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2023年5月22日

第32回CiRAカフェ「ズレも積もれば発見となる~コンピュータと見つける生物
システムの謎~」~準備から当日までの舞台裏~

2023年1月28日に、第32回CiRAカフェ「ズレも積もれば発見となる~コンピュータと見つける生物システムの謎~」を開催しました。約4年ぶりに一般の方々を会場に迎え入れて開催した今回のCiRAカフェでは、外部と連携するという新たな試みを取り入れました。その取り組みの舞台裏をご紹介したいと思います。
企画のはじまり

 この企画が始まったのは2022年7月。より多くの人にアプローチしたい、科学コミュニケーションのアイデアや手法を変えたいという思いから、外部との連携を試みることにしました。この数年間は、CiRAの研究者がスライドを使って講演をし、その後に質疑応答をするという形式でCiRAカフェを行っていました。しかし、登壇した研究者と参加者との双方向コミュニケーションをより活発にするためのアプローチが課題でした。

 一般の方とのコミュニケーションを深いものにすること、CiRAの研究者を新しい視点から紹介することを目指し、どの機関と連携をするかを考え始めました。そして、サイエンスコミュニケーションについて専門的に取り組んでいる機関として、北海道大学Co-STEPが第一候補として挙がりました。そこで、これまでに数々のサイエンスカフェを手掛けてこられたCo-STEPの奥本素子准教授にコンタクトを取ったのです。

Co-STEPとCiRAとの違いを学ぶ

 奥本先生がCiRAカフェの企画者・聞き手としてご協力いただくことにご快諾いただき、カフェの準備がはじまりました。開催日が2023年1月に決まり、2022年8月と9月に、奥本先生と国際広報室のメンバーとで打ち合わせが行われました。

 まず、これまでのCiRAカフェについて説明し、次にCo-STEPでのカフェの準備・開催方法についても教えていただきました。話し手との打ち合わせから告知方法、当日の進行、アンケートまで、CiRAとは異なる方法で行われていることが分かり、非常に勉強になりました。例えば、CiRAではイベント告知をWebやSNSを中心に行っていますが、Co-STEPでは駅や大学内など人が集まる場所に告知ポスターを貼ることが効果的と考えており、ポスターのデザインにはとても力を入れているということでした。またCiRAでは、開催報告記事は、事実を淡々と書いているのですが、Co-STEPでは、話し手となる教員に「協力したい」と思ってもらえるような魅力的な開催報告記事を書いているとのことでした。このように様々なことを学んだのと同時に、Co-STEPの方法でCiRAの教員の研究を紹介すれば、きっと面白くなると感じたのです。

話し手の決定

 9月になると、CiRAの河口理紗講師が話し手に決定しました。河口先生は、5月に着任したばかりの若い主任研究者で、計算生物学の分野で「細胞の運命のゆらぎ」の解明に取り組んでいます。

 CiRAでは一般の方向けのイベントになると、病気の治療開発など臨床応用研究がテーマになることが多いのですが、河口先生が行っているような基礎研究も重要な研究として一般の方に伝えたいと思っていました。しかし、基礎研究を一般の方に分かりやすく伝えることはかなり難しいのです。今回は、サイエンスカフェ等でこれまで基礎研究を多く紹介してきた奥本先生に聞き手になっていただけるということで、これは良い機会だと考え、河口先生に話し手を引き受けていただきました。

何度も重ねた打ち合わせ

 その後、奥本先生と河口先生との打ち合わせが9月、10月、12月、1月に合計4回行われました。初回の打ち合わせでは、奥本先生が河口先生の研究を理解することを目的として、河口先生がスライドを使って研究内容を詳しく説明しました。10月の打ち合わせでは、河口先生の話をもとに、奥本先生がカフェのタイトル、周知文、当日のシナリオを提案してくださいました。タイトル候補はどれも「さすが!」と感じるものばかりでした。また、告知文も一般の方が興味を持って読み進んでもらえる文章でした(開催告知)。CiRAの告知文が、どれだけ固い印象を与えていたかと反省させられました。

 そして12月、翌年1月には、奥本先生が作成したスライドを見ながら、河口先生が意見や修正を加える打ち合わせがありました。奥本先生は、北海道大学の生物分野の専門家にも話を聞くなどして河口先生の研究内容をできるだけ理解した上で、聴講者のことを考慮してスライドを作ってくださいました。

 半年間にわたる準備の中で、今までとは違うCiRAカフェが出来上がっていく過程にワクワクすると同時に、奥本先生との打ち合わせを通してサイエンスコミュニケーションに関する知識を身につけることができました。

ZOOMでスライドの打ち合わせをする河口講師

いろいろ悩んだハイブリッド開催

 コロナ禍では、CiRAではほぼ全ての公開イベントをオンラインで開催していましたが、2023年1月にはコロナ対策が緩和されており、Co-STEPとの共同開催を機に、初めて対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で行うことになりました。

 CiRAではオンライン配信用の機材は一通りそろっていますが、それを使ってハイブリッド形式で開催するためには予想以上の労力がかかりました。技術チェックやリハーサルを何度も繰り返し、本番当日まで、音声や照明、カメラの配置など最適な方法を探りました。

ハイブリッド形式での配信のテストをする
国際広報室メンバー

 また、ハイブリッド形式のイベントを告知してわかったことは、現地の参加希望者がなかなか集まりにくいということです。遠方の方や前後に用事がある方は、もちろんオンラインの参加が便利です。しかし、会場での参加は、直接研究者に質問ができたり、カフェの雰囲気を楽しめたりと、現地ならではの魅力があります。そこで、CiRAの会場(講堂)に来ていただく参加者を増やすために、SNSや外部機関のメーリングリスト、大学内での通知などさまざまなアプローチで告知を行ったところ、開催数日前に定員の30名近くの方に登録いただけたのです。

そして本番当日

 本番(1月28日)の前日は京都にも雪が降り、聴講者は来てくれるだろうかと心配していましたが、当日は少し雪が残りつつも、晴れの天気となりホッとしました。

 国際広報室メンバーは本番の4時間前にはCiRA研究棟に集合し、設営やオンライン配信の準備に取りかかりました。その1時間後に北海道から奥本先生が到着、そして河口先生も会場にやって来ました。

 すぐさま本番に向けた奥本先生と河口先生の打ち合わせが始まり、昼食をとりながらも続けられました。河口先生がスライドの内容を一部変更したこともあり、2人は入念にスライドをチェックし、奥本先生からの質問や確認が本番ギリギリまで繰り返されました。国際広報室メンバーもその様子を見て、本番への緊張感が増していきました。

打ち合わせをする奥本先生(左)と河口先生(右)

 午後2時になり、いよいよ奥本先生と河口先生の対話形式で進行するカフェがはじまりました。冒頭に河口先生が遺伝情報の基本的な解説を行い、その後、身近な例を挙げながら自身の計算生物学を使った研究を紹介していきました。専門的な難しい話が出た際には、奥本先生がかみ砕いて説明し、参加者が楽しみながら理解できる形で進行しました。当日のカフェの内容や様子は、下記のリンクからご覧いただけます。

 会場には25名の方が足を運んでくださり、オンライン(YouTube Live)では67名の方が視聴してくださいました。さらに、当日の事後視聴を含めると、合計で217名の方にご参加いただくことができました。

2人の話に耳を傾ける聴講者

 今回のイベントでは、準備から本番まで多くの学びがありました。今後は、この経験を活かし、「サイエンスは楽しい!」と感じていただけるサイエンスカフェを開催していくことを目指していきます。

(文:三宅陽子(CiRA国際広報室))

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