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2020年3月25日
「血小板減少症に対するiPS細胞由来血小板の自己輸血に関する臨床研究」 の実施について
京都大学医学部附属病院は、京都大学iPS細胞研究所と連携し、血小板輸血不応症注1)を合併した再生不良性貧血注2)の患者さんを対象とするiPS細胞由来血小板の自己輸血に関する臨床研究を実施しています。本研究において予定していた投与を終了したことを報告します。なお、被験者保護の観点から、経過中の詳細な情報は差し控えさせていただきます。
再生不良性貧血などで血小板が不足すると、血小板の輸血が行われます。しかし、輸血後も血液中の血小板数が上昇しない、血小板輸血不応になる場合があります。その原因の一つに、輸血された血小板が異物として認識され、自身の免疫細胞が輸血された血小板を破壊することがあります。血小板輸血不応の場合、輸血により血小板を補うことができません。患者さん自身の細胞から作製した血小板であれば、自身の免疫細胞に破壊されず輸血の効果が得られると期待できます。
平成30年5月28日 | 京都大学特定認定再生医療等委員会より適合性確認 |
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平成30年7月20日 | 厚生労働大臣に再生医療等提供計画を提出 |
平成30年8月29日 | 厚生科学審議会 再生医療等評価部会にて初回審議 |
平成30年9月21日 | 厚生科学審議会 再生医療等評価部会にて第2回審議 |
平成30年10月19日 | 厚生労働大臣より適合性確認通知 |
平成31年3月25日 | 臨床研究開始 |
令和元年5月 | 用量コホート(1)実施 |
令和元年8月 | 用量コホート(2)実施 |
令和2年1月 | 用量コホート(3)実施 |
(1)試験名
「血小板減少症に対するiPS細胞由来血小板の自己輸血に関する臨床研究」
(2)目的
再生不良性貧血で、かつ血小板輸血不応症を併発している特定の患者さんの末梢血単核球注3)から作製するiPS細胞を経由して誘導される血小板を、当該患者さんに投与してiPS細胞由来の血小板製剤の安全性について検証を行う。
(3)試験デザイン
単施設非盲検非対照試験/単回投与用量漸増試験
用量コホート(1): 0.5単位(血小板 1x1010個)
用量コホート(2): 1.5単位(血小板 3x1010個)
用量コホート(3): 5単位(血小板 1x1011個)
(4)対象疾患
血小板輸血不応症を合併した再生不良性貧血
(5)対象被験者数
1例
(6)追跡調査期間
iPS細胞由来の血小板製剤の輸血後1年間
(7)血小板輸血までの流れ
患者さんから細胞を採取し、iPS細胞を作製します。その細胞から、巨核球細胞株注4)を作り出し、マスターセル注5)として凍結保存します。このマスターセルを解凍し、培養液中で巨核球を増殖させた後、血小板の産生を行います。血小板を分離・濃縮・洗浄した後、放射線照射により増殖できる細胞を根絶した上で患者さんへの輸血に使用します。
(8)主要評価項目:安全性(有害事象の発生頻度と程度)
副次評価項目:有効性(補正血小板増加数注6))
注1)血小板輸血不応症
血小板を輸血しても、血小板数が想定よりも増えない状態。原因には非自己の血小板に対する免疫学的機序がある。
注2)再生不良性貧血
何らかの原因で造血機能が傷害され、血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する疾患。罹患率は8.2(/100万人年)。
注3)単核球
ヒトの白血球の一部。リンパ球と単球が含まれる。
注4)巨核球細胞株
巨核球は造血幹細胞から作られ、血小板を生み出す細胞。巨核球は成熟すると核分裂はするが細胞分裂はしないという特殊な分裂を行い、大型で多核の細胞になる。巨核球細胞株(imMKCL)は、iPS細胞から出来る巨核球に遺伝子導入をすることにより樹立された、増幅と成熟の切り替えが可能な細胞株。
注5)マスターセル
製品を製造するためのもととしてストックされる出発細胞。
注6)補正血小板増加数
体格(体表面積)で補正した輸血で増加した血小板数の値。血小板輸血の効果の指標として用いられる。
本研究は、下記機関より支援を受けて実施しています。
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国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
再生医療実現拠点ネットワークプログラム 再生医療の実現化ハイウェイ -
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
再生医療実用化研究事業「自家iPS細胞由来血小板製剤の安全性有効性検証臨床研究」