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2023年11月22日

CiRA研究インターンシップ生インタビューvol.4
-ドライラボ(バイオインフォマティクス研究)に足を踏み入れる-

CiRA河口研究室でのタドウ・ツッカさん(ゲッティンゲン大学)

 CiRAインターンシップ生のタドウ・ツッカさんは、ダンディー大学(スコットランド)で学士号を取得した後、現在はゲッティンゲン大学(ドイツ)で修士号の取得を目指しており、長年ヨーロッパに住んでいますが、日本食が大好物だといいます。

 「私の故郷のミャンマーの食事は、主に米など、アジア料理なので、日本食を食べると懐かしさを感じます。ドイツの食べ物とは全く違います」とツッカさんは話します。

 ゲッティンゲン大学でのツッカさんの研究テーマは、薬剤スクリーニングや疾患モデリングに役立てるために、iPS細胞由来の心筋細胞から人工心筋を作製することです。特に、iPS細胞株間の不均質性に興味を持っています。iPS細胞株はそれぞれ異なる患者から作製されるため、異なる遺伝情報を持っており、iPS細胞株間に不均質性が生じます。

 「このことは疾患モデルを作製したり、薬を開発したりするときに問題を引き起こす可能性があります。なぜなら、この不均質性は、一貫性のない疾患モデルを生み出したり、薬物反応がそれぞれ異なったり、さらには倫理的な問題を引き起こす可能性があるからです」と言います。「CiRAはiPS細胞が生まれた場所なので、私はここで幹細胞研究を学び、さまざまなことを経験したいと思ったのです」幸いにも、ゲッティンゲン大学は京都大学の海外協定校のひとつであるため、ツッカさんはゲッティンゲン大学大学院のプログラムコーディネーターからCiRAでのインターンシップを紹介されました。

 ツッカさんは、CiRAで8月末から4週間、ドライラボ(注1)を主宰する河口理紗講師未来生命科学開拓部門)のもとで、バイオインフォマティクス(注2)を初めて本格的に学びました。「大学卒業後、ダンディー大学で半年間プロテオミクス(注3)の技術助手として働き、質量分析用のタンパク質サンプルの準備やデータ整理をしていました」と彼は話します。「でも、これまでビッグデータを解析する機会がなかったので、その部分が欠けていたんです」

 河口研究室で研究をすることで、ウェットラボ(注4)での研究という慣れた環境から抜け出し、様々なオミクス解析(注5)技術について学びました。インターンシップで取り組んだ研究プロジェクトは、トランスクリプトミクス(注6)とプロテオミクスのデータを統合し、2種類のオミクスデータ間の相関関係を調べるというものでした。このプロジェクトは、異なる個体から採取した多くの細胞株において、遺伝子発現とタンパク質量がどの程度相関しているかを調べることを目的としていました。これまでバイオインフォマティクスの経験はありませんでしたが、河口講師をはじめとする研究室のメンバーはとても親切で、いつも新しいことを教えてくれたと言います。

 ツッカさんはまた、このインターンシップで、CiRAの研究室文化を学びたいと思い、ウェット・ラボの学生や研究者と交流しました。「このインターンシップ・プログラムで異なる研究室文化を体験することで、別の国で博士号を取得するという動機づけになった」と言います。「CiRAの研究室文化はとても魅力的です。ヨーロッパと比べて、少なくとも私がドイツで経験した限りでは、CiRAはみんなそれぞれとても独立しています。日本で博士号を取ることも考えています」

 週末には、伏見稲荷大社など京都の多くの神社を訪れたほか、奈良や大阪にも足を伸ばしました。また、インターンシップ・プログラム終了後、数日間東京を訪れる予定です。日本食の話題に戻ると、特に寿司が好きだそうです。しかし、ツッカさんの好みは一風変わっていて、焼肉や豚肉の寿司が好きなんです!

注1)ドライラボ
生物学などの科学的な研究をコンピューターを使って行う研究。

注2)バイオインフォマティクス
コンピュータサイエンスや計算機科学などの技術を応用して、生物学の問題を解こうとする学問。

注3)プロテオミクス
細胞内のたんぱく質を網羅的にデータ収集し解析する技術・研究分野。

注4)ウェットラボ
生物学などの科学的な実験を装置や薬品を用いて行う研究。

注5)オミクス解析
生体内に存在する大量の生物学的情報の相互作用や機能を分析する学問領域。

注6)トランスクリプトミクス
生体内の細胞に存在するメッセンジャーRNA(mRNA)を総合的に研究する学問領域。

(文(英語):ケルビン・フイ(CiRA研究推進室特定研究員)、翻訳:国際広報室)

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