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2011年10月27日

iPS細胞に対する免疫拒絶の研究結果に対する見解をCirculation Researchに掲載

 このほど、沖田圭介講師(京都大学iPS 細胞研究所)と山中伸弥教授(同 iPS細胞研究所 所長/物質‐細胞統合システム拠点)らによる、iPS細胞注1に対する免疫拒絶の研究結果に対する見解が、米国科学誌 Circulation Researchの9月16日号に掲載されました。


 iPS細胞から目的の組織の細胞を作製し、細胞移植による再生医療などが期待されていますが、本年5月に発行された英国科学誌Nature誌にて、同種同系のマウスにiPS細胞を移植した結果、iPS細胞はES細胞注2よりも免疫反応が引き起こされやすい可能性があることがZhao et al. (Nature. 2011 May 13;474(7350): 212-215.)によって報告されました。


 沖田講師らの見解では、そのNatureの論文によって主張されたiPS細胞の免疫原生注3と安全性の検証の必要性を認めていますが、検証方法には不十分な点が考えられることなどを指摘しています。実際にiPS細胞を利用する細胞移植治療を想定した検討を行う場合においては、MHC注4(major histocompatibility complex:主要組織適合遺伝子複合体)型が適合する他家細胞注5を用いた検証や細胞移植の際の免疫反応のコントロールなども重要となり、今後より慎重な検証を重ねる必要性などについて見解を述べています。


Immunogenicity of induced pluripotent stem cells.
Okita K, Nagata N, Yamanaka S. Circulation Research 2011 Sep 16;109(7):720-721.
※恐れ入りますが、本論文は出版社のウェブサイトなどより入手ください。CiRAからの送付サービスは行っておりません。


<用語説明>

注1 iPS 細胞(人工多能性幹細胞:induced pluripotent stem cell)
体細胞に特定因子を導入することにより樹立される、ES 細胞に類似した多能性幹細胞。2006 年に山中教授の研究グループにより世界で初めてマウス体細胞を用いて樹立成功が報告された。2007 年にヒトiPS細胞樹立成功が発表されている。


注2 ES細胞(胚性幹細胞:embryonic stem cell)
受精後、数日経過した胚(胚盤胞という発生段階)の内部の細胞を取り出して培養した多能性幹細胞の一つで、あらゆる組織の細胞に分化することができる。しかし、作製の際に受精卵を滅失することや患者自身の細胞から作製できないため免疫拒絶の問題などが指摘されている。


注3 免疫原生
ある物質が生体内で免疫反応を引き起こす性質のこと。


注4 MHC(major histocompatibility complex:主要組織適合遺伝子複合体)
免疫反応に関わる遺伝子を多く含む大きな遺伝子領域のことで、ヒトではHLA(human leukocyte antigen)と呼ばれる。


注5 他家移植
ある個体から取り出した組織や細胞を別の個体に移植すること。

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