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2010年8月17日

高校生向け実験教室「iCeMS/CiRAクラスルーム2010:幹細胞研究やってみよう!」を開催しました

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京都大学iPS細胞研究所および同大学 物質–細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)が主催する高校生向け実験教室「iCeMS/CiRAクラスルーム2010:幹細胞研究やってみよう!」が、8月4日、5日の2日間にわたって開催されました。2年目となる今年は、京都府教育委員会との共催で、近畿地方を中心に全国の高校生86名から応募があり、うち32名(男子17名、女子15名)が、参加しました。


この実験教室の大きな目的の1つは、高校生のみなさんに"科学のやり方"をつかんでもらうことです。ES細胞やiPS細胞を使った観察や実験に取り組みながら、「仮説をたてること」「とにかくまずやってみること」「実験により得られた結果を自分の言葉で説明し、まとめること」に挑戦してもらおうというねらいがあります。


32名の高校生たちは4名ずつ8チームに分かれ、同じ研究チームの仲間として2日間を過ごしました。また、前日までに同実験教室を体験済みの高校教員8名がTA(補助教員)として各チームに加わり、4名の高校生たちを指導しました。


※クラスルームで使用したテキストは、iCeMSホームページよりダウンロード可能です。


【1日目 (8月4日)】
事前学習日という位置づけの日でした。次の日、スムーズに"幹細胞研究"を進めることができるように、『STUDY BOOK』を使いながら、最低限必要な技能や知識を確認しました。


特に私たちが大切だと思っているのは、「チームメイトとのディスカッションの仕方を練習すること」です。研究を進めるには、欠かせない過程です。明日のための練習だ!ということで、「仮説をたてること」の練習も、「細胞」「ゲノム」「幹細胞」「バイオイメージング」に関する基礎知識の確認も、ワークシートと付箋を使いながら、チームメイトみんなで勉強する、みんなで考える、みんなで発表するというスタイルで行いました。


お勉強だけでは少し退屈なので、「粘土をこねながらES 細胞の作り方を学習する」、「マイクロピペット(通称:ピペットマン)」や「倒立顕微鏡の使い方を練習する」など実際に手を動かすことにも挑戦しました。


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司会を務めた水町衣里研究員(iCeMS)加納圭助教(iCeMS)

【2日目 (8月5日)】
いよいよ"幹細胞研究"をやってみる日です。この日は、若手の幹細胞研究者が講師としてやってきました。武内大輝さん(京都大学再生医科学研究所 中辻憲夫研究室 博士課程)と小倉綾さん(京都大学再生医科学研究所/CiRA高橋淳研究室 博士課程)の二人です。


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武内大輝さん小倉綾さん

まずは、武内さんから「研究者の生態」というお話がありました。研究室の机や実験台の写真も出てくるリアルなお話でした。さて、研究へのイメージを膨らませたところで、今度は小倉さんから、今回のテーマである「ES 細胞とiPS 細胞」についてのお話がありました。ES 細胞とiPS細胞のつくりかたの違いについて詳しく紹介してもらいました。


その後、今回の研究課題が発表されました。1日かけて取り組んだ研究課題は、「ES 細胞と皮膚の細胞からできたiPS 細胞とがどういう特徴をもつ細胞なのかを知る」こと。実際に細胞を見る前に、高校生たちには、何をもって「皮膚の細胞からできたiPS 細胞」と「ES 細胞」とが同じ特徴をもつ細胞とみなすのか、それをどのようにして調べるのかについて仮説を立ててもらいました。ワークシー トと付箋を使いながら、4 人でアイディアを出し合い、話し合って1つの仮説にまとめあげるという作業に取り組みました。


仮説を考えたところで、お待ちかねの"細胞たち"が登場しました。まずは、多くの班で出て来た「見た目(大きさや形)」を比べてみることにしました。各班のテーブルに設置されている位相差倒立顕微鏡を用いて、マウスES 細胞、マウスiPS 細胞、マウス線維芽細胞(皮膚の細胞)、ヒトiPS 細胞、ヒト線維芽細胞(皮膚の細胞)などを順番に観察しました。観察の結果、ES 細胞とiPS 細胞とは「見 た目(大きさや形)」は非常によく似た細胞であることを見出すことができました。



「見た目(大きさや形)」で区別がつかないなら、次は「中身(働いている遺伝子)」だろう、ということで、ES 細胞で働いていることが知られている遺伝子(Nanog遺伝子)に注目しました。今回実験に使用したマウスES細胞とマウスiPS 細胞には、Nanog 遺伝子が働いている時にだけ細胞が緑色に光るような仕掛けがすでに組み込まれていたので、その仕掛けを利用しました。蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、どちらの細胞も緑に光っていたことから、Nanog 遺伝子がES 細胞とiPS 細胞の両方の細胞で働いていることが分かりました。 17.jpg

ES 細胞は「他の種類の細胞になる能力(分化能)」を持っています。この能力が、iPS 細胞にも備わっているかどうかを確認する、というのが次の実習でした。ヒトiPS細胞からつくられた神経細胞を観察し、iPS 細胞の能力を確認しました。神経細胞でのみ働く遺伝子(TuJ1 遺伝子)を利用して、緑色に綺麗に染められた神経細胞を覗き込んだ高校生たちは、その美しさに歓声をあげていました。


結局、今回の実験から分かったのは、ES 細胞とiPS 細胞とは、「見た目(大きさや形)」の面でも、「中身(働いている遺伝子)」の面でも、「他の種類の細胞になる能力(分化能)」の面でも、違いを見つけることが難しいということでした。


高校生が2日かけて取り組んだ「『皮膚の細胞からできたiPS 細胞』と『ES 細胞』とが同じ特徴をもつ細胞なのかを知りたい。」という課題は、今、世界中の幹細胞研究者が取り組んでいる課題です。答えがはっきりとは決まっていない課題に取り組むというのは、普段の高校生活の中では、あまりない体験だったのではないでしょうか。


修了証書授与式では、中辻憲夫iCeMS 拠点長と山中伸弥CiRA 所長名の修了証書が参加者1人ずつに手渡されました。その後、参加者全員での記念撮影を行い、2 日間にわたる全プログラムが終わりました。


【まとめ】
高校生からは、「答えを自分で探すというのは初めての体験で、様々なことを学びました。」「蛍光顕微鏡での観察は、とっても美しかったので感動しました。」といった感想が出ていました。今回の実験教室を通して、ES 細胞とiPS 細胞とが非常によく似た細胞であることを様々な視点から検証するという体験をしました。そのなかで、「仮説をたてること」「とにかくまずやってみること」「実験により得られた結果を自分の言葉で説明し、まとめること」ができるようになってくれたはずです。高校生のみなさん、2日間、お疲れさまでした!また、ご協力くださった先生方、オリンパス株式会社のみなさま、本当にありがとうございました。


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