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2026年6月8日

江藤浩之教授 所長就任の想い

江藤 えとう 浩之 こうじ 所長・教授

江藤浩之新所長は、循環器内科医の時代に「血小板」への純粋な疑問がわき、研究の道へ進みました。自身の原点である「リサーチ(基礎研究)」と「アプリケーション(医療応用)」を両輪とし、若手研究者が本音で語り合える「心地よいコミュニティ」を目指す、新所長のビジョンに迫ります。
原点は「なぜ」というシンプルな好奇心

 私の研究の原動力は、幼少期から変わらない「なぜ」という純粋な問いにあります。かつて循環器内科医としてカテーテル治療に当たっていた際、血管を詰まらせる「血小板」の存在に強い興味を抱きました。なぜ普段は起きない凝集が突然起きるのか。その答えを求めて米国へ渡り、気づけば「血小板をつくる」という真逆の面白さにのめり込んでいました。CiRAで15年、iPS細胞から血小板や赤血球をつくる研究に取り組んできましたが、そのとき芽生える好奇心に基づき、なぜを追求することは変わっていません。その回答を求め、できなくてもできるまでやり続けることが大切だと思っています。

リサーチとアプリケーション、両輪で走る

 CiRAの使命は、その名の通り「リサーチ」と「アプリケーション」の両立です。医療への応用を達成し、薬や細胞治療を患者さんに届けることは所長が代わっても変わらない目標です。ただ、それだけでは研究所は持続しません。革新を生み続けるためには、次世代を担う「ライジングスター(有望な研究者)」によるブレイクスルーが不可欠です。だからこそ、若い人たちが自ら自分の可能性に気づけるような環境をつくりたい。得意なところを伸ばし、それがフィットする場所を一緒に探す努力をする。ほったらかしをせず、ちょっとお節介を焼く。研究所のメンバーの人生が豊かになるような環境となることを目指します。

躊躇なく意見を言えるコミュニティへ

 私が理想とするのは「CiRAにいて幸せだな」と思えるコミュニティをつくることです。正論を一方的に押しつけられても、人は受け付けられないものだと思います。お互いのことを認め、「同じ空気を吸いたい」と思える関係性の中で、ブレイクスルーは生まれる。躊躇なく意見を言い、自分にはない視点に気づく。そうした健全な環境での刺激が、新たなアイデアを育みます。今年度は、若手研究者がより活発に議論できる場を整えるため、プログレスセミナー(週1回、CiRA全体で開催される研究進捗報告会)の形式を見直しました。時間を気にせず質問できるようにしたほか、ファシリテーターを配置するなど、議論が深まるよう工夫しています。各自がコミュニティで幸せを感じながら、自分の可能性を最大限に伸ばしてほしいと思っています。

社会からの支援がCiRAの挑戦を可能にする

 CiRAが目指す、基礎研究と応用研究の両立。その研究環境づくりを支えているのが、iPS細胞研究基金です。学生や若い研究者が自らのアイデアで難題に挑み、設備の恩恵で最先端研究に取り組めるのは、みなさまからのご支援があるからこそです。寄付者をご招待する「感謝の集い」などを通じて、所員一人ひとりが寄付者の方とのつながりを大切にしていくことも、今後ますます重要になっていくと感じています。さらに、研究への理解をより広げていくためには、成果だけでなく、普段何をしているのか、どんな考え方に基づいて活動しているのかを、積極的に外へ発信していくことも欠かせません。そうした発信が、寄付者の方々や、新たに寄付を考えてくださる方々との連携、心のつながりになるのだと思います。

  1. プロフィール: 江藤 えとう 浩之 こうじ 所長・教授


    循環器内科医として臨床に従事した後、帝京大学医学部助手、米国スクリプス研究所博士研究員、東京大学医科学研究所助教、同研究所ステムセルバンク准教授などを経て、2011年よりCiRA教授、2026年より現職。ヒトiPS細胞から赤血球や血小板をつくり、輸血に役立てるための研究に取り組む。
  2. 取材・執筆した人:吉野 千明
    京都在住のフリーランスライター・講師。約10年間、企業や大学、研究所での検査・実験業務に従事。現場を知るサイエンスライターとして活動する。インタビュー記事やプレスリリース、オウンドメディア、書籍執筆など300本以上の制作実績を持つ。
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