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2026年1月5日
ALS研究会〜世代と分野を超えたALSの研究開発〜
2025年12月22日(月)と23日(火)に、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)講堂にて、「ALS研究会」が開催されました。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明や治療法開発に取り組む約40名の研究者が参加し、これまでにせりか基金*の支援を受けた約30件の講演・発表を通して示された最新の知見について活発な議論が交わされました。
この研究会は、井上治久教授(CiRA)、浅川和秀准教授(国立遺伝学研究所)、今村恵子特定拠点准教授(CiRA)が世話人となり企画しました。また、一般社団法人せりか基金に協賛いただき、せりか基金から黒川久里子様、小西康高様にご参加いただきました。
研究会の趣旨を語る井上教授
研究会の趣旨を語る井上教授
研究会の趣旨を語る井上教授
会の冒頭、井上教授より、本研究会開催に込めた想いが語られました。
井上教授は、先行するがん研究の歴史を例に挙げ、「がんという大きな山は、手術、化学療法、分子標的薬、免疫療法、早期診断など、様々なアプローチの積み重ねによって少しずつ切り崩されてきました。ALSの領域も、最終的には同じように切り崩していくことができるのではないか」と述べ、ALS克服という究極のゴール=「山」を切り崩すためには、多様なルートが必要であると強調しました。
そのビジョンを実践すべく、本研究会ではALSのバイオロジー、ALSモデル、モレキュラーパソロジー、臨床試験、iPS細胞、ドラッグデリバリーシステム、そして新たな分子・新たな技術の研究など、多岐にわたる領域、そして様々な世代にわたる研究者がフラットに意見を交わし、井上教授が話す「1+1が3にも10にもなる」ような化学反応を目指して、2日間の研究発表と議論がスタートしました。
多くの研究チームが集まり研究会が始まりました
初日(12月22日)は、ALSの原因や進行メカニズムに迫るALSのバイオロジーを中心に発表が行われました。
特別講演では、長谷川成人プロジェクトリーダー(東京都医学総合研究所)より「ALS/FTLD患者脳におけるTDP-43の解析」について講演がありました。また、一般演題では、ゼブラフィッシュ、マウス、ラットといった多様なモデル生物を用いた研究や、iPS細胞技術、microRNAを用いた新しいアプローチなどが報告されました。
夕方のセッションでは、診断技術の開発に関する発表もあり、基礎研究から臨床応用への橋渡しとなる議論が深められました。
2日目(12月23日)は、より臨床に近いテーマや、国際的な展開を見据えた発表が行われました。
特別講演として、狩野修教授(東邦大学)による「グローバルな視点から考える日本の創薬」や、和泉唯信教授(徳島大学)による臨床の観察から生まれたALS治療薬「ロゼバラミン」の開発秘話などが語られました。
さらに、ゲノム編集技術を用いた霊長類モデルや、脳へ薬剤を届けるためのナノDDS(ドラッグデリバリーシステム)など、最先端技術を駆使した挑戦的な研究も紹介されました。
井上教授が冒頭で「若い研究者や、異なる分野の研究者が参入したいと思う環境を作ることが、病気の克服につながる」と語った通り、本研究会はまさにその一歩となりました。
登壇した研究者たちの熱意と、分野を超えた活発な議論は、ALSという難攻不落の山を切り崩すための確かな「ルート」が、着実に増えていることを感じさせるものでした。
当日のプログラムおよび登壇者は以下の通りです。
【第1日目:12月22日】- 【特別講演1】長谷川 成人(東京都医学総合研究所):ALS/FTLD患者脳におけるTDP-43の解析
- 藤澤 貴央(東京大学):構造変化型SOD1を標的としたALS治療薬の基盤開発
- 浅川 和秀(国立遺伝学研究所):神経細胞のALS脆弱性に関するゼブラフィッシュモデルからの考察
- 細川 雅人(福岡大学):筋萎縮性側索硬化症モデルマウスの作製と病理解析
- 矢野 真人(東京慈恵会医科大学):運動ニューロンらしさを知り、その弱点を克服するためのRBP研究
- 南山 素三雄(京都市立病院):ALSモデルラットにおけるミスフォールドSOD1に対する一本鎖抗体の送達手段としてのオリゴデンドロサイト前駆細胞の有効性
- 今村 恵子(京都大学):microRNAを用いたALS治療法の研究
- 井口 洋平(名古屋大学):TDP-43機能喪失病態の新知見
- 久米 広大(広島大学):リピート伸長変異による筋萎縮性側索硬化症
- 鈴木 直輝(東北大学):筋萎縮性側索硬化症の軸索病態に着目した病態研究
- 本田 諒(岐阜大学):TDP-43 seed amplification assay 開発の現状と課題
- 藤内 玄規(愛知医科大学):患者レジストリのゲノム情報、細胞を基盤としたALS病態研究
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幸田 知子(大阪公立大学):無毒化ボツリヌス神経毒素を用いた神経変性疾患治療のためのドラッグディスカバリー
システムの構築 - 徳田 栄一(日本大学):エンドソームから拡大するALS病因タンパク質凝集体の細胞間伝播
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三橋(小池) 佑佳(新潟大学):シナプス関連遺伝子UNC13AとALS/FTD病態
〜TDP-43核内機能を反映するマーカーとして〜
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【特別講演2】狩野 修(東邦大学):グローバルな視点から考える日本の創薬戦略
〜PACTALS 2027 日本開催に向けて〜 - 【特別講演3】和泉 唯信(徳島大学):ロゼバラミンの開発と今後の課題
- 中村 亮一(愛知医科大学):ALSの臨床像に影響する新規遺伝的因子の同定
- 森野 豊之(徳島大学):エピトランスクリプトーム解析によるALSの病態解明
- 笹栗 弘貴(理化学研究所):ゲノム編集技術を利用した神経変性疾患動物モデル作製
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及川 大輔(大阪公立大学):神経変性疾患病態における進行的複雑型ユビキチン鎖生成と創薬標的としての直鎖状
ユビキチン修飾 - 金沢 貴憲(徳島大学):Nose-to-Brain型ナノDDSによる脳脊髄への核酸医薬送達とALS疾患治療への応用
- 石黒 亮(法政大学):ALS病態形成とRNA構造ダイナミクス
- 齋尾 智英(徳島大学):NMRを用いたALS相関相分離タンパク質の動態解析
- 須貝 章弘(新潟大学):TDP-43異常の上流に存在するRNA安全弁
第1日目終了時
人気漫画『宇宙兄弟』(著:小山宙哉)から生まれた、ALSの治療法開発を支援するチャリティプロジェクトです。作中の登場人物・伊東せりかが、ALSで亡くした父のために治療法を見つけようと医師、そして宇宙飛行士を目指すストーリーにちなみ設立されました。「個人の願いが集まれば、病気をなくすことができる」という想いのもと、集められた寄付金はALSの治療薬開発に取り組む研究者への助成金「せりか基金賞」として活用されています。CiRA井上治久教授は「せりか基金賞」の審査委員長を務めています。
