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Internship
2024年11月28日
臨床と研究の両輪で患者さんを治したい
2023年度に、AMED 再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラムが始まり、CiRAは本プログラムにおいて中核拠点として採択されました。そして今年度、本拠点の活動の一環として、博士研究員をはじめとした若手研究者を対象に、主に再生・細胞医療・遺伝子治療研究の基盤的技術を学ぶためのインターンシップを実施しました。
そこで、10月上旬からの3週間、このプログラムのインターンシップ生として堀田秋津研究室で遺伝子編集研究を行った自治医科大学の肥谷うちなさんにインタビューし、インターンシップでの感想などを伺いました。
オープンラボでの
肥谷
うちな
さん
(自治医科大学)
インターンシップに参加しようと思ったきっかけを教えてください。
現在、自治医科大学医学部の6年生です。自治医科大学では、5年生終了時の成績、実習評価、生活面など総合的に良いと判断された学生が「フリーコーススチューデントドクター制度」を利用することができます。この制度を利用すると、6年生の卒業試験が免除され、学内・学外、内容を問わず、11月までの実習内容を自分で自由に決めることができます。私もその制度を使ってもよいとのことで、臨床実習を選択する学生が多い中、この期間を利用して基礎研究に挑戦することにしました。基礎研究をすることで、臨床への理解が深まると思ったのです。
自治医科大学 血液内科の大森司先生が、血友病の遺伝子治療研究をされていて、「基礎研究に興味を持っているなら私の研究室に入らないか」と声をかけてくださいました。今は大森先生の研究室で重症血友病Bの遺伝子治療研究に取り組んでいます。
研究をしていく中で、大森先生に「ほかの研究室も体験してみたい」と相談しましたところ、大森先生と共同研究をしていらっしゃるCiRAの堀田秋津先生を紹介してくださいました。堀田研では、iPS細胞を使ったゲノム編集をやっていると伺い、ぜひこのインターンシップに参加したいと思いました。
インターンシップ中はどのような研究をしましたか?
最初の3日間は、CiRAや堀田研の研究内容などを教えていただきました。次の2週間は堀田先生らが開発したゲノム編集ツールCRISPR-Cas3を使ってiPS細胞をゲノム編集したり、ゲノム編集効率を上げたりする実験をしました。
iPS細胞にゲノム編集をすると、編集によるダメージで細胞がたくさん死んでしまうことがあるんです。p53 という細胞の周期の停止や細胞死に関与している遺伝子があるのですが、細胞内でp53の活性化を抑えることで、ゲノム編集をしても細胞が死なずに、結果としてゲノム編集効率は上がるんじゃないかっていうことで、そういう研究を進めました。今回は仮説通りの結果は得られなかったですが、最後の3日間くらいで、実験データを全部まとめて、スライドを作って、堀田研のラボミーティングで発表させていただきました。研究室の皆さん、「すごく良かったよ」って言ってくださったんですけど、英語での発表だったんで、本当に緊張しました。
自治医科大学での研究環境とは違っていたかと思いますが、苦労した点はありますか?
インターンシップ中は、これまで扱ってきたものとは違った細胞を使ったので、その違いを学ぶとともに、今まで当たり前にやっていた実験の意味もちょっとずつ考えるようになりました。今までやっていた実験の手順も、ちゃんと考え抜かれたものだったのだなと気づいたのです。あと、ゲノム編集方法もこれまでと違ったので、どの方法が一番いいんだろうといろいろ考える機会にもなりました。
やはり英語は苦労しましたね。堀田研ではラボミーティングも英語ですし、外国人の方も多いので一緒にランチに行った時も英語です。毎日英語をしゃべらないといけないので大変でしたが、みなさんとてもやさしくて、楽しく過ごせました。
インターンシップの経験は、今後のキャリアを考えるうえでどのような影響がありましたか?
医学部を卒業したら、出身地の沖縄県で9年間、臨床医として務めることが決まっています。臨床医をしていたら、現代の医療では直せない患者さんに向き合うこともあると思います。堀田先生や研究室のメンバーが、ゲノム編集で難病を治そうという大きな目標に取り組んでいるのを見て、私も研究で解決策を見いだせるような医師になりたいと思いました。
大森先生も、臨床で出会った血友病患者さんの治療法を研究の力で探られていて、臨床と研究の両輪で活躍されている姿を尊敬しています。ですので、臨床医になっても、研究を続けて研究論文を書いていきたいです。以前とある先生に、「論文を書いて学位を取ることで医療を学ぶ側から創れる側になる」と言われたことがあって、いつかそれが実現できたらと思っています。
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取材・執筆した人:三宅 陽子
京都大学iPS細胞研究所(CiRA) 国際広報室 サイエンスコミュニケーター