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Internship

2025年10月16日

2025年度【第3回】CiRA研究インターンシッププログラム 成果発表会

 2025年9月17日、CiRA講堂にて、CiRA研究インターンシッププログラムの第3回成果発表会が開催されました。

多くの参加者が集まった、成果発表会最終日

 全3回にわたる発表会の最終日となったこの日、口頭発表3名、ポスター発表4名の計7名が研究成果を報告しました。講堂はCiRAの研究者や学生でほぼ満席になり、各発表後の質疑応答でも研究内容の詳細にわたる専門性の高い質問が相次ぎ、活気のある会になりました。

第3回CiRAインターンシップ発表会に参加するメンバー

口頭発表

Grace Tara Evansさん

  1. 所属:英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン
    Great Ormond Street Institute for Child Health (GOS ICH)
    博士課程2年生
  2. 受入研究室:濵﨑洋子研究室未来生命科学開拓部門
  3. インターンシップ期間:6週間
  1. 所属:英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン
    Great Ormond Street Institute for Child Health (GOS ICH) 博士課程2年生
  2. 受入研究室:濵﨑洋子研究室未来生命科学開拓部門
  3. インターンシップ期間:6週間
  1. 所属:英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン
    Great Ormond Street Institute for Child Health (GOS ICH) 博士課程2年生
  2. 受入研究室:濵﨑洋子研究室
  3. インターンシップ期間:6週間

 Evansさんがこのインターンシップに参加したきっかけは、昨年、英国で濵﨑洋子教授が講演したイベントに遡ります。同イベントでEvansさん自身も博士課程での研究発表を行い、共通のテーマである胸腺の研究について意見を交わしました。その際に濵﨑教授からCiRAでのインターンシップを勧められ、応募に至りました。

 発表では、はじめに従来の胸腺上皮細胞※1)の研究における課題に言及しました。ヒト由来の胸腺の検体は希少で、かつ体外でその性質や機能を維持することが難しいため、多くの研究はマウスでの実験に依存しています。その解決策として、濵﨑研究室が開発したiPS細胞由来の誘導胸腺上皮細胞(iTEC)の有用性を示しました。インターンシップ期間中、EvansさんはiTEC作製の手技を習得し、作製した細胞の特性を分析したほか、異なる培養条件での比較検討実験を行い、その成果を報告しました。

 Evansさんは「今後も濱崎研究室との共同研究を継続し、胸腺上皮細胞の異常に関わる変異を持つ患者由来のiPS細胞株に対し、この誘導系を英国で応用したいです。このシステムは、これらの変異が胸腺上皮細胞の発生や機能にどのような影響を及ぼすかをin vitro(試験管内)で解析できる貴重な機会を提供してくれます。疾患の理解と胸腺研究全般への知見が深まることを期待しています」と、今後の展望を語りました。

渕由紀恵さん

  1. 所属:筑波大学 生命環境学群 生物資源学類3年生
  2. 受入研究室:中川誠人研究室未来生命科学開拓部門
  3. インターンシップ期間:約3週間
  1. 所属:筑波大学 生命環境学群 生物資源学類3年生
  2. 受入研究室:中川誠人研究室未来生命科学開拓部門
  3. インターンシップ期間:約3週間
  1. 所属:筑波大学 生命環境学群 生物資源学類3年生
  2. 受入研究室:中川誠人研究室
  3. インターンシップ期間:約3週間

 小学生の時、山中伸弥教授のノーベル賞受賞のニュースに触れたことが、渕さんが生命科学への興味を持ったきっかけでした。「とてもインパクトのあるニュースでした。その後多くの特集や書籍に触れるうち、生命科学そのものに関心を持つようになりました」と、当時を振り返ります。大学で幅広い分野を学んだ後は、基礎研究に携わりたいという思いが強まったそうです。

 今回のインターンシップでは「iPS細胞樹立の最も基礎的な部分を学びたい」と考え、リプログラミング※2)の機能解明を通じて細胞の謎を明らかにすることを目標に基礎研究を行う中川研究室を希望しました。

