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2023年10月11日

CiRA研究インターンシップ生インタビューvol.2
-医療を違う角度から見つめる-

CiRAのオープンラボでの
サウミャ・マヘーシュワリさん
(エディンバラ大学)

 母国スコットランドのエディンバラ大学で医学部の最終学年に在籍するサウミャ・マヘーシュワリさんは、常日頃から幹細胞に興味を持っていました。オックスフォード大学(英国)の修士課程でフリードライヒ失調症について研究したり、マサチューセッツ総合病院(米国)での研究インターンシップで、外傷性脳損傷の新しい治療戦略のための免疫調節について研究したりしたときから、幹細胞や免疫療法のような最先端の実験アプローチが現代の医学に大きく影響すると感じていたそうです。

 マヘーシュワリさんは、CiRA研究インターンシップ・プログラムでヒト発生学を学ぼうとした理由について「何か新しく刺激的なことに挑戦し、自分の領域から一歩踏み出したいと思っていたから」と話します。

 CiRAで7月末からの3週間、マヘーシュワリさんは髙島康弘准教授未来生命科学開拓部門)の研究室で2つの研究プロジェクトに取り組み、胎盤幹細胞(TS細胞)と胚外中胚葉を研究しました。研究室では様々な実験に携わり、栄養膜細胞やナイーブ型(注1)多能性幹細胞を培養し、免疫細胞染色、定量PCR(注2)、フローサイトメトリー(注3)などの様々な技術を用いて、それらの特徴を調べました。

 このインターンシップ・プログラムを通して、幹細胞についての新たな洞察を得たそうです。以前は、幹細胞を道具として使っていましたが、「ヒト発生学の観点から、治療法の開発を少し知ることができました」とマヘーシュワリさん。妊娠高血圧腎症のような命に関わる疾患について、幹細胞モデルを用いて発生障害の理解を深め、新たな治療法を開発することについて学んだのです。

 彼にとって今回が初めての日本滞在でした。研究以外では、富士山に登り、山頂から素晴らしい日の出を見たり、京都の嵐山の竹林の静けさを味わったり、サムライ忍者ミュージアム京都で歴史に触れたりしたそうです。

 マヘーシュワリさんは、高島研究室の皆さんがとても親切に接してくれたことに感謝していると言います。ヒト胚発生学について多くのことを教えてもらい、刺激的な科学的議論を交わすこともできました。加えて、日本の文化を紹介してくれたことや、昼休みにはおいしいラーメン店にも連れて行ってくれたことにも感謝していました。

 医学研修を終えた後は、博士号を取得し、臨床研究者になる計画です。髙島研究室の何名かは臨床研究者で、彼らがどのように時間をやりくりして臨床と研究を行なっているのかを知ることは興味深かったと言います。マヘーシュワリさんは、このインターンシップを経験したことで、ヒト胚発生学やその応用について博士課程で研究することを検討するかもしれません。

注1)ナイーブ型
多能性幹細胞には「ナイーブ型」と「プライム型」がある。マウスES細胞は、着床前の胚盤胞という段階の内部細胞塊から作製されるが、培養皿上で内部細胞塊と同等の未分化状態を維持でき、これを「ナイーブ型」と呼ぶ。一方、発生の少し進んだ着床後の胚と同等の未分化状態のものを「プライム型」と呼ぶ。多能性の度合いは、「ナイーブ型」が「プライム型」よりも高いと考えられている。

注2)定量PCR
PCR法によって増やしたDNAの量を蛍光色素を使って経時的に測定し、DNAを定量する方法

注3)フローサイトメトリー
流動細胞計測法。レーザー光を用いて光散乱や蛍光測定を行うことにより、水流の中を通過する単一細胞の大きさ、DNA量など、細胞の生物学的特徴を解析することができる。

(文(英語):ケルビン・フイ(CiRA研究推進室特定研究員)、翻訳:国際広報室)

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