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2015年12月16日

CiRAと武田薬品のiPS細胞研究に関する共同研究(T-CiRA)の開始について

心不全やがんなど6つの研究プロジェクトがスタート

湘南研究所で行われた記者会見で壇上にあがる武田薬品の役員およびCiRAの研究者ら(左から)池谷真准教授、井上治久教授、長船健二教授、金子新准教授、ウェバー社長・CEO、山中所長、出雲再生医療ユニットグローバルヘッド、櫻井英俊准教授、吉田善紀講師

京都大学iPS細胞研究所(所在地:京都市左京区、以下「CiRA」(サイラ))と武田薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、以下「武田薬品」)は、このたび、iPS細胞技術の臨床応用に向けた共同研究を開始しましたのでお知らせします。Takeda-CiRA Joint Program for iPS Cell Applications(T-CiRA)と称する本共同研究では、がん、心不全、糖尿病、神経変性疾患、難治性筋疾患など6つの疾患領域でiPS細胞技術の臨床応用を目指して研究を行います。

iPS細胞技術は医療の未来に画期的な変革をもたらす可能性があり、その応用は創薬研究、細胞治療、薬物安全性評価など多岐にわたります。武田薬品は10年間で200億円の提携費用を提供し、CiRAおよび他の大学から参加する専門家のリードによる複数の研究プログラムを、CiRAと共同で実施することになります。本提携は、莫大な時間と労力を要するiPS細胞技術の研究と臨床応用に大きく貢献するものと期待されています。また、本共同研究は、日本が国家プロジェクトとして推進するiPS細胞技術の臨床応用の方向性と合致するものです。

CiRA所長で、2012年にiPS細胞の発見者としてノーベル賞を受賞した山中伸弥は、「武田薬品とCiRAの研究者から構成される6つのプロジェクトが、同社の支援のもと、スタートできたことを大変嬉しく思います。本共同研究では、iPS細胞技術をツールとして用い、創薬および難治性疾患の画期的な治療法の創出に対する新たなアプローチの開発に向け、今後10年にわたり研究を実施いたします」と述べています。

武田薬品代表取締役社長CEOのChristophe Weberは、「この重要な研究プログラムに参加できることは当社にとって誇りです。特に京都大学のような著名な研究機関との共同研究は、患者さんに貢献するために知見を深め、将来可能な臨床応用を可能にする上で極めて重要です。本共同研究により、当社は、疾患治療において細胞治療および遺伝子的戦略を追求する製薬企業へと変革することを目指します」と述べています。

現在、武田薬品の湘南研究所(所在地:神奈川県)を拠点として6つのプロジェクトが同時に進められており、CiRA、武田薬品の両者から合計60名がそれぞれの研究に従事しています。

武田薬品の再生医療ユニットグローバルヘッドであり、山中教授のチーフアドバイザーである出雲正剛は、「新たな実験室の準備が整う2016年4月には追加のプロジェクトも開始し、合計100名以上の研究者が10件以上のプロジェクトに携わる予定です」と述べています。

6つのプロジェクトの詳細
研究責任者 テーマ
池谷 真

「神経堤細胞※1」の研究
脊椎動物に特徴的な神経提細胞は、人間の成長・発育に重要な役割を担っている。この神経提細胞に注目し、腎臓、消化器、神経系などに関連する疾患への創薬応用および細胞移植治療応用のための基盤技術開発研究を行う。

(※1)脊椎動物の胚発生で出現する構造である神経堤から遊離する細胞集団。頭部骨格系、角膜、末梢神経系、皮膚色素細胞など多様な細胞種への分化能を有する。多様な分化能を持つことから、細胞移植治療の細胞源として期待されている。

井上 治久

iPS細胞を使った筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究
患者さん由来のiPS細胞と武田薬品の化合物・薬物ライブラリーを用いて、有効な治療法が確立されていない神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する治療薬を開発することを目指す。

長船 健二

1型糖尿病に対する再生医療開発と2型糖尿病に対する創薬研究
iPS細胞から分化誘導した膵細胞を用いて、1型糖尿病に対する再生医療の開発を行う。また、iPS細胞から分化誘導した膵細胞と武田薬品の化合物・薬物ライブラリーを用いて、2型糖尿病に対する創薬研究を行う。

金子 新

再生免疫細胞※2を利用した新しいがん免疫療法の開発
iPS細胞技術により作製した再生免疫細胞を利用して、新しいがん免疫療法の開発を行う。武田薬品の製剤化技術とiPS細胞研究所のヒト細胞ストックを組み合わせて、がん治療に有効な再生医療製品の実用化を目指す。

(※2)抗原特異的な免疫細胞からiPS細胞をつくり、必要なだけ増殖させた後に再度同じ免疫細胞へと分化させた細胞。疲弊した抗原特異的免疫細胞から、「元気な」「大量の」免疫細胞を作ることで、免疫を再生させることが期待されている。

櫻井 英俊 iPS細胞を利用した難治性筋疾患に対する治療薬の研究
筋ジストロフィーやミオパチーなど筋疾患に対する治療薬の創出および疾患モデルの研究を行う。疾患モデルの作製やドラッグスクリーニングに患者さん由来のiPS細胞を活用する。
吉田 善紀

iPS細胞を用いた心疾患創薬プラットフォームの開発と心不全の新規治療開発への応用研究
CiRAで開発されたmicro RNA-switch※3技術などの新しい技術を駆使してiPS細胞由来のステージ特異的およびサブタイプ特異的心筋細胞を用いた次世代の創薬基盤技術の開発を行う。さらに、そこで得られた心筋細胞を用いて心不全の新規治療薬の開発を目指す。

(※3)マイクロRNA(20-25塩基程度の長さの短いノンコーディングRNA) と相補的な配列と、レポーター遺伝子のmRNA(メッセンジャーRNA: タンパク質をコードしている)配列を持つ合成RNA。細胞内のマイクロRNAを検知することで働きがオン・オフされるため、細胞選別などに利用できると期待されている。

<武田薬品について>
武田薬品は、研究開発型の世界的製薬企業を目指して、自社研究開発を強化するとともに、ライフサイクルマネジメントの推進、導入・アライアンスの積極展開を通じて研究開発パイプラインの充実を図り、ミッションである『優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する』の実現に努めています。詳細についてはhttp://www.takeda.co.jp/をご覧ください。

<T-CiRA特設サイト>
https://www.takeda.co.jp/t-cira/index.html

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