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2013年8月1日

上廣倫理研究部門の開設記念シンポジウムを開催しました

 7月26日(金)に、京都大学百周年時計台記念館にて、 公益財団法人上廣倫理財団のご寄附により、4月1日に設置された上廣倫理研究部門の開設を記念するシンポジウムを開催しました。 今回のシンポジウムでは、上廣倫理研究部門の3名の研究者を学内外にご紹介すると共に、今後のiPS細胞研究に関連した倫理問題についてディスカッションが行われました。猛暑にもかかわらず、約460名にご参加いただき、大盛況となりました。インターネットでのライブ中継は、延べ1638人にご視聴いただきました。

オープニングでは、山中伸弥所長の挨拶に続き、上廣倫理財団の丸山登事務局長、菱山豊文部科学省大臣官房審議官、江崎禎英経済産業省製造産業局生物化学産業課長から来賓のご挨拶をいただきました。また、英国オックスフォード大学上廣応用倫理センターのジュリアン・サヴァレスキュ所長のビデオメッセージが流されました。

 最初の講演では、山中所長が登壇し、「iPS細胞研究の進展と生命倫理」と題してプレゼンテーションを行いました。これまでのiPS細胞研究の進展を紹介するとともに、「新しい科学技術をどこまでどのように受け入れるのかは、科学者・倫理学者だけで決めることではなく、社会全体で決めていくこと」と訴えました。続く八代嘉美特定准教授(上廣倫理研究部門)は、「伝えることからはじめるiPS細胞の時代」という演題で、メディアに見られる表現等を素材にして、「再生医療」や「クローン」といった用語の混乱や誤った情報の流通を指摘し、便乗商法、幹細胞治療ツーリズム等の課題について話しました。また、倫理は「ブレーキ」と考えるのではなく「交通ルール」のように捉えるべきとの意見を述べました。
看板


入り口の看板

山中所長


講演する山中所長


 休憩をはさんで、藤田みさお特定准教授(上廣倫理研究部門部門長)は、「生命倫理・調査研究でわかること」と題し、これまでの自身の研究テーマと、データを基に議論を積み重ねることの重要性について話しました。例えば、論議となった日本移植学会倫理指針については、指針よりもかなり厳しい基準が適用されている現場が多かったことを示しながら、「事実」を把握することの重要性を説きました。鈴木美香特定研究員(上廣倫理研究部門)は「人を対象に研究するとは?」という演題で、研究というものがそもそも必要とする科学的妥当性などの要素、研究のデザインの重要性、研究のリスク・利益のバランス、といったテーマについて発表しました。


八代准教授


講演する八代准教授

鈴木研究員


講演する鈴木研究員


 後半は、京都大学や他大学から研究者を交えて、パネルディスカッションを行いました。まず、生命倫理を専門とする文系の研究者や実際にES/iPS細胞を使った実験を行っている研究者5名が、各自の研究について数分間のプレゼンテーションを行いました。

 パネリストのトップパッターとして、神里彩子特任助教(東京大学医科学研究所研究倫理支援室)は、ヒトと動物のキメラ作製研究を例に挙げて倫理的な問題を説明し、倫理ルールが明確になれば、新しい技術は人々から信頼や支持を得られるのではないかと述べました。児玉聡准教授(京都大学大学院文学研究科)は、上廣倫理部門の研究者に対して、調査研究に基づいた、世界標準となる倫理ルールを提案してほしいという期待を示しました。林克彦准教授(京都大学大学院医学研究科)は、自身が取り組んでいるiPS細胞から生殖細胞を分化誘導する研究について説明し、「科学者がすべきことは、不断の技術開発を続けることと、科学的な根拠に基づく客観的な安全性を常にフェアな目でみることが大切である」と話しました。前田正一准教授(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科)は、科学者には、社会が理解できるかたちでの情報公開が求められると述べ、医療倫理教育の重要性を指摘しました。正木英樹研究員(東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター)は、自身が取り組んでいる動物の体を使ってヒトの臓器をつくることを目指す研究と関連する規制について説明し、これから進展する技術を先取りした倫理ルールを作ることは難しく、研究計画の個別審査を厳格に行うことも必要ではないかと述べました。

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パネルディスカッションの様子

 その後、パネリストは、八代准教授や参加者から提出された質問に回答しました。参加者からは、「新技術が次々と開発されると予想されるが、iPS細胞の応用について将来にも通用する普遍的倫理はあるのか?」「倫理委員会の質の底上げを図るにはどうすればいいか?」「動物の体内で人間の脳をつくることに関して、どんな問題があるか知りたい」といった質問もあり、研究の目覚ましい進展に伴って発生する課題の深さを感じさせました。

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講評する藤田部門長

 パネルディスカッションの最後には、山中所長も質問に答え、科学者と一般の方々が倫理問題を議論できる機会を作りたいと述べました。藤田部門長が講評を行い、「新技術が生まれるところに新しい倫理ルールが必要になる。速いスピードでiPS細胞技術が発展しているが、科学者と市民が協力し、倫理ルールを作って、変えて、作って、変えるという作業を繰り返し行うことが必要になるだろう」と話しました。最後に、戸口田淳也教授・副所長が挨拶のために壇上に立ち、倫理面を重視しながら今後の研究を行っていく決意を表明し、シンポジウムは閉会となりました。

 このシンポジウムの講演の動画を、後日、ホームページで公開する予定です。公開日が決まりましたら、ニュース欄でお知らせします。

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