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2024年8月8日
京都大学iPS細胞研究所とセルプロジャパン株式会社が共同研究契約を締結
〜認知症をはじめとする神経疾患に対する新規治療法の開発を目指す〜
国立大学法人京都大学 iPS細胞研究所(本部:京都市左京区、所長: 髙橋淳、以下「CiRA」)と、セルプロジャパン株式会社(神奈川県藤沢市、代表取締役:佐俣文平、以下「セルプロジャパン」)は、神経疾患における脳内の機能改善を目的として、「ヒト幹細胞由来生理活性物質の特性を活かした新規治療法」の開発を目指すための基盤技術構築に関する共同研究契約を締結したことを、下記の通りお知らせいたします。
CiRAの髙橋淳研究室では、iPS細胞から様々な神経細胞を誘導し培養する独自技術を構築しております。一方で、セルプロジャパンはヒト幹細胞由来生理活性物質の医薬品への応用を目指してきました。CiRAの保有するiPS細胞培養技術と、セルプロジャパンで確立された製造技術を組み合わせることによって、「新しいコンセプトの神経難病治療」に向けた基盤技術の構築に取り組みます。
近年、ヒト幹細胞由来生理活性物質として上清液やエクソソームを用いた研究が盛んに行われています。細胞から分泌される成分は数千種類にも及ぶことがわかっており、これらの成分の組み合わせや濃度によって神経疾患に対する網羅的治療が可能となる可能性があります。
この可能性を最大限に高めるためには、細胞の理解を深めることによって、どのような細胞がどういった生理活性物質を分泌するのか、またそれらの生理活性物質が機能的に働くのかどうかを見極める必要があります。
人間の脳は数千億個の神経細胞やグリア細胞等から構成されています。脳の病気の患者さんでは、脳の複雑な高次構造が障害されています。神経疾患では脳の複数種類の細胞が同時に障害を受けている可能性が考えられるため、複数種類の有効成分で網羅的にアプローチすることが重要となり得ます。
今回の共同研究では、様々な細胞種から分泌される生理活性物質の成分を検証し、病態モデルを使った安全性及び有効性評価を行います。これら基礎研究を積み重ねることにより、将来的に認知症などを対象として新しい治療薬の開発を目指します。
国内の認知症患者数は2030年で約523万人に、2050年には約587万人に達すると推計されています。1)世界の認知症患者数は、2019年時点で約5,520万人と推計されており、2050年には約1億3,900万人に増加すると予測されています。2)
認知症における治療関連費用は2019年時点で年間1.3兆米ドルと推定されています。この費用は2030年までに年間1.7兆米ドルまで膨らむと推定されており、今後の介護費用増加を加味すると年間2.8兆米ドルになると予測されています。3)
世界で最も高齢化の進んでいる日本において、認知症に関連する社会的費用(医療費、介護費、インフォーマルケアコスト4))は年間約14.5兆円と推計されています。5)日本国内における介護保険事業の2021年度末時点の要介護認定者数は690万人であり6)、2022年の調査によると、要介護認定を受ける原因の第1位が認知症と報告されています。7)
1)認知症施策推進関係者会議(第2回)二宮氏提出資料. 2024-5-8. 内閣官房.
2)認知症に対する公衆衛生上の対応に関するグローバル・ステータス・レポート概要(日本版). 2021-9-15. 日本語訳版作成者 国立長寿医療研究センター 荒井秀典.
オリジナル(英語版)Global status report on the public health response to dementia Executive summary. 2021-9-2. WHO.
3)WHO:認知症対策に失敗した世界. 2021-9-2. 日本認知症国際交流プラットフォーム.
4)家族等が無償で実施するケアにかかる費用
5)認知症の社会的費用を推計. 2015-5-29. 慶応義塾大学医学部プレスリリース.
6)令和3年度 介護保険事業状況報告(年報). 2021. 厚生労働省.
7)2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況「IV 介護の状況」. 2022. 厚生労働省.