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2022年2月7日

京都大学CiRA、リジェネフロ社およびアストラゼネカ社との共同研究契約の締結を発表 共同研究によりiPS細胞から腎臓組織の作製を目指す

 国立大学法人京都大学 iPS細胞研究所(本部:京都市左京区;所長:山中伸弥、以下「CiRA」)は、リジェネフロ株式会社(本社:京都市左京区、代表取締役:石切山俊博)ならびにアストラゼネカ社(本社:英国)と、ヒト人工多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)由来の腎前駆細胞注1)から腎組織の作製法を開発し、その発生生物学および生理的な機能を解析することを目的とする共同研究契約を締結したことを発表します。

 本共同研究でCiRAとリジェネフロは、前臨床モデル注2)における最適な腎移植に向け、新しい腎前駆細胞と腎組織の作製を目指します。本研究はアストラゼネカとの緊密な連携により実施され、アストラゼネカは、新たに作製された腎前駆細胞と腎組織のトランスクリプトミクス注3)および組織学的解析を含むオミクス解析注4)を実施します。

 リジェネフロは、リジェネフロ取締役を兼務するCiRA増殖分化機構研究部門長船健二教授の研究成果を基に、2019年9月に設立されたベンチャー企業です。腎前駆細胞の存在を世界で初めて発見後、長船教授はiPS細胞から腎前駆細胞を効率的に作製する技術の確立などに成功してきました。

 世界中で約8億5,000万人が慢性腎臓病(CKD)に罹患しており、日本ではCKDの患者数は成人人口の13%にあたる約1,300万人に達しています。CKDの患者に有益な治療法は現在も存在していますが、病状が悪化した場合は人工透析あるいは腎移植が必要になります。また、その一方で、腎移植は深刻なドナー不足の問題も抱えています。さらに、人工透析を必要とする患者は年々増加しています。その医療費によりCKDは世界で最も高額な慢性疾患の1つとされ、日本における医療費は年間1兆5,000億円を超えています。病状の進行を抑制し、罹患率や死亡率を管理し、究極的には疾患自体の改善または根本治療さえ可能にする新規治療法の開発は社会的急務となっています。

 長船教授はこれまでに、2種類の腎前駆細胞をヒトiPS細胞から分化誘導する方法を確立しました。すなわち、腎臓を構成する主な組織である糸球体と尿細管のもとになるネフロン前駆細胞注5)と集合管のもとになる尿管芽注6)です。加えて、これらのヒトiPS細胞から作った腎前駆細胞を組み合わせることで、長船教授は大きさが数ミリ程度と小さいながらも糸球体、尿細管、集合管がつながった、3次元立体構造を持つ腎組織の作製にも成功しています。

 腎疾患の治療における再生医療のアプローチは、アストラゼネカにとっても、かねてより研究の焦点であり、組織レベルで腎機能を解析するための腎臓オルガノイドの作製方法を確立しています。

 このたびの共同研究開始により、腎臓再生医療の実現に向け強力な国際チームが結成されました。臨床応用までには何年も要すると予想されますが、将来移植用の腎臓を量産し供給できるようになることで、人工透析を必要としない世界を作るという最終目標にさらに近づくことが期待されます。

 CiRA、リジェネフロ、およびアストラゼネカの研究者が本プロジェクトに参加します。リジェネフロは京都大学から導入した腎前駆細胞作製技術を提供し、アストラゼネカは研究資金の大部分を拠出します。

 CiRAはこのたびのリジェネフロ、アストラゼネカとの共同研究契約の締結により、腎疾患に苦しむ患者さんの生活の質(QOL)を改善し社会に貢献するという使命のもと、事業を推進してまいります。

注1)腎前駆細胞
腎臓に分化するもとになる細胞で、糸球体と尿細管に分化するネフロン前駆細胞のほか、集合管に分化する尿管芽、間質の前駆細胞などがある。

注2)前臨床モデル
有効性と安全性を評価するために、ヒトでの検証前に実行される研究段階を指します。

注3)トランスクリプトミクス
生体内の細胞に存在するメッセンジャーRNA(mRNA)を総合的に研究する学問領域を指します。細胞内のmRNAの量を分析することで、研究者は表現型の発現に関与する遺伝子を特定し、それらの発現状態を定量的に調査することができます。

注4)オミクス解析
生体内に存在する大量の生物学的情報の相互作用や機能を分析する学問領域を指します。生物の構造と機能を動的に変換する生体分子の特性を明らかにし、定量化することを目的とします。

注5)ネフロン前駆細胞
腎臓において尿を産生するネフロン(糸球体と尿細管)という組織を作り出す細胞。 尿の排出路である集合管、下部尿路系のもとになる細胞や、腎臓組織の隙間を埋める間質の前駆細胞は別に存在する。

注6)尿管芽
胎生期の腎臓前駆組織の1つ。生体内では多数の枝分かれを繰り返して成熟し、将来尿の排出路である集合管、下部尿路系などに分化する。

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