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2025年8月6日
イベント報告:公開シンポジウム「iPS細胞と挑戦者、シャーレの先にみる景色」
2025年5月10日(土)、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、愛知県名古屋市の中日ホールで公開シンポジウム「iPS細胞と挑戦者、シャーレの先にみる景色」を開催しました。髙橋淳所長・教授、堀田秋津准教授、北川瑶子助教(齋藤潤研究室)の3名が講演とトークセッションを行いました。
CiRAは、年に1〜2回、一般の方を対象とした対象シンポジウムを催し、研究の進捗などについて報告する機会を設けています。今回は、愛知県で初の開催となり、県内外から481名が参加してくださいました。
開会の挨拶を行う髙橋淳所長
また、会場では、研究室の紹介展示やiPS細胞の理解を深めるためのポスターや教材の展示、基金の使途を紹介するポスター展示などを行いました。特に白衣を着た研究者の周りには多くの来場者が集まり、研究者に熱心に質問していました。研究者はそれらについて丁寧に説明していました。
(上から)ラボの研究について来場者に説明する土井大輔講師(左、髙橋淳研究室)、
小島佑介助教(右、堀田秋津研究室)、
池中亮裕研究員(下、齋藤潤研究室)
講演の部では、髙橋教授がiPS細胞を使った医療応用やCiRAの紹介を行った後、自身が取り組んできたパーキンソン病の治験の結果を来場者に直接説明しました。4月17日に治験の結果を報告した論文が公開されて、このイベントが一般の方に向けて直接お話する初めての機会となりました。また、今後も、パーキンソン病の治療をより良いものにするために引き続き研究に取り組んでいくことや、次世代の医療を実現するための研究機関の垣根を超えた協力体制について紹介しました。
続けて、齋藤潤研究室に所属している北川助教が講演し、iPS細胞を使うことで、どのように病気の仕組みを科学的に明らかにすることができるのかについて詳しく説明しました。北川助教は、現在、個人差のみられる感染症の重症化がどのような原因で起きるのかについて、iPS細胞を用いて遺伝子の違いに着目して研究を行なっています。現在の研究が、将来、病気のかかりやすさや体質などを予測することや、一人ひとりに合わせた「個別化医療」に貢献できればと語りました。
3人目の講演者である堀田准教授は、名古屋が出身であることなど、自身の経歴を紹介しました。その中で、DNAの構造に魅せられた大学時代や、カナダに研究員として留学した時の経験から、現在CiRAで行なっている難病治療のための遺伝子編集研究につながっていったと話しました。堀田准教授がDNAや細胞に関する3択のクイズを出題すると、参加者は正解と思う番号に手を挙げて答えました。最後のクイズでは、難病につながる可能性のある遺伝子の変異は誰もがもっていることを伝え、難病は一部の患者さんやご家族だけではなく、社会全体で向き合うべき病気であり、そのために貢献したいと結びました。
(上から)講演を行う髙橋淳所長・教授(左)、
北川瑶子助教(中央)、堀田秋津准教授(右)
トークセッションでは、来場者から事前に寄せられた質問を、国際広報室の和田濵裕之サイエンスコミュニケーターが紹介し、3名の研究者がそれぞれの考えを述べました。パーキンソン病治療の現状、再生医療の課題、費用の問題などが議論されました。特に「iPS細胞治療で症状が劇的に改善するか?リハビリは不要か?」「iPS細胞治療の費用はどのくらいか、将来的に安価になるのか」といった質問に対し、研究者は慎重かつ前向きな見解を示しました。
トークセッションの様子
参加者からは、講演やトークセッションを聞いて、「研究者の方々の熱意が伝わりました」「遺伝子異常の解明にiPS細胞が使われていることは知りませんでした」「(iPS細胞を使った技術が)治療の選択肢のひとつとなりえる日が来ると良いなと思った」「iPS細胞は、細胞治療だけでなく薬を作るなど様々なことに使えるのだなと分かりビックリした」などの感想が寄せられました。
また、展示コーナーについても、研究者や職員によるポスター解説やiPS細胞の観察などを通じて、「シャーレ内の世界ではあるが、すぐそばにあるのがなんだか不思議な感じだった」「iPS細胞をどう使うのか、過程などが詳しく書かれていてとても面白かった」などの感想をいただきました。
展示コーナーの様子
今回のイベントでは、iPS細胞研究が今、どのような成果を結びつつあるのか、そして、研究者がどのような「挑戦」をしているのか、研究者がシャーレ(=研究)の先に見据えている未来を皆さんにご紹介することを目指して実施しました。
今回のシンポジウムの講演やトークセッションの内容はCiRAのYouTubeチャンネルで公開しています。
CiRAでは、さまざまな領域の研究者が「iPS細胞」のもつ可能性を活かして研究を行っています。イベントを通じてその一端を知っていただきたいと思っています。
