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Internship

2025年2月6日

CiRA研究インターンシップ生インタビューvol.12
-母国を離れ、新鮮で刺激的な研究を体験-

CiRA オープンラボでのジュリア・ドライマンさん
(フンボルト大学)

 ドイツのベルリンにあるフンボルト大学で生物学の学士号を取得し、同大学大学院で定量分子生物学分野の修士課程を修了予定であるジュリア・ドライマンさんは、研究環境を変えてみたいと考えていました。

 「私はこれまでベルリンでしか勉強したことがなく、ドイツから離れて何かしてみたいと思っていました」と彼女は話します。「ドイツ以外の国で博士課程に進学することを考えているので、その前に試しに1週間以上外国で過ごす体験をしてみたかったのです。」

 ドライマンさんの指導教官が日本で研究交流を経験していたことから、彼女も大陸を越えた短期の研究滞在を検討していました。もともとゲノム編集ツールであるCRISPR-Casシステムに関心を持っていたので、「ヒトゲノムの全てを制御する」ことを目標とするCiRAのウォルツェン・クヌート研究室未来生命科学開拓部門)に興味を持ち、8月から6週間、CiRA研究インターンシップに参加することを決めました。

 これまでにゲノム編集された細胞株を扱ったことはありましたが、自身でゲノム編集をしたことはありませんでした。このインターンシップを通じて、iPS細胞の培養、CRISPR-Casシステムを用いたゲノム編集、フローサイトメトリー(蛍光を利用して細胞を数えたり選別したりする方法)や核酸シーケンシング(DNAやRNAの塩基配列決定)を使ったゲノム編集された細胞の解析など、さまざまな実験技術を学びました。「ウォルツェン研究室ではたくさんの新しいことを学ぶことができました」とドライマンさん。

 ドライマンさんは、ドイツではシャリテ・ベルリン医科大学の大規模プロジェクトに参加し、マルチオミクス解析注1)や形態学注2)に基づく解析を用いて肺オルガノイド(培養皿で育てた肺のミニ臓器)の特性評価を行っています。また、数百個の肺オルガノイドを同時に解析するための半自動化パイプラインの確立にも取り組んでいます。そのため、他のCiRAのインターンシップ生とは違って、画像解析、特に画像セグメンテーション注3)の分野で自身の専門知識を活かし、ウォルツェン研究室で進行中の研究プロジェクトに貢献することができました。

 インターンシップの感想について尋ねてみると、「多様な背景を持つ多くの人と出会うことができ、文化や教育スタイルの違いを知るのがとても面白かったです。また、外国で生活するという経験もとても興味深かったです」と振り返ります。

 ドライマンさんは、週末や祝日を利用して日本各地を観光しました。京都の神社仏閣を巡ったり、奈良、大阪、東京にも足を運んだりしました。日本での思い出について尋ねると、「奈良の鹿ですね」と笑顔で話します。「嵐山もとてもよかったですし、いろんな食べ物を食べられて楽しかったです」

 今回のインターンシップを通じてCRISPR-Casシステムへの関心が深まり、将来的にこのノーベル賞受賞技術を活用した研究に取り組みたいという思いが一層強まりました。博士課程をどこで取得することになっても、CiRAと日本での経験は、ドライマンさんの研究人生に忘れがたい印象を残したことは間違いありません。

注1)マルチオミクス解析
細胞内のDNA、RNA、タンパク質などを総合的・網羅的に解析する手法。

注2)形態学
生物の構造を研究する学問。

注3)画像セグメンテーション
デジタル画像をピクセル単位でオブジェクトごとに分割する技術。

  1. 取材・執筆した人:ケルビン・フイ


    京都大学iPS細胞研究所(CiRA)
    研究推進室 特命講師

    (翻訳:CiRA国際広報室)

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