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2026年10月20日

iPS細胞20周年特集 第6回 iPS細胞研究は折り返し地点 本当の勝負はこれから

iPS細胞誕生20周年を記念し、iPS細胞研究の発展を支えてきた6人に、これまでの20年と次の20年の展望を聞く本特集。全6回の最後は、山中やまなか伸弥しんや 名誉所長・教授です。

山中 伸弥 教授

山中 伸弥 教授

 マウスのiPS細胞を発表してから20年が経ち、振り返れば、本当にあっという間で、とても充実した20年でした。多くの研究者が協力し、時には競い合いながら研究を進め、さまざまな疾患に対する新しい医療の開発を進めてきました。

 これまで日本のiPS細胞研究が世界をリードしてこられた理由の一つは、オールジャパン体制で研究を進めてきたからです。2015年にはCiRAから臨床用のiPS細胞を日本の多くの研究者に提供できるようになりましたし、国内の研究者や企業と情報を共有しながら研究を進めてきました。新しい医療の開発においては、安全性や技術、資金などの問題で、途中で止まってしまうプロジェクトも少なくありません。その中で、iPS細胞研究の主要なプロジェクトが一つも脱落せず、現在も進んでいることは、国内の研究者や企業が協力してきたからこそです。

 その協力体制のおかげで、今年、心不全とパーキンソン病を対象としたiPS細胞由来の再生医療等製品が、条件及び期限付きではありますが、世界で初めて承認されるところまでようやくこぎつけました。ただ、私の趣味のマラソンにたとえるなら、ようやく折り返し地点にたどり着いたに過ぎません。しかも、後半にはさらに大きな課題や困難が待ち受けていますので、本当の勝負はこれからだと思っています。

 ここからの後半戦では、企業の役割がさらに大きくなります。一般的な薬と違って、細胞は同じ品質のものを大量に作ることが簡単ではありません。iPS細胞を使った再生医療を、何百人、何千人という患者さんに届けるために、均一な品質の細胞を大量に作る技術や製造を自動化することは、大きな挑戦です。また、iPS細胞の研究開発には多額の資金が必要です。民間から巨額の投資が集まる米国や、国を挙げて支援する中国と競争していくためには、日本も国の支援と民間投資を組み合わせ、企業同士も協力できる体制をつくる必要があります。私が理事長を務める公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団でも、高品質な臨床用のiPS細胞を適正な価格で提供することを理念としており、そうした連携を支えていきたいと考えています。

 次の20年には、iPS細胞を使った治療が一つ、二つではなく、十数個と世界で承認され、多くの患者さんに届いていてほしいと思います。しかし、私にはもう一つ願いがあります。それは、若い研究者たちがiPS細胞を超える技術を生み出すことです。私たちも先人たちの研究があったからこそ、iPS細胞を生み出すことができました。次の世代には、ぜひ私たちを超えていってほしい。それこそが科学の進歩だと思っています。

  1. 取材・執筆した人:三宅 陽子


    京都大学iPS細胞研究所(CiRA) 国際広報室 サイエンスコミュニケーター

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