、これまでの各メンバーの活動を紹介しました。まず黒田さんが、倫藝部を結成するに至った理念や経緯とともに、iPS細胞研究所で実施した小中学生を対象としたワークショップの内容を、続いて、笠間さんがiPS細胞等の社会的なあり方を思索するための、アート作品『曖昧で確かなもの』(制作:tupera tupera, 2023年)をめぐる制作過程を、そして最後に、鈴木さんが子ども哲学・哲学対話の意義や可能性を発表しました。それぞれ「やってみたら意外とできた」という共通の体験を背景に、今の立場を越えて新たなことに少しでも挑戦する意味や大切さについて共有しました。
第二部のワークショップ後半では、絵本『トラタのりんご』(制作:nakaban, 企画:三成寿作, 2023年)の中の、ある場面を会場のスクリーンに投影し、参加者のみなさんと一緒に対話型鑑賞と呼ばれるアート・コミュニケーション手法を体験しました。同じ一枚の絵を見ていているようであっても、人によって見方や感じ方が全く異なること、また科学や技術の使われ方まで語ることができること等、身近な暮らしの中に潜む「科学やアートとのつながり」について思いをめぐらせました。
倫藝部による活動紹介と対話型鑑賞の様子(第二部)
イベント終了時には、コメント用紙にたくさんの参加者から所感が寄せられました。「今日のイベントのことを誰かに話すとしたらどのように話しますか」という質問に対しては、「科学の内の美しさや心の動きに気づくきっかけになった」「科学とアートはもともと出会っていた」、さらには「あなたは(絵本『トラタのりんご』のテーマである) について何を感じる?」といった興味深い回答が得られました。また「ワークショップを聴いて、自分も何か『やってみよう!』と思ったことはありますか」という質問に対しては、「インプット×アウトプット×対話を怖がらずにしていきたい」「あいまいなことや物について誰かと話してみようと思った」といった前向きな姿勢が見られました。そして、より根源的な、「あなたにとって『文化』とはどのようなものですか?」という質問に対しては、「人はパンのみにて生きるにあらず」「社会の中で紡がれる人類史」「心の拠りどころ」「生糸」「一人ひとりに染みついたこと全て」「生活の時間の質を変えるもの」等、それぞれの知識や経験にもとづく多様な「文化観」が立ち現れました。
科学やアートは必ずしも特別なものというわけではなく、日常生活における、身近な問いや気づきとも深く関わるところがあるように思います。自分の感じたことを言葉にし、相手の感じ方に耳を傾ける。そして、その先を、少しずつでも探究してみる。この積み重ねが、多様な価値観が交錯する社会において、お互いの相違を理解し合う対話の基礎になるのではないでしょうか。この度の機会では、このような新たな認識を得ることができました。今後も三成研究室および倫藝部では、科学とアート、そして社会について、多様な人々がともに考え、対話する機会を育んでいきたいと思います。
京都大学iPS細胞研究所の三成先生から亀山トリエンナーレ事務局に、最初に、ご連絡いただいた時は本当に驚きました。「生命科学」と「アート」がどのように結びつくのか、不思議で仕方ありませんでした。その後、三成先生と研究員の皆さまが私たちの活動に対して興味・関心を持ってくださり、度々、亀山を訪れてくださいました。亀山トリエンナーレ2024の開催時には搬入、展示の時点からアーティストをはじめ監修者、実行委員等に熱心に取材をされました。そして、本年6月21日、三成研究室の皆さまをお迎えして講演会&ワークショップの開催に至りました。私も表現者の一人として、また、芸術祭の企画運営をしている者として、今回のイベントはとても刺激的で面白く体験させていただきました。三成先生のお話を聞いて「アート」と「科学」はさまざまな人と議論することを介して社会的に意味を持つことを認識しました。
「芸術は非科学的な科学である」という言葉の持つ意味合いが少し理解できたように思いました。
(亀山トリエンナーレ 事務局長・森敏子さん)
私たちの皮膚は、目や耳を凌ぐほどの鋭い感度で世界を捉えています。東洋医学の陰陽五行論が、喜怒哀楽や四季の色彩、音、香りで心身を調和させるように、また数学者の岡潔が「自然界はすべて数式で表され、数学とは極めて情緒的なセンサーによる営み(芸術)である」と考えたように世界は目に見えない調和で満ちています。ひとつの作品やデザインに豊かな歴史や文脈が宿るように「倫藝」とは、私たちの日常にある些細な至福と、世界の美しさを接続する可能性を秘めているように思います。
(亀山トリエンナーレ 実行委員・大岡英介さん)
亀山トリエンナーレの関係者の方々
(左:森敏子さん、右:大岡英介さん)
亀山トリエンナーレの関係者の方々
(上:森敏子さん、下:大岡英介さん)
