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2022年6月2日
「ヒトiPS細胞由来HLAホモ型血小板を用いた血小板減少症患者さんに対する企業主導治験」における第一症例目の治験製品投与実施について
京都大学医学部附属病院は、京都大学iPS細胞研究所(以下 CiRA)、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団(以下CiRA_F)および株式会社メガカリオン注1と連携し、ヒトiPS細胞由来HLAホモ型注2血小板(開発コード:MEG-002)の治験における、 第一症例目の被験者への投与を問題なく完了したことをお知らせいたします。
京都大学医学部附属病院血液内科(髙折晃史教授)とCiRA(江藤浩之教授)のグループは、これまでに患者さん自身のiPS細胞由来血小板注3を使った臨床研究を実施してきました(CiRAニュース 2020年3月25日)。 その後、単一の製剤で多人数に移植可能となるよう、あらかじめ健康なボランティアの方から作製したHLAホモ型の同種注4iPS細胞(iPS細胞ストック)由来血小板での企業治験の準備が完了していました(CiRAニュース 2021年4月26日)。
令和3年3月26日 | 治験計画届提出 |
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令和3年4月26日 | 治験計画届30日調査終了 |
令和3年6月7日 | 京都大学医学部附属病院 治験審査委員会に治験申請 |
令和3年6月21日 | 京都大学医学部附属病院 治験審査委員会承認 |
令和3年8月19日 | jRCT公開 |
令和4年4月 | 第一症例投与実施 |
実施場所 | 京都大学医学部附属病院 |
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投与時期 | 令和4年4月 |
治験調整医師 | 血液内科 髙折 晃史 教授 |
治験責任医師 | 血液内科 諫田 淳也 講師 |
治験製品 | MEG-002(ヒトiPS細胞由来血小板製剤) |
用量 | 3単位(血小板0.6x1011個) |
製造場所 | CiRA_F 細胞調製施設FiT |
本治験では、血小板減少症注5の患者さんを対象に、「MEG-002」の安全性の確認と有効性の推定を行います。 「MEG-002」は、CiRAより提供を受けたiPS細胞から作製された、日本人において最も発現頻度が高いHLA型を有する血小板であり、開発にあたっては同研究所の江藤浩之教授等が発明したヒトiPS細胞から血小板を産生する技術を用いています。なお治験製品の製造はCiRA_Fが担い(CiRA_Fニュース2020年6月22日)、 治験は京都大学医学部附属病院血液内科をはじめとした複数の医療機関で実施を予定しています。
血小板減少症患者さんを対象としたiPS細胞由来血小板製剤(MEG-002)の忍容性及び安全性並びに有効性に関する探索的臨床試験
詳細情報 | |
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JRCT番号 | jRCT2053210068 |
血小板減少症におけるMEG-002単回投与時の忍容性、安全性および有効性の評価を目的とする
第1/2相試験 非盲検非対照試験/単回投与試験
用量(1): | 3単位(血小板 0.6x1011個) |
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用量(2): | 10単位(血小板 2x1011個) |
- 安全性(有害事象、副作用の発現割合)
- 有効性(補正血小板増加数注6)
2021年7月~2022年8月(延長予定)
研究開発課題名:iPS細胞由来HLAホモ型血小板の実用化
注1 株式会社メガカリオン
本社:京都府京都市下京区、代表取締役社長:赤松 健一
URL:http://www.megakaryon.com/
CiRA 江藤浩之教授等の発明によるヒト iPS 細胞から血小板を産生する技術の臨床応用を目指して2011年に設立。ヒトiPS細胞由来血小板製剤を工業的に大量生産することによって、世界の医療現場へヒト iPS 細胞由来血小板製剤を供給することを目指している。
注2 HLAホモ型
HLAは、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体であるヒト白血球型抗原(Human Leukocyte Antigen)の略で、細胞の自他を区別する型です。HLAは、白血球だけでなく、ほぼ全ての細胞に分布していて、ヒトの免疫に関わる重要な分子として働いています。自身の持っている型と異なるHLA型の人から細胞や臓器の移植を受けると、体が「異物」と認識し、免疫拒絶反応が起こります。そのため、細胞や臓器を移植する際にはHLA型をできるだけ合わせることで、免疫拒絶反応を弱めることが重要です。
HLAの型は非常に多様で、A座、B座、C座、DR座、DQ座、DP座などと呼ばれる抗原(タンパク質)の組み合わせで構成されており、各抗原に数十種類の型があるため、あわせて数万通りの組み合わせがあると言われています。そのため、自分と完全に一致するHLA型の人を見つけるのは、数百~数万人に1人の確率といわれます。
父親と母親から同じHLA型を受け継いだ場合、「HLAホモ接合体」と言います。例えばA座について、A1、A2、A3...と数十種類の型がありますが、両親それぞれから2つの同じ型を受け継いだA1A1、A2A2、A3A3のような場合を「HLAホモ接合体」と言い、細胞移植においては、A1A1であればA1A2の人やA1A3の人に移植しても拒絶反応が起こりにくいと考えられます。
注3 ヒトiPS細胞由来血小板
ヒトiPS細胞から分化させた巨核球前駆細胞に3つの遺伝子を導入することで得られる凍結保存可能な不死化巨核球細胞をマスターセルバンク化し、このマスターセルバンクから培養した巨核球を成熟させることによって血小板を産生します。
注4 同種
同じ種類の生物のこと。ここではヒトを意味します。患者さん自身の細胞を使った移植を自家移植といいますが、他の人(ドナー)から提供された細胞を使った移植を同種移植といいます。
注5 血小板および血小板減少症
血小板は血液中の細胞成分のひとつであり、巨核球と呼ばれる細胞から作られ、全身を循環し、血管壁が損傷した際に傷口に集まって止血する役割を持っています。血小板減少症とは血中の血小板数が少ない状態をいい、血小板数が一定数以下となった場合や出血の危険性が高いと認められる場合には、輸血用血小板製剤での治療が行われます。
注6 補正血小板増加数
体格(体表面積)で補正した輸血で増加した血小板数の値。血小板輸血の効果の指標として用いられます。