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Internship
2025年11月12日
CiRA研究インターンシップ生インタビューvol.15
-研究の面白さと熱意に触れ、胸腺に魅せられた2週間-
培養室の前室での
横山
莉那
さん
(早稲田大学)
横山莉那さんは、早稲田大学教育学部・理学科生物学専修の3回生です。2025年8月25日から9月5日の2週間、濵﨑洋子研究室でのインターンシップに参加。T細胞注1)と胸腺注2)に強い関心を寄せる横山さんに、研究熱の源泉やCiRAでの体験について伺いました。
生物学に興味を持ったきっかけを教えてください。
小学4年生で、カエルの解剖を見たことがきっかけです。中学校の見学に行ったとき、先輩がカエルの気管にストローを突き刺して、目の前の肺がぷくっと膨らむのを見て、「動物の体の作りってすごい」と感動しました。そこからずっと生物学が好きです。
中学・高校時代は花粉症の経済的な影響に興味があって、植物と免疫学が好きで大学に入りました。大学1年生の時には、もう完全に免疫の虜でしたね。
なぜ濵﨑研究室でのインターンシップを希望したのですか?
以前から、自分を守るシステムでありながら、暴走すると自分を攻撃してしまう免疫の複雑性に興味を持っていました。その中でも私はT細胞がとても好きで、濵﨑研究室はT細胞の分化に関わる胸腺という臓器を研究しています。胸腺は解明されていない謎が多く、不思議にあふれた臓器です。例えば、小さい頃は手術で取り除いても再生するのに、40歳頃にはほとんど脂肪になってしまいます。そんな面白い臓器を基礎研究から明らかにしたいと思っていたところ、大学の先生から濵﨑先生を紹介していただきました。春休みに一度研究室を訪問させてもらい、インターンシップの参加を決めました。
インターンシップではどんなことをしましたか?
主にiPS細胞の培養と、iPS細胞から胸腺上皮細胞(iTEC)を作る実験をしました。指導してくださった濵﨑研究室の助教、プレテマー・ヤンさんの論文(CiRAニュース2025年8月25日)が、ちょうど私のインターン初日に発表されたタイミングでした。ヒトiPS細胞から、成熟したiTECを作ることに成功したというものです。その新しい手法を、実際に体験させてもらいました。
CiRAのオープンラボで
プレテマー・ヤン助教(右)と話す横山さん
毎日細胞を観察する中で、3日目に一気に細胞数が減って落ち込んだり、7日目に回復して「よかった」と安心したり、何度も心を動かされました。iPS細胞の形態変化も日々刺激的で、まばらに散らばっていた細胞がコロニー(細胞の集合体)を作って丸くなったり、今度は足のような突起を伸ばしてトゲのような形になったりと、生き物のようなダイナミックな変化を見せてくれました。
また、細胞の染色も指導していただきました。染色すると、iTECが赤、それを取り囲む細胞が緑と可視化できるのです。赤と緑が重なった光学顕微鏡の写真はとてもきれいで、私のお気に入りです。
光学顕微鏡の写真を見せる横山さん
インターンシップで印象に残っていることはありますか?
英語が飛び交う環境に圧倒されました。留学生もいらっしゃったため、実験の説明は日本語と英語の両方で行われ、プロトコル(実験手順書)も英語でした。休憩中も研究室の皆さんが流暢に英語で話されていて、自分はうまく伝えられないことにもどかしさを感じました。研究発表の場でも英語で議論しているのを見て、科学の場で対等に話したいからこそ、専門知識だけではなく、コミュニケーション能力としての語学力をここから身につけなければと実感しています。
また、「研究交流サロン」にも参加させていただきました。これは、京都大学の生命医薬分野内で、情報を交換したり、共同研究を進めたりするための交流会です。脳、医療社会学、植物と違う分野の研究者同士が話し合っていて、京都大学のオープンな雰囲気が感じられました。さまざまな分野の学生や若手研究者とお話しする機会ができ、行ってみてよかったです。
インターンシップを通じて目標は変わりましたか?
もともとT細胞に興味があったため、いつかは免疫の研究がしたいと思っていました。具体的な研究内容までは決まっていなかったのですが、胸腺研究の盛り上がりを目の当たりにして、胸腺にも携わりたいと思うようになりました。研究室全体が「今、皆で頑張ろう」という姿勢で取り組んでいます。その勢いから、胸腺に関わる基礎研究も応用研究もここから一気に進みそうじゃないですか。これまで謎に包まれていた胸腺の不思議が解き明かされる瞬間に立ち会えそうな気がして、今一番楽しい時期なのかもしれないと肌で実感しています。
濵﨑研究室の雰囲気はいかがでしたか?
皆さんとても明るくて、学年や職位に関係なくフランクにコミュニケーションを取られています。ヤンさんだけでなく、学生や技術員の方々も指導してくださって、「みんなで胸腺研究をやろう」という一体感がありました。朝早くから議論している姿も印象的で、オープンで楽しい雰囲気でした。
将来の目標を教えてください。
自分が研究に向いているかはまだわからないのですが、免疫もT細胞も好きですし、胸腺研究の楽しさも知ってしまったので、修士課程までは確実に進むつもりです。博士課程についても、このまま研究が好きだったらきっと進むと思います。好きという気持ちを原動力に研究を続けていけたら嬉しいです。
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指導を担当したプレテマー・ヤン助教からのコメント
横山さんは本当に優秀で、実験が終わってからも「これはなぜですか」「この試薬の具体的な役割は何ですか」と積極的に質問にきてくれました。こちらが言わなくても自主的に知識を求める姿勢が素晴らしく、「もっとたくさんのことを教えてあげたい、どんどん若手研究者として育てたい」という気持ちになりました。その好奇心とやる気をずっと持ち続けてほしいです。好奇心の芽がある限り、私たちも水を注ぐように支え続けたいと思っています。
注1)T細胞
リンパ球の一種で、免疫ではたらく細胞。がん細胞や感染した細胞を見分けて除去する役割を持つ。1つのT細胞は、1つの敵(物質)だけを認識できる仕組みで、どの敵を認識するかは細胞ごとに異なる。T細胞には、攻撃担当の「キラーT細胞」や指令担当の「ヘルパーT細胞」がある。
注2)胸腺
がんやウイルスと戦う免疫細胞の1つ「T細胞」を、正常に働くように教育する役割をもつ臓器。思春期に最も大きくなり、その後は次第に萎縮していく。
- 取材・執筆した人:吉野 千明
京都在住のフリーランスライター・講師。約10年間、企業や大学、研究所での検査・実験業務に従事。現場を知るサイエンスライターとして活動する。インタビュー記事やプレスリリース、オウンドメディア、書籍執筆など300本以上の制作実績を持つ。