 渕さんがインターンシップ期間中に取り組んだのは、RNA法を用いたiPS細胞樹立におけるリプログラミング機構の解析です。初期化因子を導入する際に、複数の条件で比較検討を行いました。樹立した細胞のコロニー数を定量的に評価し、経時的に遺伝子の発現を解析。一連の分析を通じて得られた研究成果を報告しました。

 「RNAの抽出やフローサイトメトリー、qPCRなど、所属大学では未経験だった多様な実験を行いました。またグループではなく、全て一人で実験に取り組んだことで、実験手技の面で大きく成長することができました」と渕さんは語ります。発表後にお話を伺うと、研究に打ち込む傍ら、休日にはリフレッシュのために短時間で京都市内の多数の名所を巡ったというエネルギー溢れる一面も。今後は細胞生物学系の研究室に進む意向を力強く話してくれました。

大堀光紗さん

  1. 所属:東京薬科大学大学院 生命科学研究科 修士1年生
  2. 受入研究室:髙島康弘研究室未来生命科学開拓部門
  3. インターンシップ期間:約2週間
  1. 所属:東京薬科大学大学院 生命科学研究科 修士1年生
  2. 受入研究室:髙島康弘研究室未来生命科学開拓部門
  3. インターンシップ期間:約2週間
  1. 所属:東京薬科大学大学院 生命科学研究科
    修士1年生
  2. 受入研究室:髙島康弘研究室
  3. インターンシップ期間:約2週間

 「高校2年の授業で再生医療を知りました。ドナー不足という現状の課題に対し、自分の細胞から臓器を創り出す技術で解決できる可能性に強く惹かれました」と、再生医療との出会いを語る大堀さん。その後、再生医療に特化した研究室がある大学へ進学し、「胚盤胞補完法による肝臓創出」というテーマの研究に取り組みました。研究に取り組む中で、初期発生を学んで臓器創出の研究に活かしたいと考え、この分野で先進的な研究を行う髙島研究室でのインターンシップを志望しました。

 大堀さんは期間中、髙島研究室が樹立したヒト胚モデル「バイラミノイド※3)」の構造解析を行いました。倫理的な制約から研究が困難なヒト初期胚を模倣した胚モデルは、この分野における重要なツールです。大堀さんは、この胚モデルがヒト胚とどこまで類似し、どこが異なるのかを分析し、その研究成果を報告しました。

 「所属している研究室ではマウスを用いていましたが、本インターンシップで、ヒトナイーブ型iPS細胞※4)の培養や、ヒトiPS細胞のプライム型からナイーブ型へのリセット方法などを学ぶことができました。今後はマウスとヒトの細胞の相違点などの特徴を生かした臓器創出の研究を進めたいです。また、ヒト初期発生の学びを深め、ヒト臓器の作製につながる研究に挑戦したいです」と、今後の研究への強い意欲を共有してくれました。

ポスター発表

福田美佳さん

  1. 所属:神戸大学農学部 生命機能科学科 応用生命化学コース3年生
  2. 受入研究室:金子新研究室増殖分化機構研究部門
  3. インターンシップ期間:約4週間
  1. 所属:神戸大学農学部 生命機能科学科 応用生命化学コース3年生
  2. 受入研究室:金子新研究室増殖分化機構研究部門
  3. インターンシップ期間:約4週間
  1. 所属:神戸大学農学部 生命機能科学科
    応用生命化学コース3年生
  2. 受入研究室:金子新研究室
  3. インターンシップ期間:約4週間

 福田さんが研究に興味を持つようになったのは、中学生の時に見たNHKスペシャル「人体II」がきっかけでした。山中伸弥教授が司会を務めた番組で、免疫系と他器官が連携する仕組みが解き明かされる様に深く感銘を受けたと言います。この経験から研究の道を志すようになった福田さん。かねてより関心のあった「iPS細胞」と「免疫」という二つの分野を融合させた研究を行う金子研究室でインターンシップに参加することになりました。

 iPS細胞から免疫細胞や血液の元となる造血幹・前駆細胞 (HSPC)をつくることができます。HSPCからT細胞や自然リンパ球を誘導する技術は、再生医療やがん免疫療法への応用が期待されています。しかし、iPS細胞由来のHSPCと生体由来のHSPCでは初期状態やエピゲノム※5)の背景が異なります。そのため同じ条件で培養しても、分化のタイミングや分化系統の偏り方が一致しないことが知られています。福田さんは、両者のHSPCがT細胞や自然リンパ球に分化する初期段階に注目し、細胞内で発現する転写因子※6)群の経時的な変化を解析し、その違いを明らかにしました。

