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2018年11月29日

【レポート】イギリスのサイエンスイベント

 9月下旬、まだまだ暑さが残っている日本とは違い、すっかり秋の涼しさを感じるイギリス・ロンドンで、一般の方を対象とするNew Scientist Liveというサイエンスイベントが開催されました。CiRA国際広報室から和田濵裕之 特定研究員が参加し、サイエンスを紹介する手法や情報発信の方法などについて視察しました。

 会場は、ロンドンの中心部から少し東に位置するExCeL Londonという巨大な展示会場の一画で、9月20日〜23日までの4日間開催されました。このあたりはテムズ川沿いにあったドックが閉鎖された広大な跡地を再開発した地域で、ExCeL Londonもその開発の一つで生まれた施設です。周辺では目新しいホテルが立ち並び、鉄道敷設工事が行われるなど、これから発展していく活気が感じられました。またロンドン・シティ空港という小さな空港が近くにあり、遠方からでもアクセスはよく、イギリスの各地から参加者が集まっているようでした。

会場となったExCeL Londonの外観

 本イベントは世界で最も有名な週刊科学雑誌の一つである『New Scientist』が主催するイベントで、500人程度を収容できる講演会場が5箇所、1000人程度収容できるメイン会場が1箇所、さらに企業や大学・研究機関などによる展示会場が大きく5つのゾーン(COSMOS ZONE, EARTH ZONE, HUMAN ZONE, TECHNOLOGY ZONE, ENGINEERING ZONE)に分かれて配置されていました。4日間でおよそ4万人が参加しました。

メイン会場の様子

 どの会場も盛況で、学校の先生に連れられた小学生くらいの子どもの集団や、ベビーカーにのった赤ちゃんを連れた家族や、高齢の方など、実に幅広い年齢層の人々が参加していました。

 体験型の展示も多く見られ、特に、VR(Virtual Reality)機器を使った展示が多く、あちこちでVR用のゴーグルをかけている参加者を見かけました。医療系では、アルツハイマー病の研究所の展示で、患者さんが見ている世界をVRで体験することができました。また原子力の研究所では、原子炉の内部をみるVRを提供していました。

 こうした最新技術を駆使した展示も多かったのですが、一方で昆虫の写真展をしているコーナーや、ホワイトボードにイベントに関する絵が少しずつ描かれていくアート作品、神経伝達物質であるドパミンやホルモンであるオキシトシンなどの分子を模したアクセサリーの販売など、サイエンスとアートの融合も随所で見られたのが印象的でした。

オキシトシンの分子を模した
アクセサリー

職種を紹介するパネル

 また、キャリアパスを考える展示も複数見られました。子供向けには病院でのさまざまな職種について紹介していたり、研究を支えるテクニシャンという職種の人たちを紹介していたり、研究者のような目立つ職種以外にも興味をもつきっかけとなると思われました。

 会場内にはテレビ局が入っていて、各会場で行われているイベントをライブで放送したり、出演者にインタビューを行ったり、面白そうな展示を紹介したりしていました。この放送は会場内の休憩スペースに設置されたモニターで見ることができ、休憩中も楽しむことができました。

ESAの火星探査機

ESAの火星探査機


 New Scientist Liveは有料(大人一人一日あたり約4,500円 等)であり、決して入場料は安くありませんでしたが、多くの方が参加していました。特に著名な科学者が登壇するメインステージに入るためには、更に追加で参加費が必要なVIP参加証を購入しなければなりませんでした。それだけの対価を支払っても参加したいと思わせるくらい、魅力的なイベントだったようです。

 魅力的なイベントになった要素は様々あると考えられますが、「本物」が見られるのが一つ大きな点だと考えられます。欧州宇宙機関(The European Space Agency: ESA)が展示していた火星探査機やロールスロイスが展示していたエンジンなど、専門家にとってはありふれたものでも、一般市民からすると普段目にすることができないような特別なものがありました。また、実際に本物の体験ができないものでも、VRなどで疑似体験ができる工夫をした展示がたくさんありました。このように特別な経験をすることが魅力となり、子どもから高齢の方まで、幅広い年齢層に受け入れられているようです。


 CiRAのイベントでも一番人気があるのはiPS細胞の標本の観察です。細胞の維持・管理をする必要がある関係上、なかなか生きた状態で見せることはできないのですが、今後もイベントで本物に触れられるような工夫をして、より多くの方々に親しんでいただきたいと思います。

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