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2024年1月11日

京都大学CiRA、リジェネフロおよびAbu Dhabi Stem Cell Centerとの共同研究契約の締結を発表 共同研究によりiPS細胞から糖尿病の新規治療法開発を目指す

 国立大学法人京都大学 iPS細胞研究所(本部:京都市左京区、所長: 髙橋淳、以下「CiRA」)は、リジェネフロ株式会社(本社:京都市左京区、代表取締役CEO:森中紹文)、ならびにAbu Dhabi Stem Cell Center(本部:アラブ首長国連邦アブダビ、CEO: Dr. Yendry Ventura Carmenate、以下「ADSCC」)と、ヒト人工多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)由来の膵β細胞注1)を用いた糖尿病の新規治療法開発を目的とする共同研究契約を締結したことを発表します。

 本共同研究でリジェネフロとCiRAは、1) iPS細胞由来の遺伝子改変により治療効果に関わる機能を強化し、免疫抑制剤を不要にした膵β細胞を作製し、1型糖尿病患者に対する質の高い細胞療法を開発します。また、2) iPS細胞由来の膵β細胞を用いた2型糖尿病に対する創薬スクリーニングを行います。

 本研究は、ADSCCとの緊密な連携により実施され、ADSCCは上記研究で開発された基盤技術を中東や北アフリカで展開する他、同地域でiPS細胞技術を用いた再生医療研究の拠点となる重要な役割を担っています。

 リジェネフロは、取締役を兼務するCiRA増殖分化機構研究部門長船健二教授の研究成果を基に、2019年9月に設立されたベンチャー企業です。長船教授は、腎前駆細胞の存在を世界で初めて発見し慢性腎臓病に対する細胞療法の開発を手掛けるほか、膵臓領域において1型糖尿病に対する細胞療法の開発と2型糖尿病に対する創薬研究を行ってきました。

 糖尿病は、膵臓にあるインスリン注2)を分泌する膵β細胞の機能不全により生じ、高血糖が続くことで動脈硬化を促進し、合併症として慢性腎臓病や脳梗塞、心筋梗塞を引き起こす可能性があります。世界中で5億3,700万人が糖尿病に罹患し、さらに膵β細胞の機能が廃絶しインスリン治療が必須となる1型糖尿病患者で19歳以下の罹患者数は120万人といわれています。糖尿病の根治療法は膵β細胞の補充療法ですが、移植に必要な膵臓・膵島の不足が問題となっており、iPS細胞由来膵β細胞の移植療法に期待が寄せられています。長船教授は、これまでヒトiPS細胞から膵β細胞の作製やヒトiPS細胞由来の膵前駆細胞注3)を特異的に増殖促進する低分子化合物を同定することなどに成功してきました。

 このたびの共同研究開始により、糖尿病に対する再生医療の実現に向け強力な国際チームが結成されました。チーム力を発揮し、臨床応用に向けて基盤技術の開発が加速されることのみならず、日本発のiPS細胞技術が中東でも展開され再生医療研究が幅広い分野で発展するための重要な橋渡しとなることが期待されます。

 リジェネフロはこのたびのCiRA、ADSCCとの共同研究契約の締結により、糖尿病に苦しむ患者さんの生活や予後を改善し社会に貢献するという使命のもと、一日でも早く患者さんのもとに治療をお届けすることができるよう事業を推進してまいります。


注1)膵β細胞
膵臓にあるランゲルハンス島という細胞集団に存在し、インスリンを血中に分泌し血糖値を低下させる働きがある。1型糖尿病患者ではこの膵β細胞が何らかの原因により破壊されているため、インスリン治療を要する。

注2)インスリン
膵β細胞から分泌され、血糖値を下げるはたらきをもつホルモン。

注3)膵前駆細胞
インスリン分泌能を有する膵β細胞へ分化する前段階の細胞。

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