 「実験手技の基礎からデータの分析・考察、成果の発表に至るまで、研究の一連の流れを学ぶことができました。恵まれた設備と優秀な研究者に囲まれた環境の素晴らしさを実感し、将来、研究を仕事にしたいという思いが一層強まりました」と、インターンシップで得た貴重な経験を振り返りました。

寺内あかなさん

  1. 所属:神戸大学農学部 生命機能科学科 応用生命化学コース3年生
  2. 受入研究室:下林俊典研究室未来生命科学開拓部門
  3. インターンシップ期間:約2週間
  1. 所属:神戸大学農学部 生命機能科学科 応用生命化学コース3年生
  2. 受入研究室:下林俊典研究室未来生命科学開拓部門
  3. インターンシップ期間:約2週間
  1. 所属:神戸大学農学部 生命機能科学科
    応用生命化学コース3年生
  2. 受入研究室:下林俊典研究室
  3. インターンシップ期間:約2週間

 寺内さんは「従来の分子生物学とは異なる最先端の超解像イメージングを用いた解析技術に強く関心がありました。また、多様な背景を持つ研究者が異分野の考えを組み合わせて真理にアプローチしていくというスタイルにも惹かれました」と、下林研究室でインターンシップを希望した理由を語りました。

 期間中の研究対象として、寺内さんは、神経細胞と他の細胞との間で情報の伝達をする接合部分のシナプスを選択。情報を送る側の細胞内部で、シナプス小胞※7)がクラスターを形成する過程に注目しました。具体的には、クラスター形成に関わると考えられる液‐液相分離(LLPS)※8)が起こる条件、また、シナプス小胞クラスターの形成を促すタンパク質2種類の相互作用の強さについて研究し、その成果を報告しました。

 「議論の出発点として、まず自分たちの実験結果に着目することの重要性に気付きました。これまでは先行研究やデータベースの情報を軸に考察を組み立てがちでしたが、今回の経験を通じて、自らの成果を基盤にして考えることで、より主体的で本質的な議論が可能になることを実感しました」と、寺内さん。今回のインターンシップが、研究に臨む姿勢を捉え直す、貴重な機会となったようです。

中島聖也さん

  1. 所属:同志社大学 生命医科学部 医生命システム学科3年生
  2. 受入研究室:櫻井英俊研究室臨床応用研究部門
  3. インターンシップ期間:約6週間
  1. 所属:同志社大学 生命医科学部 医生命システム学科3年生
  2. 受入研究室:櫻井英俊研究室臨床応用研究部門
  3. インターンシップ期間:約6週間
  1. 所属:同志社大学 生命医科学部
    医生命システム学科3年生
  2. 受入研究室:櫻井英俊研究室臨床応用研究部門
  3. インターンシップ期間:約6週間

 「将来は筋ジストロフィーの根治法開発に貢献したい」という小学生の頃からの目標を持つ中島さん。難治性筋疾患、特に筋ジストロフィーの治療法の確立を目指す櫻井研究室のインターンシップ募集を知り、迷わず応募したといいます。発表の冒頭では、櫻井准教授が小学5年生の中島さんから受け取ったメールと当時一緒に撮影した写真や手紙を紹介する一幕もありました。

 櫻井研究室では、iPS細胞を誘導して骨格筋幹細胞を作製し移植する治療法の開発を行なっています。しかし、その分化誘導で用いる複数の因子が全て不可欠かという点については、検討の余地があります。臨床応用を視野に入れると、安全性とコストの観点から、使用する因子は最小限にする必要があります。そこで中島さんは、骨格筋幹細胞の誘導に用いられる3種類の成長因子に対し、異なる組み合わせで添加する比較検討実験を実施しました。得られた細胞を多角的に解析と評価を行い、誘導に不可欠な因子の特定を試みた研究成果を報告しました。

