ニュース・イベント
News & Events

ニュース・イベント
News & Events

Home › ニュース・イベント › ニュース › 2012年 › その他 › ノーベル・ウィーク・レポート3

ニュース 
News

2012年12月9日

ノーベル・ウィーク・レポート3

7日の夕方、山中伸弥所長はジョン・ガードン卿とともにストックホルムのカロリンスカ研究所ベルゼリウス図書館にて、ノーベル生理学・医学賞受賞記念講演を行いました。

はじめに、ガードン卿が、「卵と細胞核:覇権のための争い」というタイトルで、自身の研究を紹介しました。そもそも、体中の全ての細胞には同じ遺伝子セットが含まれているのかどうか、それを知りたくて研究を始めたとのこと。1962年には、オタマジャクシの腸の細胞核をカエルの卵に移植することで、オタマジャクシを誕生させることに成功し、体の細胞にも個体をつくるための遺伝子セットが含まれていることを明らかにしました。その後、卵の中に備わっている、移植された細胞核を初期化させるためのしくみや、逆に初期化に抵抗してもとの細胞の記憶を保とうとする細胞核のはたらきを、卵の攻撃と細胞核の防御に例えて詳細に語りました。

一方、山中所長は時折ジョークを交えながら、iPS細胞研究に至る道程について語りました。整形外科医から基礎医学に転向し、予想もしない結果に接した際に、がっかりせずに逆に楽しむと同時に、素晴らしい師に励まされながら研究を展開し、これらの「先生」と、予想もしない結果を見せてくれた「自然」の両方が自分にとっての大切な「師」であると述べました。

また、iPS細胞樹立の立役者となった若い研究者たちや、iPS細胞へとつながる研究の流れを生み出した研究者たちに感謝の意を述べ、iPS細胞研究の応用面での可能性を紹介しました。

最後に、家族への感謝と、患者さんのもとへ新たな治療法を届けたい思いを述べて講演を締めると、大きな拍手が会場に沸き起こりました。専門的な話が中心となったジョン・ガードン卿と、若者を勇気づけるような語りの山中所長と対照的な講演内容となりました。

ノーベルレクチャー後のぶら下がり取材

ノーベルレクチャーの会場となったベルゼリウス図書館



7日の午前中には、山中所長は滞在先のグランドホテルの正面に見える王宮ベルナドッテ・ライブラリーで行われたノーベル・マインズという番組の収録に、ガードン卿ら6名のノーベル賞受賞者とともに参加しました。

1796年に完成し、10万冊を所蔵する図書館で円卓を囲み、それぞれの受賞者の子供の頃のエピソードや優れた科学者になる秘訣、科学者の社会的責任など多岐にわたるテーマを討論しました。山中教授は、日本では2011年3月11日に発生した東日本大震災にともなう原発事故により、科学者への信頼が揺らいでいることを指摘し、科学技術への信頼醸成には透明性が重要であることを述べました。この番組はノーベル財団のウェブサイトで配信される予定です。

go top