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2024年7月30日
再生医療の明るい未来を目指したパートナーシップ
CiRAとスイスのチューリヒ大学再生医学研究所(IREM: Institute for Regenerative Medicine)は、再生医療を世界に普及させるという共通の目標を実現させるために、2017年から研究協力を行っています。今年4月、両研究所は、IREMがiPS細胞や次世代療法の医療応用に向けた研究の進捗を発表するために毎年開催しているiPSチューリヒシンポジウムに併せて、CiRA-IREMジョイントワークショップを開催しました。このワークショップは、それぞれの機関で行われている研究を紹介したり、若手研究者が視野を広げ、海外で研究することを奨励したりする機会になりました。
iPSチューリヒシンポジウムとCiRA-IREMジョイントワークショップは、スイス国立科学財団(SNSF: Swiss National Science Foundation)、京都大学教育研究振興財団、その他アカデミアおよび企業の支援を受け、4月4日と5日にチューリヒ大学で開催されました。現地の会場およびオンラインで180人以上が参加し大いに盛り上がりました。CiRAからは、教員数名に加え、CiRA-IREMトラベルアワード受賞者した5名の学生や研究員が参加しました。
チューリヒに到着後、CiRAメンバーはIREMを訪問し、次世代の再生医療を進捗させるという共通の目標について意見交換を行いました。その後、CiRA一行はIREMの研究室と病院施設を見学し、IREMのバイオメディカル起業プログラムの説明を受けました。このプログラムは、起業家精神を育み、科学的なアイデアを使ったビジネスを成功させることを目的にしています。
4月4日に、CiRA-IREMジョイントワークショップがチューリヒ大学シティーキャンパスで開催されました。まず、Jessica Plucain博士がIREMについて、Kelvin Hui特命講師がCiRAについて簡単な紹介を行いました。次に、パネルディスカッションが行われ、京都大学で学んだり働いたりした経験があり、現在ヨーロッパ在住の招待研究者たちが、海外で挑戦することに興味を持っている参加者に向けて自身の経験について話しました。
パネルディスカッションの後には、招待講演者、CiRAメンバー、ワークショップ参加者がさらに交流を深めるためにネットワーキングセッションが行われました。最後に、Leslie Reinhardt博士がチューリヒ大学での、Kelvin Hui特命講師がCiRAおよび京都大学での短期および長期の留学に関するさまざまな奨学金のスキームを紹介しました。夕方に開催された市民講座では、IREMのSimon P. Hoerstrup所長とCiRAの髙橋淳所長がそれぞれ自国の再生医療の現状について話ました。
メインイベントであるiPSチューリヒシンポジウム2024が4月5日に開催され、CiRAのKnut Woltjen准教授が「発生と老化」のセッションで、齊藤博英教授が「遺伝子制御」のセッションで講演を行いました。さらに、ロシュ社のヒト生物学研究所(Institute of Human Biology)のLaurine Cabon博士が「健康と病気のモデリング」セッションで、IREMのUte Modlich博士が「トランスレーショナル・アプリケーション」セッションで、最新の研究成果を発表しました。CiRAメンバーも、短い口頭発表やポスター発表で自身の研究を紹介しました。
ジョイントワークショップやシンポジウムは、CiRAの学生や若手研究者にとって非常に貴重な経験となりました。
髙橋淳研究室 博士課程学生の網本直弥さんは「初めて現地で参加するシンポジウムだったので、非常に楽しみにしていました。シンポジウムでは参加者の話を聞いたり、同じ分野の研究者とディスカッションしたりして、素晴らしい時間を過ごしました」と話しました。
江藤浩之研究室の博士課程学生である中村英美里さんは「ジョイントワークショップとシンポジウムに参加して、とても学びが多かったです。チューリヒ大学とIREMが、アカデミアや産業界の両方で若手科学者を育成するために、さまざまな戦略を立てていることを知り、非常に驚きました。このイベントに参加する機会をいただき感謝しています。近いうちにチューリヒに再び訪れるのを楽しみにしています。私たちを迎えてくださってありがとうございました!」と感想を述べました。
池谷真研究室 博士課程学生のLinh Nguyenさんは「このシンポジウムに参加して、まるでイノベーションの中心にいるように感じました。すべての瞬間が貴重な学びの機会でしたし、新しい友人をつくるチャンスでもありました。この素晴らしいイベントを実現にするためにご尽力いただいた世話役の方々に大変感謝しています」と述べました。
「チューリヒでの経験は本当に素晴らしく、特にIREMを含むチューリヒ大学に深く感謝しています」と岩崎未央研究室の山川達也研究員は言います。「異なる大学、異なる分野の若手研究者を橋渡しすることで、イノベーションを促進しようとしているチューリヒ大学のビジョンに非常に感銘を受けました。」
池谷研究室のDenise Zujur研究員は、「ジョイントワークショップとiPSチューリヒシンポジウムの運営は素晴らしかったですし、私たちを歓迎してくださったことに深く感謝しています。熱気と、学びの機会と、経験の共有と、そしてアカデミックな対話に満ちた3日間でした。IREMで見学やディスカッションをしたり、自身の研究を発表したり、iPS細胞技術と再生医療の進捗についての講演を聞いたりなどすべてを楽しみました」と述べました。
今後、チューリヒ大学と京都大学の戦略的パートナーシップの一環として、IREMとCiRAは共同研究や研究交流の機会をさらに増やし、最先端の治療法を実現するために、そして次世代の科学者を育成するために協力していきます。

IREMを訪問したCiRA教員、研究員、学生
(写真提供:チューリヒ大学再生医療研究所)

チューリヒ大学にて交流したIREMとCiRAの学生や研究員
(写真提供:チューリヒ大学再生医療研究所)
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この記事を書いた人:ケルビン・フイ
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)
研究推進室 特命講師(翻訳:CiRA国際広報室)