 「培養から移植まで非常に多くの課題があることを実感し、免疫学や遺伝子工学など、より幅広く深い知識を習得し、結び付けていく重要性を感じました。1日も早く安全な治療法を患者さんに届けることをモチベーションに、研究に励みたいです。まずは修士課程で櫻井研究室に入ることを目指し、生命医科学の勉強に取り組んでいきます」と中島さん。今後の活躍が期待されます。

野本結里愛さん

  1. 受入研究室:堀田秋津研究室臨床応用研究部門
  2. インターンシップ期間:4週間
  1. 受入研究室:堀田秋津研究室臨床応用研究部門
  2. インターンシップ期間:4週間

 この日最後に発表したのは、堀田研究室でインターンシップを経験した野本さんです。インターンシップを希望した理由を尋ねると「iPS細胞を用いた研究がしたいからです」と、簡潔に力強く返答をした野本さん。山中教授がノーベル賞を受賞したニュースを見て、さまざまな細胞や組織に分化するというiPS細胞の多能性に強く興味を持ったと言います。

 野本さんの受け入れ先となった堀田研究室では、多くの難病の根本原因である遺伝子異常を治すために、 iPS細胞とゲノム編集を駆使して、 様々な疾患に対する治療法の開発研究を行っています。

 インターンシップ期間中、野本さんは、ディシェンヌ型筋ジストロフィーという、筋肉が徐々に弱っていく難治性の遺伝性疾患の治療の研究に取り組みました。従来の研究では主にCRISPR-Cas9での遺伝子導入が行われてきましたが、それに対し、小型で遺伝子導入効率の良いAsCas12f※9)を用いる方法に着目して比較検討実験を行い、その研究成果を発表しました。

 野本さんは「精度の高い遺伝子工学の技術を含む一連の実験に取り組むことができたのは、貴重な経験でした。今後は臨床研究に携わり、未来の医療に役立つ研究をしたいと考えています」と、これからの研究への意欲を語りました。



その他のインターンシップ報告会

※1)胸腺上皮細胞
胸腺を構成する主要な細胞の一つ。T細胞が自己と非自己を正しく認識できるように、選別を助ける(分化・成熟させる)役割を担う。

※2)リプログラミング
分化して特定の役割を持った細胞の状態をリセットし、様々な細胞に分化する能力を持つ未分化な状態に初期化すること。

※3)バイラミノイド
iPS細胞などから作製された、ヒトの二層性胚盤を模倣した胚モデル。

※4)ナイーブ型iPS細胞
着床前の胚に類似した性質を有する多能性幹細胞を指す。2014年に初めて樹立が報告された。

※5)エピゲノム
DNAの塩基配列そのものを変えることなく、遺伝子の働きを制御する仕組みのこと。

※6)転写因子
DNA上の特定の塩基配列に結合し、その遺伝子の情報をRNAに転写する過程を調節するタンパク質の一群。

※7)シナプス小胞
神経細胞間の接点であるシナプスの前末端に集積し、神経伝達物質を貯蔵している小胞。

※8)液‐液相分離(LLPS)
細胞内で、ある特定の分子が集まって周囲とは区切られた液滴のような領域(膜のない構造体)を形成する現象。

※9)AsCas12f
ゲノム編集技術CRISPR-Casシステムで用いられる、Casタンパク質の一種。従来のCas9などと比べて分子サイズが小さいため、細胞への導入効率が高い新規のゲノム編集ツールとして注目されている。

  1. 取材・執筆した人:森井 あす香


    京都大学iPS細胞研究所(CiRA) 江藤研究室

  2. 取材後記


    限られた時間の中で研究を計画・実行し、成果をまとめて報告するという一連のプロセスは、参加した学生にとって相当なプレッシャーだったと思います。これを乗り越えた計17名の皆さんの研究への熱意は非常に高く、それぞれがとても個性的で、これからの活躍が楽しみな方ばかりでした。

    このインターンシップでは守秘義務があるため公表できない情報も多い中、このような形で貴重な経験の記録に携われたことを、大変嬉しく思います。

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